part22 ショカン山ダンジョン攻略 その4
Part22 「ショカン山ダンジョン攻略 その4」
ショカン山ダンジョン探索の4日目を終え、僕たちはマスケギルドで夕食をとっていた。そこへカショギさんが現れた。
「勇者様、まだ“使えるダガー”は見つかりませんが、今日は、アリス神の加護を得られる護符を持ちいたしました、この護符を身に着けていれば、疲労軽減、身体能力の向上など数々の効果を得らることでしょう。」
僕は受け取ったお札をリズさんに見せた。
「まあ!これはアリス神様の温かいご加護が感じられますわ、持っていればきっと良い事がありますわ。」
「大変ありがたい商品を見つけて戴いたようっすね、お幾らでしょう?」
「いやいや、今回はごあいさつ代わりという事で。」
「いや、只の物は後から高い代償が伴うこともあるっす。ここはきっちり御代を支払います。」
「さようですか?そういう事であれば1枚1000ギルという事でいかがでしょうかな。」
一さんがカショギさんの前に6000ギルを積み上げる。
「お買い上げ有難うございます、またのご贔屓をお願いします。」
カショギさんはお金を懐にしまい、にっこりと微笑み退出していく。入れ替わりに行政官のデアリスさんが何やら難しい顔をしてやってきた。
「勇者様、大変申し上げにくい事なのですが、マスケ町の住民たちが名高い勇者様とお近づきになりたいと、懇親会を準備しておりまして、何とか皆様のご臨席が叶わないかとお願いに参った次第なのですが。」
「ふん、我らは芸人ではないのう。」
「まあまあ、シャルさん幸いショカン山ダンジョンについては期限が付いていないっす、それに僕らは色々と国の税金を使わせてもらっている身分っすから、ここはデアリスさんの顔を立てておくのが正解っす。」
「勇者様誠に有難うございます、町民たちも喜びます。」
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懇親会といってもしょせん宴会だ、但し町民が入れ代わり立ち代わりやってくる、とんでもなく長丁場になった。そのうえ町民たちに請われるまま町内の施設を巡ることになった、リリッカさんは自警団で剣の指導をした。
「あの木剣の速さはなんだ、とてもついていけねえよ。」
「それよりあのパワーだよ、一発で吹き飛ばされちまう。」
「剣はよう、基本が大事なんだ1日100回で良いから素振りをやってみな、それだけで大分違うぜ。」
シャルさんは学校で子供たちに魔法の講義をした。
「凄い、不思議!」
「魔法で何でもできちゃうの?」
「知識の探求を始めるのは早いに越したことはないのう、精進するのぢゃ。」
リズさんは病院や介護施設でヒールをかけて回った。
「おお、膝の痛みが引いたぞ。」
「エリザベート様じゃ、“聖乙女”様じゃ、ありがたや、ありがたや」
「私のヒールが少しでも皆様のお役立てれば嬉しいのですが。」
マリエッタは狩人たちを集め弓の指導をした。
「ありゃー、どう見ても反則だよな。」
「なんで矢がグルングルン方向を変えるんだよ、真似しろって言われてもなあ?」
「こう飛んでって、ここに当たって、思うんだよ!」
広場で町民に取り囲まれ期待の眼差しを一身に受け切羽詰まった僕は、町民たちから距離を置き、自分の足元から盛大に火柱を上げ、火柱の中から手を振り笑って見せた。
「あの勇者頼りない見た目だけど、結構やるぜ。」
「すげー、あんな魔法見たことないぞ。」
<何とか乗り切ったようだ、ふ~。>
こうして怒涛の様に5日間が過ぎてしまった。
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「ちょっと時間が空いてしまったっすけど、ダンジョン探索5日目を始めるっす。」
「皆さんをお待ちしている間に予備のテレポーションテントを設営したであります、この先、万が一テレポーションテントが破損しても、今日の転移先には戻れるであります。」
「よう、オーアールまさか一人でってことはないよな?」
「心配には及ばないであります、デアリス殿が護衛を付けてくれたであります。」
「オーアールさん予備のテレポート用のテントはいくつ設営出来るっすか?」
「理論的には無限でありますが、マジックアイテムの素材の調達具合となるであります。現状では15程であります。」
「取り敢えずは十分とみるべきっすね、シャルさん予備のほうの結界も厳重にお願いするっす。」
「うむ、任せておけ。」
僕たちはダンジョン内にテレポートし、探索を開始した、程なく直径15メートルほどの大きな筒状の道に達した。
「いやな地形だな、歩く道が限られている割に周りの空間が広すぎるぜ。」
「はい、慎重に進むであります。」
「使い魔を増やしておこうぞ。」
その時自分の周囲にばらばらと矢が落ちてきて、何者かに攻撃されていることを知った。
僕は咄嗟に岩と岩の隙間に潜り込み周囲を見渡す。
「リズさん身を伏せて!」
マリエッタが近く岩場に駆け上り矢を乱射するのが見えた。
「マリエッタ殺さないで!シャルさんお願いします!」
「任せろ!」
「みんな無事っすか?」
「おう、シャルの使い魔たちがいい仕事したおかげだな。」
使い魔たちが6人の男たちを抱えて戻ってきた、4人はバタバタと抵抗していたが2人は体に矢が刺さっていて事切れている様だ。
使い魔たちが僕たちを攻撃してきた4人の男たちを目の前に取り押さえる、特に目立った特徴は見えないが、何者なのだろう?
