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Part10 特訓(魔法)

Part10 特訓(魔法)


今日は珍しく外食になった、普段の食事はシスターズの皆さんが用意してくれるのだが、僕のスキルアップのお祝いなので皆で街へ繰り出し、ティアさんの小料理屋でドンチャンと言うことになったのだ、ティアさんの店はこ戯れていて料理も旨い、リリッカさんと初めて会った日に来た店だ。


「初めて、スキルアップしたっす、リリッカさん有難うございました。」


「いや、頑張ったのはダンナだよ。」


「リリッカもこっそり見守っていたことが報われたのう。」


「ガー、それを言うな!」


「そう言えばフールちゃんって、何時も自分のお嫁さんに敬語よねえ?」


「ティアさん、僕は生活の全てを妻たちに依存しています。」<キッパリ>


「WWWWそれもそうねえ、変に威張らない男って好きよ。」


「おかみ、これ以上妾は不要ぢゃのう。」


「あら、私にだってちゃんと旦那様が居ますわよWWW」


僕達は旨い料理と、お酒に上機嫌だった。


「ふむ、次は妾が亭主殿の魔法の特訓をする番ぢゃな。」


「へっ。」


「次は魔法のスキルアップぢゃ、ギルバーディア家の秘法を伝授しようではないか。」


「ハイワカリマシタ」<ヒキッ>


☆☆☆☆☆☆


「亭主殿、これからちょっと付き合って欲しいのぢゃ。」


「なんですか?」


「これから、北の山中に隠して有る、魔道書や、呪具、実験道具等を取りに行きたいのぢゃ、家がこうも広くなると、手元に置いて置きたくなってのう。」


「力仕事には自信が無いっす。」


「力仕事は別に当てが有る、亭主殿の魔法について幾つか確認しておきたいのぢゃ。」


「解りました。」


僕達は馬屋のバートさんの所へ行き預けてある馬車を引きだし、北の山へ向かった。


☆☆☆☆☆☆


「ふむ、このあたりぢゃ。」


シャルさんが何もない空間を妙な手つきでなぞると、大きな穴が突然出現した。


「何したんすか?」


「ふむ、ここにちょうどいい穴が有ったのでな、荷物を放り込んで、邪魔が入らぬように、結界を張っておったのぢゃ。」


シャルさんが、ごそごそと穴の中から本を探し出してくる。大きくて、豪華で、重そうで、秘密めいた本だ。シャルさんはぱらぱらと頁を捲り、何かロゴの様な文字を指でなぞると、子鬼やら蝙蝠の翼が生えたゴブリンやらが飛び出してくる。


「なんっすか、こいつらは?」


「ふむ使い魔ぢゃの、正確には妾と友好関係にある古代神やら悪魔やらの使い魔であるのぢゃが、まあ妾が勝手に使っても良い者達ぢゃ、数が多くて覚えきれないし覚える気も無いのでな、こうして本にまとめておる。」


シャルさんが使い魔たちに妙な言葉で何事か伝えると、使い魔たちはてんでに穴の中から様々な物を取り出し馬車に積み込む。


「さて、亭主殿魔法とはなんぢゃ?」


「へっ、解らないっす。」


「どうやって今まで魔法を使っていたのぢゃ?」


「ただ、火が出て欲しいとか、水が出て欲しいと思っただけで勝手に出てきたっす。」


「ふむ、やはり不思議ぢゃのう、これが漂流者の魔法と言う物なのかのう?」

「良いか、魔法とは謂わば反則技ぢゃ、例えばここに火を出そうとする、何が必要か解るかな?」


「そうっすね、まず空気と可燃物それと温度でしょうか?」


「ふむその通り、亭主殿は物事を良く見えているようぢゃ。魔法とはその必要な物が揃わないのに、反則で事象を成すことぢゃ、まあここは森の中ぢゃからのう、空気と可燃物は有るとしよう、後は温度ぢゃ?」


