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機械皇女は行進する  作者: ごてぱんだ
第一章〜お前の生きる価値は私が決める〜

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第三話~冒険者ギルド~

 ……さて、どちらへ行こうか。


 ピリオンと別れ、フィリアは一人立ち尽くす。

 なるべくして行くは北側にあるエデルバエルであろう。人間の国よりも魔物の国である方が恐らく目立たないし……が、ローブがある分ましとはいえど今の真っ赤なドレスのまま街を出歩くなら、どちらにしても悪目立ちするような気もする。運がいいのか悪いのか人型であるが故に生じた選択肢にフィリアは頭を抱えていた。


 「んー。規模が小さい所から行くべきか……よし、そしたらまずは西だな」


 どうせどこへ行っても同じであるのならば、規模が小さい場所から訪れるのが後々楽になるであろう。更に言うなれば、今の力量も未知数なのだ。だったら猶のことそうである。そうフィリアは思う。


 日の光がほとんど遮られ木漏れ日が所々に降る鬱蒼とした森の中、フィリアは、西だ。と言われた方向へ歩き出した。

 管理している。そうピリオンが言っていたように獣道ではあるものの歩いていてあまり不便を感じない。生前、ここではないものの森自体は何度も足を踏み入れているフィリアからすると、イメージとはかけ離れたものであった。

 というのも、フィリアの知っている元来の森であればある程度整備された道があるのだが、そこを外れると殆どと言っていいほど人間の歩ける場所ではなかったからだ。

 ただ、そこがたまたま管理されていなかったのか、それとも人類が見落としている場所があるのか。

 どちらにせよフィリアにとっては、今はこの歩きやすく整えられた獣道が何より心地よかった。


 そうして西へしばらく歩くとフィリアは大きな一本道へ出る。

 フィリアの両側、南北へ伸びる道。先程、ダンジョンの出入口まで案内されている途中に話していた道だ。


「確かピリオンの爺、森の中に縦横に伸びる道があるとか言ってたな。これのことか」


 ふと、その時の会話を思い出す。


『この森には、それぞれの国を繋ぐための道があるのじゃ。まあ、友好的……とまでは行かんが、戦う理由もないでな。それにこうして道があった方が色々と便利なんじゃよ』


「へぇ、まあ確かに両者とも攻撃的にはならないね」


『そうじゃろ?』


 この話をグローリエの奴らが聞いたらなんて言うだろうか。フィリアは一人、思い出しながら乾いた笑いを響かせた。


 ここまで出てしまえば、後はピリオンから聞いた通りだ。北へ上り、十字路で左へ。迷うわけもない簡単な道だ。何なら丁寧に十字路には道案内の看板まで付いているとまできた。


「はあ、何処もここみたいに親切なら助かるんだけどな……」


 丁寧な道筋にフィリアは迷うこともなくすんなりと森を抜ける。


 さて、数刻ぶりの陽の下で眼前に広がる草原、長く続く道。何となくフィリアは大きく深呼吸をした。見知らぬ土地とは言えど、それほど生前と景色は変わらない。その点に関しては少しばかしの安堵だ。

 フードを深く被り、フィリアは更に足を進めた。冒険者、行商人、各地を飛び回っているであろう吟遊詩人。ぼちぼちとすれ違い段々と街へ近づき、あれよあれよあっという間に街に到着した。


「ようこそ、ファリオブレへ。見たところ君は冒険者だね?」


「まあ、そんなとこだな」


「名前は?」


「ビア」


「了解!じゃあビア、ファリオブレを楽しんでいってくれな」


「どれ程いるかは分からないけど、いる分には楽しむよ」


 小国にありがちな、あるのかないのかよく分からない検問を抜けフィリアは街に入る。

 そうして訪れた高い城壁で囲まれた街、名前をファリオブレ。街、というかそのものが国であるこのファリオブレは、小さい国家でありながらもフィリアの想像を超える賑やかさを見せていた。あちらこちらで活気あふれた威勢の良い声が聞こえる。


「おお、元気だな」


 その賑やかさに、思わずフィリアも感嘆の声が漏れた。


 外からは城壁で認識できていなかったが、ファリオブレは小さいと言い表すには大きすぎる印象だ。国の後ろが山で囲まれているからか、奥に進むにつれて段々と坂になっているファリオブレ。城を国の一番後方に構えており何処からでも城が見える構造になっているのだが、入国したばかりのフィリアから見たその城は豆粒ほどの大きさであった。

