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Part19 ショカン山ダンジョン攻略 その1

サッポの都の王宮でホッカ王と侍従長が難しい顔で話し合っている。


「ふむリズは、アバスリの町で“クラーケン”退治に参加したとな?」


「はい、アバスリの行政官ギョーエフ公より感謝状が届いておりますな。」


「あの勇者殿はなかなかどうして、やり手のようじゃのう?」


「はい、宿命を求めての旅立ちとやらの準備も着実に進めているようですな。」


「うーんリズが遠くに行ってしまうのは困るのう、そうじゃ確かマスケの町になんと申したかのう?ダンジョンがあったはずじゃが?」


「ショカン山ダンジョンですな、何か異形の物が住み着いていると噂ですが、特に近隣に被害もなく放置しておりますが?」


「うーん、なんだその?正体不明な異形の物を放置して置いて良いものか、ちと判断に苦しむのでな、調査を命じる。勇者殿にも助力を願おうぞ。」


「御意!」


☆☆☆☆☆☆


僕たちは特にすることもないが、とりあえずタカスカギルドに顔を出していた。そこへ王宮からの使者という人が来ていた。


「あら、あなた達ちょうど良かったわ。こちらマスケの町から来た行政官の人よ。」


「お初に目にかかります、勇者フールファス殿ですな?マスケの行政官デアリスと申します。」


「はい?」


「侍従長セルディック殿より書簡を預かってまいりました、勇者殿におかれましてはできるだけ前向きに検討していただきたいとのことです。」


侍従長からの書簡を皆で読んでみる。つまりマスケの町の近くのショカン山ダンジョンの調査依頼だ。


「う~ん、どうしましょうか?」


「俺たちは、あんまり洞窟の類は得意としてないぜ、無視して良いんじゃないか?」


「ふむ、ちまちました仕事は好かぬのう。」


「う~ん、でもマリエッタの件で借りがあるっす、あんまり王様への借りを放置できないっすね。」


「確かに借りとやらが面倒にならぬうちに返しておいたほうが良さそうぢゃ。」


「俺はダンナに任せるぜ。」


「わたくしもご主人様に従いますわ。」


「マリエッタはみんなと一緒がいい!」


僕はデアリスさんににっこり微笑み。


「確かにショカン山ダンジョンの調査依頼をお引き受けいたします。」


「それはようございました、勇者殿の為に宿舎や装備、各種支援をすでに用意しておりますれば、いつでもマスケに御出立可能ですな、何か不足がございましたら、なんなりとわたくしにお申し付けください。」


「はい、有難うございます、僕たちも出できるだけ早く出発します。」


☆☆☆☆☆☆


3日後僕たちはバタバタと旅支度を整え、出発を前にタカスカギルドに顔を出した。


「もう行くの?ギルドの紹介状を書いておいたから、ちょっとショカン山ダンジョンの情報を集めてみたけど、結構大がかりの調査が国からギルド組合にあった見たいね、取り敢えずマスケギルドが調査の拠点になっているみたいだから、まずギルドに顔を出してね、マスケギルドを仕切っているのは、“オテル”のテートという人よ、昔は大きな宿屋を経営していた人でギルドの支配人に転向しても、サービスと美味しい食事には定評があるわ。」


「うまい食事ってのは魅力だな、なあダンナ。」


「はい、ところでマスケの町ってどんな所ですか?」


「俺も行ったのはだいぶ前だけどなあ、海のそばでなんもねえところだったなあ、別にショカン山ダンジョンで住民が困っているという話は聞いたことねえな。」


「ふむ、妾もショカン山ダンジョンについては特に被害の話は聞かぬのう、何か異形の物が住み着いておるという噂を聞くが全く正体不明ぢゃな。」


「どうやら、その正体不明の異形の物が今回のカギっすね。」


「あら、あなたたちの別格の戦闘力があれば簡単じゃない?いつの間にか、すごいパーティーに成長したわよね。」


「おー、近接は俺1枚だけど、強力な魔法と、弓があり、優秀なヒーラーもいる、これで、タンクが居たら無敵だな。」


「タンクってあの防御職っすか?」


「ダンナ知っているのか?そうだな敵の攻撃を一手に引き受けて味方の損傷を防ぐ役目だな、高い防御力と体力、何よりも敵の気を引く挑発能力が必要だな、そんな特殊な職だからめったにいないんだよな。」


「僕には無理そうっすね。」


「ふむ、亭主殿にはそんな役割は期待しておらぬ。」


「ご主人様がそんなことされては、とてもヒールが追いつきませんことよ。」


「そうっすね。」


<確かにゲームでは必須のパーティーメンバーだよな。>


「さあ、取り敢えず出発しましょう!」


☆☆☆☆☆☆


マスケの町に着いて真っ先にギルドに顔を出した。


「こんにちは、フールファスと申します、宜しくお願い致します。」


「ほほう、貴殿が?マスケギルドの支配人テートじゃ宜しくのう。」


出迎えてくれたのは初老の品の良い感じの男だった。

ギルドの中は結構人が多く混雑していた、そして僕たちは好奇の目を周りから一身に集める事となった。


「これはタカスカギルドのナナ殿の紹介状ですな成程、貴殿たちには以前駐屯していた正規軍の士官用宿舎を使用していただくよう指示を受けております。そのほか各種装備等もすでに宿舎のほうへ運び込んでおりますれば、ご自由にお使いくだされ、何か不足があったら行政官のデアリス殿が手配してくれるそうです。」


