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part21 ショカン山ダンジョン攻略 その3

昨日ウンゴリアントを倒し、ショカン山ダンジョン攻略デビューを華々しく飾った僕達であったが、今日は朝から宿舎の吹き抜けのロビーで蓑虫の様にザイルにぶら下がっている。


「このアッセンダーという道具は本当に使えるっすね。」


高い天井から吊り下げられた、ザイルにぶら下がりビレイシステムで支援を受け、アッセンダーに取り付けられたザイルの輪に足を引っかけ、足の力で登る、腕で登る場合と比較して数倍楽だ。またビレイヤーに支援されているので安全に登り、安全に且つ楽に垂直降下もできる。


「勇者様も大分慣れて、ビレイヤーとの呼吸もあってきたであります。この分だとダンジョンの中で地形に行く手を阻まれることは無さそうであります。」


オーアールさんは朝から僕たちの練習に付き合ってくれている。僕たちは垂直にザイルを登ったり、壁際に取り付けたザイルを登ったりを繰り返している、僕もリズさんも何とかザイル登りをやり熟せる様になった、リリッカさんや、シャルさんに至ってはビレイヤーの技術まで身に着けた。


「もう左足でばかり登っているから、左足が辛いですわ。」


「えっ、僕は登るたびに足を替えているっすよ。」


「えっ、まあそうでしたわ足を左右替えればいいことでしたわ、私ったら全く気が付きませんでしたわ。」


「マリエッタはごちゃごちゃ機械が面倒くさい!」


「このラダーってやつはよう便利なようで面倒くさい代物だな。」


「う~ん、そろそろ夕食にしましょうか?」


「ちと早い気がするがそれも良かろう、明日に疲れを残しても詮無きことぢゃ。」


☆☆☆☆


僕たちはマスケギルドへ向かった、マスケギルドでは行政官デアリスさんが待っていた。


「これはこれは勇者様、昨日は早速のご活躍お見事でございます。」


「いえいえ、そんな大そうなもんじゃないっす。」


「いやいや、ご謙遜。所で何か不足はありませぬか?出来るだけの事は致したつもりですが、不足が有れば何時でもお申し付けください。」


「いや、十分すぎるくらいっす。有難うございます。」


「勇者様や冒険者の皆様のお役に立てればと思い、近隣の商人たちにも声をかけておきました、彼らの商品も見てやってください。それでは私は役所へ戻りますが何かあればテート殿にこと付けていただければ、私のもとに連絡が来る手はずになっておりますので。」


「重ね重ね有難うございます。」


デアリスさんはあちこちの冒険者たちに声かけながら去っていった。僕たちはオーアールさんのホログラムを見入った、そこには昨日探索した新たな道が加えられ、更に“ウンゴリアント”と吹き出しがつけられ、大蜘蛛の絵まで添えられていた。


「あんた達が勇者様御一行だな、おいらはシャイロックという、けちな行商人だが、あんた達のための特別な逸品があるぜ見て言ってくんな。」


振り返ると良く日に焼けた精悍な顔つきの若い男が立っていた、様々な荷物を抱えているきっと売り物なんだろう。


「あんたが“天変地異”のシャルロッテだろう、あんたならこれの価値がわかるはずだ、レムリアのレリーフだよく見てくんな。」


10㎝×5㎝程の金属製のレリーフを取り出し差し出してくる。どのような金属なのだろうか様々な彫刻が虹色に輝いている。


「ふむ、これほどの物をどこで手に入れた?いや、野暮は聞かぬほうが良いな、これは大変な魔力ぢゃ、扱いには十分気をつけられよ。」


「へへっ、あんたならこいつの価値を分かってくれると思ったぜ、でよ?5万でどうよ?」


「いらぬ。」


「おいおい!勇者様御一行がよ5万程度が出せねえってことはないだろう?」


「力はのう、必要な時に必要なだけ有れば良いのぢゃ、これの力は過分ぢゃのう、だから要らぬと申して居る。」


「おいおい!そりゃねえぜあんたたちの為に苦労して仕入れたんだぜ!」


「それよりもそちらの包みを見せてみよ。」


シャイロックが取り出した雑多なマジックアイテムが入った包みを広げた。その中からシャルさんが赤い小石のマジックアイテムを指先でつまみ、呪文を唱える、すると小石のマジックアイテムはパリンと音を立てて弾ける。