 想像以上の街並みに立ち尽くしていると、程なくちらりとフィリアの視界に割り込むように声が飛んできた。


「すいませーん!もしかして、旅のお方ですかぁ?」


「え?ああ、そうだけど」


 呆けていたのか、フィリアは素っ頓狂な声を上げる。

 目の前に飛び込んできたそれは、可愛らしい白いフリルのついた淡い緑色のワンピースを身にまとった愛嬌のある少女だった。165cm程のフィリアと比べ目線の高さがほぼ頭一つ小さいのだから、誰が見ても愛嬌の塊であろう。


「もしよかったら、この街を案内しても?」


 少女はあざとく首を傾げフィリアを見上げる。男であれば二言三言で許諾しそうな面構えであるが、残念ながらフィリアは女だ。

 可愛さに少しだけ心が揺れながらも、結構。と一言で突っぱねて無下にする訳にもいかない。


「お願いしたいところだけど、私絶賛無一文で」


 無一文は事実だが、当たり障りないように断りを入れようと両の手をわざとらしくぶらりと振った。

 が、無垢というものか善意というものかは何とも末恐ろしいものでその少女は、


「お金とかそんなのいいんです、いいんです!私が案内したいだけなので!」


 と、諦めるどころか寧ろフィリアの両手をがっしりと掴み目を輝かせ始める。


「……ふーん、そ。じゃ、お願い」


「ありがとうございます!!」


 ……押しに負けてしまった。

 あまりにもな強引さにフィリアがその場でたじろいでいると、そのまま少女は手を引き街を歩き始めた。


「今隣に見えるのが酒場です!ファリオブレには色んな国から冒険者さん達が来られるので交流場所としてはピッタリなのと、ここの酒場は宿屋も並立してるのでお勧めですね!武具やアイテムの類は一番近い場所ですと、ここからまっすぐ行ったところの十字路に集まってますね!雑貨などもそこがいいかと」


「アンタ、案外説明上手だな」


 話し慣れているのか、以外にも手際よく転々とファリオブレの街を案内する少女の様にフィリアは少し感心する。


「いやあ、それほどでも……そういえば、またどうしてファリオブレに?」


「ここら辺で一番来やすそうだったからかな」


「あー、まあ確かにこの辺りだと一番小国ですからね。実際どうです?小国という割には結構広いんじゃないんですか?」


「広くでびっくりしたよ。」


「そうでしょう!まあ、周辺国が広すぎるだけですが……一都市の大きさでは負けませんよ!」


 自慢げに少女は胸を張った。

 きっとこの少女はこの国が好きなんだろうな。最後の最後まで好きになれなかったフィリアからすればそういったものはやはり羨ましく思う。


「ということで、東地区だけですがご案内いたしました!」


「助かったよ、おかげでよく知れた」


 時間にして四十分程、二人は何地区か分けられているうちの一つを回り切った。

 森を抜けた時にはまだ高々と昇っていた陽も時間が経ち、辺りはすっかり橙に染まっている。


「ところで無一文と聞きましたがこの後行く当ては?」


 不思議そうに少女は尋ねた。

 この身体になってからフィリア自身空腹の類や疲労などはあまり感じてはいないが、確かにファリオブレに居るにしろなんにせよ、金銭は必要だ。


「あー、あんま考えて無かったな。」


「折角なら、ある程度の職と仕事ができるおすすめの場所があるんです。最後にそこだけ案内しますね」

 

 そう言うと都合よく少女はぴたりと立ち止まり、右手にある建物を手で示した。


「と、言うことで着きました!ようこそ冒険者ギルド、テルシエノへ!改めまして……」


 そして、先ほどまでの可愛げな装いから一転。


「私はここのギルドマスターのクノシエと申します。以後よろしくお願いいたします」


 目を細めながら妖艶な笑みを浮かべて、一言。

 このギルドマスター、初めから自身のギルドへ加入させる為に声を掛けたということ……相当やり手らしい。まんまと嵌められた。と、フィリアはそう思うものの、一文無しは事実であったし実際に行き場に困っていたのもそうである為、してやられた事に頭を抱えた。


「……初めからこれが狙いだったのか」


「ふふ。さあ?どうでしょう」


「まあいいよ。行く当てがないのは事実だし。アンタ話してて悪い気しないし」


「それは何より。私もあなたのような実力者は歓迎ですよ。それにそんな実力者をみすみす見逃す程、馬鹿じゃありませんもの」


____________まだ何も見せてないのに、何処まで見抜いているんだ此奴は……


「言うじゃん。まだ私、何も見せてないけど?」


 底が見えないクノシエの、紫に濁る色めいた瞳に少し興味をそそられながらフィリアは煽る。


「そういうの分かるんですよ、私。ですが、面白そうなのでその証明に少し場所を変えましょうか。貴女が何処までなのか、私も気になっていましたし」


「はは、いいねぇ……そう言うの私は好きだよ。それに丁度試したかったんだよ」


 そう言い、二人の少女はギルドの奥へと足を進めた。

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