「木を擦るとか、石で火花を散らすとかすっか?」


「普通はそうぢゃな、だが魔法で何とかしようという場合は、魔法の媒介を使い、例えば長ったらしい呪文とか、呪具だとか、中には生贄まで使う者まで居る、そうして己の魔法力を必要な物に変質させるのぢゃ、この場合は温度ぢゃのう。」

「優秀な魔法使い程その媒介は少なくて済むわけぢゃ。」


「成る程って、僕は何か媒介を使っているんっすか?」


「だから不思議なのぢゃ。」

「まあ、媒介を必要としない魔法と言えばリリッカもそうぢゃな。」


「リリッカさん?魔法とは対極に居る人だと思っていたっす?」


「魔法とはすなわち反則技だと定義すればのう。そうぢゃのう亭主殿そこの岩を、“きくいちもんじ”で下に押さえつけるとする、どこまでの力で押さえることが可能かのう?」


「う~ん、僕の腕力を無視すれば僕の体重までっすね。」


「ふむ、良く解っておるようぢゃ、ではリリッカのそれは何と見る。」


僕は、リリッカさんがドルジスの巨大な斧を助走無しの力だけでへし折った事を思い出し。


「確かに反則技っすね、ありえない現象っす。」


「リリッカの魔法は、まあ魔法かどうかは本人は否定するだろうけど、あの“紅”に秘密があると思っておる。」


「あの真紅の刀ですか、確かにいろいろ怪しそうですけど?」


「“紅”の刀身は時間やら空間やらがいろいろ歪んでおる。」


「えっと、どういう事っすか?」


「つまり、“紅”は見えている所に有るとは限らぬという事ぢゃ、しかもその歪みは常に移ろっている、並みの者では構える事さえ不可能ぢゃろう。」


「でも、リリッカさんは子供の頃から使っているって?」


「いきなり振り回せたわけではないのぢゃろう、幼少期の適応性の高さと、リリッカの天稟が可能にさせたのぢゃろう。」


「やっぱりリリッカさんは凄い人だったんですね。」


「あの“紅”を操る過程で、魔法と言っていい力を身に付けたのぢゃろう、何らかの体技が媒介となっている可能性もある、あ奴は、自分が自覚している以上に可能性を秘めておるのう。」


「ほえ~。」


「それより問題は亭主殿の魔法ぢゃ、まず水球を出してみよ。」


「はい。」


僕は何時もの様に直径1m程の水球を宙に浮かせる。


「亭主殿、あの水球は宙に浮いておるのぢゃが、何らかの力で下から支えておるのか?それとも重力を無効にしておるのか?」

「良いか、物事には理と言う物が有る、理を理解せずに反則は使えぬものぞ、妾にはあの水球が浮かんでいる理が理解できないのぢゃ。」


「えーっと、特に意識してないっす、ただその辺に有ってねと思っているだけで。」


シャルさんは水球の周りを手探りして、何かを確かめている様だ。


「ふーむ、不思議ぢゃなんの力も感じられない、水もこれだけの量となるとかなり重いはずぢゃが、やはり重力を遮断しておるのかのう?」


「重力?遮断?」


「うむ、物はすべて、お互いを引きあっておる妾は重力と呼んでおるがのう、物が重いほどその力が強い、身近な物で一番重力が強いのはこの大地ぢゃのう、そのせいであらゆる物は大地に引き付けられている、我らが立っていられるのもそのおかげぢゃな、その重力に逆らおうとすれば逆方向に何らかの力が必要ぢゃ、例えば鳥が羽ばたく様にのう。」


「えー、はいそこまでは解ります。」


「あの水球には重力に逆らう力を感じないのぢゃ、まるでそこだけ重力が無いようにのう。」


「うー、申し訳ありません、自分で何をしているのか全く分からないっす。」


「ふむ、そうかしかし重力を自在に操る事はかなり難しいことぢゃ、昔妾も研究してのう、重力をどうにかしようとすると空間や時間がわずかに歪んでしまうのぢゃ、それを何とか辻褄を合わせようとして、町を幾つか吹き飛ばしてしまったのぢゃwwww。」