ざわざわとやじ馬の声が聞こえる、破格の待遇に対する羨みと感嘆の声だろう。


「おおそうじゃ、貴殿たちのパーティーには国からマッパーが手配されていましてな、いま肝心の“マッパー”オーアール殿はショカン山ダンジョンでなにやら準備をしております、夕食には顔を合わせることができるでしょう。当ギルドの食堂は一般にも開放されておりましてな、今晩は私が腕を振るいますので、ぜひ堪能してくだされ。」


「マッパーっすか?」


「へえ、マッパーまでついてくるのか豪勢だな。」


「そのマッパーって、何者っすか?」


「なんだダンナ知らないのか、マッパーというのはな、調査したダンジョンの見取り図をマッピング魔法を使って詳細に記録したり、退治したモンスターを記録したり、何かと便利な奴だな、普通退治したモンスターを証明するために、耳だの尻尾だの持ち帰らなければならないんだけど、マッパーが記録したものは間違いなく賞金になるってわけさ。」


「ふむ、それに調査したダンジョンの地形を魔法で詳細に記録するので、そっちのほうの賞金も上積みぢゃな。なかなか地形の報告は測量の手間が面倒なので実に重宝するわけぢゃ、その上高位のマッパーとなるとテレポーション魔法まで使いよる。」


「う~ん、有難いやら、怖いやらっすね。」


「ご主人様父王を恐れる必要はありませんことよ。」


「そうっすか?取り敢えず宿舎と装備を確認しましょう。」


☆☆☆☆☆☆


用意された宿舎は広く豪華だった。それに“けぶらー”と“せらみっく”で作られた探検服は快適な作りで高価なにおいがした。


「うわー、豪勢だな俺はもう元の生活に戻れるか自信がないぜ。」


「その通りっす、これは一時的な贅沢と肝に銘じなければ。」


「ところで、このヘルメットについている金属のお椀は何使うのでしょう?」


「あっ、リズさんそれはこう使うっす。」


僕はビジュアルだけの炎をボール状に圧縮し、お椀にはめ込む。


「ほう、考えたのう、これは便利ぢゃ。」


「ダンナが居れば水の用意もいらねえ、明かりの心配もねえ、荷物がだいぶ助かるぜ。」


「それにしても、ちまちまと穴潜りは好かんのう、いっそ一思いに踏みつぶしてくれようかのう。」


「シャルさん、依頼は調査です、破壊ではないっす。」


「どうも妾の魔法は、狭い場所でに不向きでのう。」


「シャルの魔法は加減知らずだからな。WWWW」


「むう。」


「リリッカさんも、狭い場所を想定して、いつもの“紅”のほかにも、短い武器を用意したほうがいいんじゃないっすか?シャルさんいつか山の穴から取り出した、使い魔を封じた本があるじゃないですか、使えそうな者だけコンパクトに纏められないっすか?」


「ふむ、ちまちました仕事はちまちました者に任せるかのう。」


「心配すんなよダンナ、その辺の抜かりわねえよ。」


「ところでシャルロッテ様、このマジックアイテムは何に使うのでしょうか?」


二が小石のような様々なマジックアイテムを大量に取り出す。


「これはなのう、リズの浄化の魔法や妾の炎や雷の魔法を封じてのう、マリエッタの矢じりにしようと思ってのう、モンスターの弱点を突けばマリエッタの弓がさらに効果的になるのう、その他にも煮炊きやバリアにも使えるし何かと重宝するのでのう。」


「なるほど、これは思ったより探索の荷物が少なくて済みそうですね。」


「そろそろお腹が空いてきたし、夕食のころ合いっすね。」


☆☆☆☆☆☆


マスケギルドに到着するとテートさんが手招きしている。


「勇者殿こちらをご覧ください。」


青白く毛虫を大きくしたようなトゲトゲした、何か変な形の物が宙に浮いて見える。


「“マッパー”オーアール殿が作成したマスケダンジョンの入り口付近の地形図の立体ホログラムです。」


「ほう、そのオーアールとやらなかなかできるのう。」


「過分なお言葉恐縮であります、自分がオーアールであります。」


ひょろりの背の高い、黒くて丸い眼鏡をかけた男が声をかけてきた。僕たちと同じ“けぶらー”と“せらみっく”の探検服を着ているので間違いなく王宮から派遣されてきたのだろう。


