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Part15 小旅行その2 港町アバスリ

トルードさんが案内してくれた、クロ山登山は随分と骨が折れたけど、あまりに素晴らしい景観と、清々しさで爽快な気分になり、また登ってみたいと思った。


観光協会主催の宴会は幾晩も続いた。


やっぱり一番は貸し切りの庭園露天風呂♡。


☆☆☆☆☆


僕達は出発の朝を迎えた。


「勇者様、又お立ち寄りください、アサヒ亭は何時でも勇者様のため庭園露天風呂を貸切にする所存ですぞ。」


「有難うございます。」ウルウル


「やい、熊親父ぃ困ったら何時でも連絡しな!」


「リリッカてめ~調子に乗るな!勇者殿こんな馬鹿娘だが宜しく頼みますぞ、こやつの亡き父に代わってお頼み申す。」


「ハイワカリマシタ」ヒキッ


「ソンキョ温泉街は勇者殿をいつでも歓迎いたしますぞ、ぜひ又お立ち寄りください。」


「有難うございます、それでは皆さんまたお会いしましょう~」


大勢に見送られ出発した。


☆☆☆☆☆


「さあ峠越えだ、ダンナ御者席にきな、馬車の御仕方を教えてやる。」


「はい、有難うございます。」


「いいか、ダンナ峠の登りは焦っちゃだめだ、馬に余裕を持たせなきゃ。」


「はい。」


なんとか、峠の頂上まで馬車を誘導することに成功した。


「ダンナ、難しいのは下りの方だ、馬車の重さが馬達を押すことになる、そこで大事なのはこのブレーキレバーだな、馬に負担を掛けない様馬車にブレーキを掛けながら、慎重に行くぞ。」