「シャルさん笑い事じゃないっす、そもそも重力の正体は時空の歪みそのものじゃないんすか。」


「む…、そう考えると幾つか合点がいくのう、亭主殿は意外と博識ぢゃのう魔法の素養は十分ぢゃ。」


「でも、魔法の事なんか何も解っちゃいないっす。」


「そうか、一つ実演して見せようぞ、あの水球を見ていよ。」


シャルさんが何か不思議な声を出した刹那、水球の真ん中がピカッと光り、水蒸気爆発を起こした。


「なな、何をしたんっすか?」


「ふむ、あの水球の中に地獄の業火を呼び出したのぢゃ。」


「えっ、凄い空気と可燃物と温度3つ共反則じゃないっすか。それにあの声は?」


「呪文がちょっとばかり長くなるのでな、高速詠唱を使ったのぢゃ。」


「なんか凄すぎてついて行けないっす。」


「亭主殿にも何れこれ位は使ってもらわねばならぬがのう、今日の所は新しいことを覚えるより、今使える物の有効活用を考えようではないか。」


「へっ、水芸は確かにいろいろ使っているっす。」


「亭主殿水球は自由に移動させることができるのかな。」


「はい。」


僕は水球を出していろいろ移動させて見せた。


「ふむ、もっと高く、そうぢゃ、そこから自由落下さることが出来るかな。」


「はい。」


水球はかなりの高さからドシャっと落ち水しぶきを上げる。


「水は重いからのう、あれだけでかなりの衝撃よのう、十分武器ぢゃ。」


「はっ!考えたこと無かったっす。」


「もっと早く動かせるのかのう。」


「はい。」


水球をグルングルン動かして見せる。


「例えば敵がいてのう、その敵を中心に水球を動かし続ければどうなるかのう。」


「溺れますね。」


「そうぢゃ、十分戦えるのう。」

「もし敵が襲い掛かってくるとしよう、自分と敵の間に水球を発生させれば、敵の動きをかなり妨害できるのう。」


「なるほど、戦いに応用できるんっすね。」


<やった!僕の魔法でも戦える!!>


「亭主殿次は炎ぢゃ。」


僕は、ビジュアルだけの火柱を立てる。


「これだけでも陽動に使えるがのう、もっと小さく手のひらに載るくらいに圧縮できるかのう。」


「やってみます。」


僕は火柱に意識を集中し、小さなボールをイメージしてみた、すると火柱は野球ボールほどに縮まり、明るく輝き宙に浮いている。その輝いているボールを手に持ってみてもやはり熱くはなかった。


「ダメっすね、圧縮しても熱は無いっす。」


シャルさんはそのボールを受け取り。


「いやそれで良いのぢゃ。」


「へっ。」


「これから夜間や洞窟の中とかな、光の届かぬ場所での戦闘も有ろう、これはまたとない照明ぢゃ。」


「そうか!照明になるんっすね。」


「次は落雷ぢゃな。」


僕は、サウンドだけの落雷を鳴らしてみる。


「亭主殿、音とは衝撃波ぢゃ、何らかの衝撃が空気に伝わり空気が振動して音となるのぢゃ、空気だけぢゃない水にも硬い物体にも振動は伝わる、いや硬い物ほど速く強く伝わるものぢゃ。」


「つまり、何処かに衝撃の元が有るという事っすね。」


「うむ、これだけの音ぢゃ、かなりの衝撃が元になっておろうよ。」


「つまり、衝撃の元を探し出せれば結構使い道が有るという事っすね。」


「うむ、そう言う事ぢゃ。岩でさえうまく振動させれば簡単に砕くことができるものぢゃ。」

「荷物運びはもう終わったようぢゃな、今日はこのくらいにしておうかのう。」


「はい、有難うございました。」


<凄いぞ!僕の魔法も使い方次第では、結構使えるじゃないか、わくわくしてきた。これはあのくそ女神に感謝しなければならないのだろうな。>


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