「フールファスです、宜しくお願いします。」


「勇者様、王女様とご同行できること大変光栄であります、精一杯務めるであります。」


「おいおい、俺たちはそんなご立派なもんじゃねえよ、気楽にいこうぜ、な。」


「私も今は一介の冒険者ですわ。」


「取り敢えず食事しながらショカン山ダンジョン探索について話し合いましょう。」


「お食事はこちらに用意しております、マスケは何もない街ですが、海と山に恵まれ、食材には事欠きませんのでな、楽しんでくだされ。」


☆☆☆☆☆☆


僕達10人は大きなテーブルを囲み食事をしながら、ショカン山ダンジョンについて、話し合うこととなった。


「まず、オーアールさんご自身のご紹介と、ショカン山ダンジョンの所見についてお聞かせください。」


「はい!自分はオーアールと申しまして、“マッパー”であります。地形を瞬時に把握し記録する、マッピング魔法、その他皆様の狩に関する記録等、記録することはすべてお任せください。」


「ふむ、あのホログラムを見るとかなりの腕前と踏んだがのう。」


「有難うございます、記録に関することであれば、かなり自信があります。ただ戦闘に関しては全くの役立たずであります、また、荷物運びに関してもあんまり役に立たないであります、しかし自分はテレポーション魔法を使うことができるであります、きっと皆さまのお役に立てるものと確信しているであります。」


「そのテレポーション魔法について詳しく教えてください。」


「はい、テレポーション魔法とは簡単に言うと転移元の空間と、転移先の空間を内包している物質ごとそっくり瞬時に入れ替えるものであります。」


「入れ替える?」


「はい、およそあらゆる空間は物質で満たされているであります、例えばここ。」


オーアールさんは自分の目の前の何もない空間を手で包み。


「ここには、何もないように見えて実は空気で満たされているであります、空気もりっぱな物質であります、同じ空間に物質が重なり合って存在することはできないであります、無理に重ねれば大爆発を起こしてしまうであります。」


「なるほど、それで入れ替えるか、それはそれでなかなかに大変な技ぢゃな。」


「はい、皆様にお願いしておきたいのは、テレポーション魔法は急には使えないことをご理解いただきたいのであります。」


「んーっと、具体的には?」


「まず、テレポーション魔法を使うにあたって、できるだけ周囲の空間と転移させる空間を遮断する必要があります、何度も使うダンジョンの入り口には結構しっかりした造りの転移小屋を建築したであります。ダンジョンの中にはテントで作った簡易的な転移小屋をその都度持ち込むであります。」


「んーっと、つまり荷物を持てないというのは、その転移用のテントを担がなければならないってことっすね?」


「そういうことであります、テレポーション魔法は使用するその瞬間に、自分が把握していない、物質があると大変な事故になるであります、そこで周囲から動物や虫などが飛び込まぬよう、遮断する必要があります、出来れば風すら遮断したいのであります。更に転移元と転移先は同じ容積の空間が望ましいのであります。」


「成程のう、ではそのテントはダンジョン探索の後、転移元と使用した後さらに翌日の探索の転移先となるわけぢゃな、そのテント妾のバリア魔法で保護しようぞ。」


「有難いお申し出あります、転移用のテントの形がモンスター等の気まぐれによりその形を損なうと、テレポーション魔法じたい使えない事になるであります。」


「あとテレポーション魔法の制約などを説明して欲しいっす。」


「はい、人数は自分を含めて6名までであります、6名であればその方の荷物も含めて可能であります。」


一が顔面蒼白となり立ち上がった。


「勇者フールファス殿の魔法のおかげで、水や灯りの荷物は必要ありません、他の物も極力減らしますゆえ今一人何とかならないでしょうか?」


「えー、基本的に動かない物と違って生体は常に動きがありテレポーション魔法が難しいのであります、どんなに頑張っても心臓の動きを止めることは無理であります。」


「シスターズの皆さんはお留守番っすね。」


「それと、テレポーション魔法は膨大な集中力と魔力を必要とするであります、先ほども申し上げたように急には無理であります、回数も1日2回まで一度の転移から最低2時間は空けてほしいのであります。」


二が突然立ち上がった。


「皆様二日程ショカン山ダンジョンの入り口付近で洞窟探索の技術を、姫様にご伝授する時間を設けてもらえないでしょうか?」


「洞窟探索の技術ってなんっすか?」


「はっ、洞窟内は時に急峻な地形を越えなければなりません、そこで、ザイル、ハーネス、ビレイ、アッセンダー、カラビナ等の道具が必要不可欠となります、我らがご同行できない以上それらの道具の使い方、登攀技術を身に着けて戴きたく、お時間を戴きたいのです。」


「う~ん、ほかの皆さんはともかく、僕とリズさんには必要不可欠な時間っすね。」


「それならうってつけの場所が有るであります、入り口付近に5メートル程の崖上に横穴がありそこはまだ誰も探索していないであります、その崖を自由に上り下りできる様になれば、この後は支障なく探索できるであります。」


「それで決まりっすね、明日からその崖に挑戦っす。」


「うむ、その誰も行っていない横穴とやら、まず我らが調査するのぢゃ。」


僕たちはマスケギルドの美味しい食事を堪能し、明日に備えることとした。


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