「ガンバリマス」


なんとか峠下りをやり熟した。


「へえ、今日1日で随分上手くなったな。」


「有難うございます。」


「無事峠を越えたようぢゃのう、キッタの町までもう少しぢゃ。」


「ああ、キッタの町は何もない街だけど、キッタギルドの食堂の味は天下一品だぜ、酒も旨いしよう楽しみだぜ。」


「ギルドの酒場ですか?」


「まあ、ギルドに酒場はおけねえ規則だけどよ、ギルドメンバー限定だし、そこはそれ食堂って事で、なっ。」

「キッタギルドを仕切っているのはマリアさんと言って、ナナさんの友達だ、メンバー限定でもナナさんの紹介状があれば大丈夫さ。」


☆☆☆☆☆


キッタの町はタカスカの町よりは大きかったが、アサカワの町の半分くらいだろう。あまり景気がよさそうには見えなかった。


「おー、ここがギルドの建物だ。」


「我らは宿の手配を致しますので、皆様はお先に御寛ぎ下さい。」


「一よ何時もすまないのう、おぬしらも早く来るのぢゃぞ。」


「はっ!」


うらびれた感じの建物に入っていく。


「マリアさんひさしぶり~!」


「あらリリッカちゃん、お久しぶりね。」


「マリアさんすまねえけどよ、今晩飲み食いさせてくれないか。」


リリッカさんはナナさんの紹介状を見せた。


「あらあら、リリッカちゃん結婚したのね、しかも勇者様なんて凄いわ、でもこの勇者様女癖はどうなの?」


「僕は、そんなんじゃないっす!あの宿命ってやつのせいっす。」


マリアさんのジト目に耐えかねて、リリッカさんに目で助けを求める。


「マリアさんダンナなら大丈夫、大事にされているよ、それにみんなただ者じゃないしなWWWW」


「まあ確かに“天変地異”とバシレウス家のお姫様はただ者じゃないわねWWW」

「いいわ、今日は私の奢りよ、その代りひとつ頼みを聞いてね。」


「へー、奢りってのは豪気だな、で、何をすればいいんだ。」


「あそこの二人組を見て頂戴。」


そこには如何にもでかい態度のDQNがいた、一人はファイター系もう一人は魔法系だろう。


「良くいる、田舎者のお山の大将ね、あの田舎者に世間の広さを教えてあげて♡それでもうちの稼ぎ頭だから怪我しない程度にね♡」


「要するに喧嘩を売ってくればいいんだな、任せなWWWWW」


リリッカさんは、ファイターDQNの後ろからいきなりひざ裏をけ飛ばした。


「てめ~」


いきなり膝かっくんを食らい、尻餅をついたDQNが目をむく。


「オーすまねえな、ほら。」


リリッカさんが差し出した手を取り立ち上がろうとしたDQNの手をいきなり離し、再び尻餅をつかせる。


「っだらぁ~喧嘩売ってんのか、ゴルァァァ」


「へへっ、俺は“紅蓮”のリリッカだ、買ってくれるのか?」


本物かどうか迷っているのだろう、DQNは目をぱちくりさせている。リリッカさんは肩の“紅”を少し抜いて見せる、DQNは確信を得たようだ。


「いやなんだその、腕で負けるつもりはねえが、持っている剣がちげーんだよ、つかっ俺も名剣を手に入れたら、こっちから勝負付けに行ってやらぁ。」


無様な言い訳…


リリッカさんは“紅”を鞘ごと抜き、ガラリとDQN前に転がす。


「使いなよ。ダンナ“きくいちもんじ”を貸してくれ。」


ヒノキの棒を持ったリリッカさんを見てDQNの乏しい理性は完全に吹き飛んだ。


「ガァァ!」


床に転がった“紅”を拾うとするがなかなか上手くいかない、何とか柄を握ったが、持ち上げられずにグラグラと体制が崩れる、そのうち無様に転んでしまう。リリッカさんの“きくいちもんじ”の切っ先?がDQNの額を突き青天にひっくり返ってしまう。