「旦那お助けくだせえ、この化け物たちを何とかしてくだせえ。」
「そうですね、まずなぜ僕たちを攻撃したのか教えてもらえますか。」
「大変申し訳ないことでごぜえやす、あっちの方から怪しい光が近づいてきたもので向こうの岩陰に隠れたのでごぜえやす、するとバケモンが先頭でやってきて後ろの方々は人だと判っていたんでやすが、緊張に耐えらなくなり、つい矢を放ってしまいやした。」
「リリッカさん彼らの持ち物を探してきてください、シャルさんリリッカさんの手伝いになる使い魔を出してください、よく鼻の利くやつをお願いするっす。」
「さて次の質問っす、なぜ嘘をついているのです?」
「旦那!アッシらは嘘なんかついていやせんぜ。」
「嘘ぢゃのう。」
「それじゃこうしましょう、最初に本当のことを言ってくれた人は助けますよ、約束します。」
かたい沈黙が続いた…やがてリリッカさんたちが戻ってきた。
「これで全部だと思う、特に怪しいものはないと思うけどなあ。」
「むっ、これは?」
シャルさんが30cm四方ほどの鏡を取り出す。
「鏡っすか?」
「むう、マジックアイテムぢゃのう、どうやらリズのほうの専門のようぢゃ。」
「まあこれは、アリス神様の恩寵を映す鏡ですわ。」
「ちょっと見せてください。」
鏡をもってくるくると回り周囲を映してみると、僕たちの右の胸のあたりがぼんやりと赤く輝いて映る。僕たちの右胸にはアリス神の護符が貼ってある。
「これは完全に狙い撃ちされたっすね。」
僕は4人の男たちににこやかに笑顔を向ける、一番若そうな男が落ち着きなくそわそわしている。
「そろそろ誰か話してくれても良いころですね、僕はともかく“紅蓮”のリリッカさんは気が短いですよ~?」
「てめーら、わかってんだろうな!この場を逃れたとしても、その後は逃げ切れるもんじゃねーぞ、ここで死ななかったことを後悔することになるんだぜ!」
この男が頭目なのであろう、十分にドスの利いた重い声だった。
<だめだ~みんな観念した目をしてる~>
僕は右手の親指を立て、自分の首の前を左から右へスッと引いた。そしてマリエッタとリズさんの背中に手をまわしそっと逆方向へ視線を逸らせた。
後ろでドシャッと重い濡れた音がした。
「終わったぜダンナ、また以前の野盗みたいに助けるって言うと思ったんだけどな。」
「以前の野盗は僕たちを傷つけるつもりはなかったっす、それに嘘をつかなかったっす。シャルさん怪しげなマジックアイテムの類は有りそうですか」
「ふむ、妾もここでの会話を誰かに漏れることを心配してのう、その類の物は調べたが大丈夫そうぢゃ。それにしても亭主殿、厄介ぢゃな。」
「へっ?追剥が返り討ちにあったってことだろう、よくある話だろう?」
「マリエッタも2人倒したよ!」
「皆さん、僕たちはカショギさんからアリス神の護符を買って、身に着けていました、しかも護符を買ってから足止めされて、襲撃の準備をする期間ができました、偶然にしては出来すぎっす。」
「ん~、カショギと、デアリスが怪しいってことかよ。」
「全く証拠がないっす、カショギさんがアリス神の護符を用意したのはたまたまで、賊が利用しただけかもしれないっす、別に秘密にしていたわけじゃないっす、それにマスケ町民との懇親会も以前から用意されていたものと思うっす。」
「ご主人様?私たちは人の恨みを買うようなことをしたのでしょうか?」
「俺はな、ガキの頃から剣で生きてきたんだ、恨みの筋はごまんとあるわな~」
「今回はたぶん僕っす、それもリズさんがらみでと考えるのが妥当っす。」
「まあ!ご主人様が?しかも私が誰に?」
「あの頭目は、この場を逃れてもその後は逃げ切れないと言っていたっす、つまり背後に大きな組織があるという事っす。」
「だから厄介なのぢゃ。」
「大きな組織を使えるのは、お金があって、力もある貴族と考えるのが妥当っす。」
「リズさん、お城で妙に優しい男はいなかったっすか。」
「ん~、殿方はみな優しくしてくれましたけど?」
「どうやら特定は難しそうっすね。」
「でも兄上が王位を継承することは決まっていましたし、ご主人様とのご縁が無かったら、私は隣国であるトウホウ国の有力者の下へ嫁ぐことになったと思いますわ、政略結婚も王家の娘の務めですから。」
「それでもあの王様はリズさんがこの人と結婚したいと言えば反対しなかったはずっす、現に僕との結婚も簡単に決断したっす、父王や兄王に向かい気軽に口を利けるリズさんの存在は、出世を目論む貴族たちには魅力的に映ったはずっす。」
「大きな組織を動かす力と金を持っている貴族ぢゃ、目論見をかっさらった亭主殿には大きな恨みを抱いておうろうて。」
「それでダンナを始末して、自分が再婚相手なろうってことかよ!俺やシャルの事を随分舐めてんじゃないのか?」
「オーアールさんこの事を報告するのはちょっと待って欲しいっす。」
「なぜでありますか?至急王宮に報告し然るべき措置をとってもらったほうがよろしいのでありませんか?」
「まだ、敵の正体がつかめていないっす、下手に王宮が動くと黒幕が隠れてしまうっす。」
「それが正解ぢゃのう、あとはシスターズの働き次第ぢゃのう。」
「皆さんもこのことは何もなかった体でお願いします。」
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