「この程度の魔法にも耐えらるぬとはのう。」


「こっちはよう、あんたら向けじゃねえよ、一山いくらの一般向けってやつよ。」


「どうぢゃこの一山3千で買うてくれよう。」


「そりゃ有難てえけどよ良いのかい?」


「今回は顔繋ぎのサービスぢゃ。また面白いものを仕入れたら、持って来よ。」


「へへっ、毎度あり~」


「ついでにもう一つサービスぢゃ、先ほどのレムリアのレリーフを引き取ってやろう。」


「おいおい!まさか只でってことかよ。」


「あれ程のものぢゃ、色々障りが出ているのぢゃろう。分に過ぎたものは災いのもとぢゃぞ。」


「しかし、でも…くそっ、しょうがねぇなぁ厄介払いだ、只で持って行ってくんな。」


シャルさんはシャイロックから買った包みの中から小さなクリスタルを取り出し、リズさんに手渡す。


「まあ!これは素晴らしいものですわ。」


「リズなら使いこなせるぢゃろう。」


「それはもう、絶対に役に立ちますことよ。」


シャルさんは残りの包みをシャイロックに手渡し。


「さらにサービスぢゃ、これをくれてやろう。」


「ちぇ!お宝はあれ一つってことかよ。」


「そういうことぢゃ、面白い物を見つけたらまた買うてやるでな、しっかり精進せよ。」


僕はむくれているシャイロックの手を握り。


「使えるダガーを探してください、きっと良い値で買いますから。」


「使えるって?切れるだけじゃダメなのか?」


「シャイロックさんなら色々伝手があるのでしょう、“使える”物です、切れなくても構いません。」


「へへっ、勇者さんわかってるじゃねえか、このシャイロックさんに任せな。」


機嫌を直したシャイロックが冒険者たち相手に商売を再開させた。


「ダンナ?ダガーなんかどうするんだ?」


「いや別にダガーじゃなくても良いんっす、ああいう手合いは具体的な目的と、報酬の匂いがすればよく働いてくれるっす。」


「ふふん、あ奴何か期待があるのかのう?」


「いや、只無駄に敵を作らないほうがいいだけっす。」


☆☆☆☆


僕たちは10人で大テーブルを囲み、夕食兼作戦会議をしていた。そこへテートさんが恰幅の良い商人を一人連れてきた。


「勇者殿ご紹介いたします、商人のカショギ殿でございます。カショギ殿の商いは大きく大概の物はカショギ殿の下で揃う事でしょう。」


僕はすかさず席を立ちカショギさんの手を握りにっこりとほほ笑んだ。


「頼りにさせてもらいます、どうぞよろしくお願いいたします。早速お願いなんですが使えるダガーを探していただきますか?」


「これはこれは勇者様、先ほど“千三つ”のシャイロックとの商談を拝見させて戴居ましたが、早速同じお題を戴いたわけですな、もちろんこのカショギ名誉にかけて負ける訳にはいきませんな、きっと納得のいけるものを御用意させて戴きますぞ。」