「てめーの腕じゃ名剣は早すぎるな。」


リリッカさんは“紅”をシュピィーンと抜き、切っ先をDQNに突きつける。


「ヒゥァァァ…」


ファイターDQNは完全に戦意を喪失したが今度は魔法DQNの理性が吹っ飛んだ。


「コッ…餓鬼、切り刻んでっ…たる!」


いつの間にかシャルさんがDQNの前の宙に浮いている、そして白く輝く球と闇の球を自身の左右に浮かべ漂わせている。


「小僧、貴様の相手はこの“爆炎”のシャルロッテぢゃ、どこまで頑張れるかのう?」


部屋の温度が2、3度下がったような気がする。


「ヘァゥゥ…」


こっちはあっさりと戦意を喪失した。


「まあたいへん!」


リズさんがDQNに駆け寄りヒールを掛け出す。


「リリッカさんも、シャルさんも駄目ですよ、弱い者いじめしちゃ!」


<うん、決定打ってやつだ。>


「逃げた方が良いっすよ。」


鼻っ柱をボッキリと圧し折られたDQN達がどたばたと退場してゆく。


「マリアさんこんなんで良かったか?」


「そうね、これで彼らも少し謙虚になってくれると良いわね。」


「また調子に乗ると、マリアさんの一声で“紅蓮”と“爆炎”が駆けつけることになるんっすね。」


「そういう事ね、だから今晩は奢り♡」


「皆様、宿の手配が済みました。」


「マリアさん実はもう4人居るっす。」


「ねえ、奢りってなんですの?」


マリアさんが一度天を仰ぎ、きょとんとする。


「ぶっはは、姫様も本物になると金を触ったことも、使ったこともないのぢゃ。」


事情を聴いたシスターズは自分たちの分はちゃんと支払うと申し出たが。


「こんな事に税金を使う訳にはいかないわ、このマリアさんが一度奢ると言ったんだから、何人でも奢りよ!」


キッタギルドの美酒と美食の夜は楽しく過ぎた。


☆☆☆☆☆


僕達はマリアさんに朝食まで奢ってもらい、意気揚々と出発した。


「見なよダンナ、向こうの方はもう高い山が見えないだろう、向こうは海だ、アバスリまでもう少しだな。」


☆☆☆☆☆


アバスリの町に来て最初に見たのは“熱烈歓迎!勇者様御一行”の大看板だった。


「なんかすげーな、俺たちも有名になっちまったか?」


「う~んなんか有りそうっすね。二さん三さん様子を探ってください。一さんと四さんは町はずれの目立たない宿を偽名で手配してください。」


「「「「心得ました!」」」」


「くれぐれも僕たちの事は内密にお願いするっす。」


「ここは亭主殿の見立てに任せようかのう。」


「皆さんも、目立たないように、リリッカさん真紅の鎧と“紅”は馬車において下さい、シャルさんも帽子をふく深くかぶって、子供のふりをしてください。」


「お、おう?」


「ともかく街に出てみるっすよ。」


街中を歩いていると程無く、人々の行列に出くわす。


「キャー、勇者様!!」


なんか黄色い声援が飛んでいるし…


「むう、あれは明らかに我らの偽物ぢゃのう。」


「あの赤い鎧と長い剣は俺のつもりか?」


その女はどうにも剣より場末の酒場が似合いそうだ。


「むう、あの子供は妾なのかのう?」


どう見ても只の子供が混じっている、ファンデーションなのであろう浅黒い肌をしているが、本物の迫力が全くない。


「あの変なドレス私の偽物なのかしら?」


ぴらぴらしたドレスを纏った女はどう見ても高貴な印象からほど遠い。


「あの男がなかなかやり手なんでしょう。」


腰にヒノキの棒を手挟んだ男は自信たっぷりに、にやけた顔をしている、こんな雑な偽物集団をそれっぽく見せているのは多分この男の口八丁なのだろう。


「それにしても、凄い歓迎っぷりですね?」


偽物勇者一行にぞろぞろと見物客が取り囲み、異様な歓迎ムード一色だ。


「これは何かこの町に事情がありそうっすね、ちょっと探ってみましょう。」


僕達は町の酒場や、市場をさりげなく聞き込みして歩いた。

情報収集にあたっていた二と三も合流した。


「えーっと、情報を整理するっすよ。」

「アバスリの海に“クラーケン”と言う怪物が出現している。この“クラーケン”には此処の地方行政官も手を焼いていて、退治できないでいる。“クラーケン”は船を海底に引きずり込むのでアバスリの漁民たちは漁もできない、港町アバスリの住民は困り果てている。そこに現れた勇者一行に“クラーケン”退治の期待が集まっている。…こんなとこっすね。」


「じゃーよ、まずあの偽物をとっちめて、ぱぱっと“クラーケン”を絞めちまえばいいんだろう。」


「リリッカさんそんなに簡単にはいかないっす、相手は海の怪物で何時もと勝手が違うっす。」


「そうぢゃのう、戦いは海の船の上に限定されるので、いつものように盛大に炎を使うわけにはいかんのう。」


「へっ…?」


「船は木造っす、船が火事になったら“クラーケン”どころじゃないっす。」


「私は船が沈んでしまったら、一緒に海の藻屑ですわ。リリッカさんは泳いで帰る自信がおありですの。」


「でもよ、“クラーケン”は置いておいてもよあの偽物どもを放っておくこたぁねえだろう。」


「町で情報収集したところ、偽物たちは町の人々の好意で、只で町一番の宿に宿泊し続け、毎晩宴会三昧だそうです。」


「二、本当か?やっぱりただじゃ済ませねえぜ。」


「ん~、やっぱり偽物は放っておきましょう。」


「なんでだよ!きっちり落とし前付けようぜ!」


「リリッカよ、偽物どもはやはりそのままがよいのぢゃ、“クラーケン”を倒す方法が見つからなければ、偽物に責任おっつけて我らは逃げ出すことができるのでな。」


「何か納得いかねえな!」


「偽物はともかく、やはり“クラーケン”退治は叶わないのでしょうか?」


「そうっすね、できればなんとしたい所っす、ともかくその方法を明日から探るっすよ、今日の所は宿で一休みっす。」


☆☆☆☆☆


「一さん此処っすよ!」


「宿の手配が整いましてございます、宿は8人でいっぱいの小さなものですが、偽名と言う事でしたので旅の大店の若旦那と言う体で、それなりに良い宿を用意いたしてございます。」


「一さん有り難いっす、そういう事で皆さんよろしくお願いするっす。」


一と四が用意した宿“海洋亭”向かう。


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