「あー、見てましたか?何分よろしく。ところで千三つってなんっすか?」


「ははっ、シャイロックの商品は千に三つしか当たりがないという意味でしてな。」


「でも当たりがあるから怖いという事っすね?」


「さよう、どん欲に当たりを探す。私も商人として見習うべき点ですな、ともかく私がどんなダガーを探し出すのか楽しみにしていてくだされ。」


「さあさあ勇者殿こちらの海老もカショギ殿の商品でしてな、今日は特別に振舞って戴きました、どうぞご堪能くだされ。」


テートさんが大皿に乗った海老を運んでくるのと入れ違いにカショギさんが退出する。


「それにしても行政官のデアリスさんは貴族のわりに腰が低くいっすね、本当に良く気を使ってくれるっすね。」


「いやいやデアリス殿は平民の出でしてな、家柄だけの貴族とは違い実力だけで行政官になった人ですよ、マスケ町の誇りといっていい人です。」


<平民の出で行政官までのし上がる、野心が無い訳じゃないな、今回のショカン山の件は随分と入れ込んでいるみたいだ。>


僕は一さんを手招きして、耳打ちする。


「お仕事です、デアリスさんカショギさんついでにシャイロックさんを調べてください。」


一さんの目がキラリと光る。


「はっ、お任せください。」


「さあ、明日から本番です頑張りましょう!」


☆☆☆☆


朝から僕たちはショカン山ダンジョンに挑んでいた。


「2、3日分の行程については、多くの冒険者が探索済みであります、既に障害の多くは排除されているので安心して進めるであります。」


実際入り口からはすでに踏み跡がしっかりついて、けもの道程度の歩きやすさだ、大きな段差には粗末な梯子さえつけられている。

特にモンスター等と出くわすことなく、順調に進みお昼頃には東西の分岐点についた。


「さて、ここから東西に分かれる訳っすね、東か西かどっちが当たりっすかね?」


「妾は、下のほうから怪しげな気配を感じるのう。」


「東への道のほうが下っている気配であります、西のほうが登っているように感じるであります。」


「んじゃ、西からっすね。」


「へっ、ダンナ?東が当たりじゃないのか?」


「僕たちの目的はショカン山ダンジョンの調査っす、いきなり当たりを引いてそこで終わりとはいかないっす、当たりは最後にするっす。」


「順当ぢゃな、それに上方にも何者かの気配がするしのう。」


僕たちは分岐点を西方向に向かい歩き出した。


「しかしよ、なんも出ねえな。」


「この辺はすでに何人もの冒険者が探索済みであります、目ぼしいものは粗方発見済みであります。」


「ダンナ喉乾いた、水出してくれ。」


「はいどうぞ、少し休憩するっす。」


「もうどれくらい来たのでしょう。」


「リズよ、洞窟の中は意外なくらい進めないものぢゃ、あまり考えぬようにのう。」


「うん、そうだよ!たぶん5km位だよ!」


「え~、朝から歩いているのに…」


「今日はもう帰りましょうか、先は長いっす。」


「そうぢゃのう、疲れをためても詮無きことゆえ。」


「では、テレポーション魔法に使用するテントを用意しますのでしばしお待ちを。」


オーアールさんがテントを設営しているのを見学しながら、休憩をとっていた、リリッカさんは待ちきれずテント張りを手伝っている。


<あれじゃかえって邪魔だな、オーアールさんも気の毒に。>


「皆さん用意ができたであります、テントの中へどうぞ。」


「結界を張るのでしばし待たれよ。」


シャルさんがテントの周りをぐるっと回る。


「ついでぢゃ、見張りもつけようぞ。」


2匹のガーゴイルがテントの左右で片方は口を大きく開け、片方は口を引き結んでいる、そして周りに同化するように石に変じた。


「阿吽っすね。」


シャルさんはマジックアイテムに呪文をかけ結界を張り終えた。


「あうんとはなんぢゃ。」


「いやいや、こっちのことで、申し訳ないっす。」


「よろしいでありますか、これからテレポーション魔法を使うであります、転移元と転移先はなるべく同じ容積になるようにしましたが、若干のずれが生じます、ずれた分は最も柔軟な空気が伸び縮みして調整してくれるでありますが、転移の瞬間急激な気圧の変化が伴うであります、体の弱い部分を守るため、目をつむり耳を手で塞いでほしいのであります。」


「わかりました宜しくお願いします。」


「では跳ぶであります。」


テレポーションの瞬間パンと軽い衝撃があったが、特に何事もなく、無事帰還した。

テレポーション小屋の外には三さんが待っていた。


「お帰りなさいませ。」


「よう三ただ歩いてきただけだ、何事もなかったぜ。」


「それが何よりでございます。」


☆☆☆☆


僕たちの探索も3日が過ぎ、オーアールさんのホログラムもどんどん精細なものとなってきた。そして4日目の朝。


「そろそろ先行の冒険者も少なくなり、何者かが現れても良いころであります、気を引き締めて臨んでほしいのであります。」


僕は3日間洞窟の中を這いずり回ったのになぜか全く汚れない“きくいちもんじ”を握り、ジッと見つめた。


「WWWWダンナ、“きくいちもんじ”の出番がきたら、パーティーが壊滅ということだぜ。」


「いやそうとも言い切れぬ、“きくいちもんじ”は妖の物に良う効くからのう。」


「ともかく出発するっす。」



ショカン山ダンジョンの洞窟はいよいよ人の歩いた跡もまばらとなり、緊張感が増してきた。やがて、道は非常に狭い岩の隙間を通り抜ける。僕はやっとを岩の隙間から這い出し、後ろを見ていた、するとリリッカさが隙間を通り抜けてきたが、背中の“紅”がなぜか全く引っかからずにスルスルと擦り抜けてくる。


「リリッカさん今“紅”はどうやって抜けてきたんっすか?」


「あぁ、こいつは融通が利くんだ。」


<なるほど、見えるところに有るとは限らないか。>


程なく、大きな広場に出た。僕はライトボールを多数周囲に散らして見る、オーアールさんは眉間にしわを寄せている。


「何か動く者が大量に来るであります、さほど大きなものではありませんが、数が尋常じゃないであります。」


やがて大量の小鬼が、こちらへ走ってくるのが見えた。


「ふん、コボルトぢゃ。」


「ダンナ、“きくいちもんじ”の出番だぜ、相手は防御力0攻撃力0の、子供が最初のLvアップの為に挑む相手だWWWW」


僕は、“きくいちもんじ”を振り回しコボルトたちを次々に倒していった、“きくいちもんじ”の一撃でチャカポコと良い音で倒れていく。


チャカポコチャカポコチャ…

チャカポコチャカポコチャ…

チャカポコチャカポコチャ…

チャカポコチャカポコチャ…


「ダンナLvアップはまだか?」


「これで、387匹倒したであります。」


「普通20匹も倒したらLv2になるよな?」


「やはり、亭主殿のLvアップは望めぬようぢゃ。」


「マリエッタはお腹が空いた!」


「そうよねえ、マリエッタちゃん、もうちょっと待っててね。」


「あー、もう面倒くせえ、ダンナ後は任せな。」


“紅”が一閃しその剣圧で大量のコボルトが吹き飛ぶ、残りはシャルさんの使い魔がてきぱきと仕事をした。


「えーと、全部で1878匹であります。」


「コボルトなどいちいち数えんでもよい!」


「いやしかし、記録するのが自分の仕事であります。」


「なんか疲れたっす、帰りましょうか?」



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