表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機械皇女は行進する  作者: ごてぱんだ
第一章〜お前の生きる価値は私が決める〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/5

第二話~転生~

 ……だなんて、簡単に終幕は訪れない。


 確かにラインスの一撃に首を落とされた筈だったフィリアだが、次に気が付いた瞬間に目にしたものは全く別の景色であった。


「……あ?何処だここ」


 青天の霹靂にフィリアは一人、静かに声を響かせる。見た覚えもない場所にその表情を曇らせた。

 洞窟のように冷んやりとした薄暗い空間、等間隔に置かれた揺らめきながら辺りを照らす松明。高い天井を支える為聳える柱、石で舗装したであろう地面、恐らく何かの施設なのだろうが不思議なことに人が居た形跡は一切見えない。


 確かに私はあの瞬間、クソ兄貴に殺されたはず……ここは地獄かなんかか?


 正確に死んだ瞬間までは思い出せないものの、ラインスがヘマをする筈がない。だから、死んではいるのだろうか。


 フィリアはそう、心の中で一先ずの状況整理をする。


 そして、同時に一つ違和感を覚えた。


「そんでもって、この身体はなんだ?」


 違和感。それは自身の身体であった。

 凡そ人らしく再現された肌の質感、鼓動の音、呼吸の動作。人類が人類であるが故の構造をしているのにも関わらず、それに反した身体の身軽さ、ブリキのように硬い身体、そしてまるで血が通っていないような冷たさ。フィリアは一瞬でこれが人ではなく、紛い物の人形の類であることを理解した。一丁前に見てくれと服だけは前の物と同じだが。


 首を断ち切られて、知らない場所に飛ばされて。あまつさえ人に非ず。命があるだけでも御の字といったところなのだろうが、少しばかし情報量が多すぎる……筈なのだが、以外にもフィリアは驚くそぶりを見せない。それどころか、何事もないように立ち上がると自身の身体その指先に至る細部までじっくりと観察し、軽くその場で動かして見せた。


「へぇ、結構いいじゃねえか」


 軽快に動き尚且つ丈夫な身体つきに納得したのか、フィリアは満足そうに悪童らしく笑みを浮かべる。ここまでの理解力というべきか状況把握力には、最早流石としか言いようがないだろう。


 次の瞬間には何事の疑問もなかったかのようにフィリアは辺りを探索し始めた。


 大まかに長方形の形をした部屋、全体は薄暗くよくは見えないが松明が灯っている部分に何やらはっきりと壁画らしきものが描かれている。


「……んだこれ?」


 近くで見てみるが、フィリアには何と描かれているかさっぱり分からない。


 詳しく追うと、どうやらフィリアが目を覚ました場所から丁度反対側の入り口より壁画の物語が始まっているらしく、右回り左回りでストーリーがことなっているように見受けられる。片方は救済を、もう片方は破壊を望む者たちが描かれていた。


 描いてあることは理解できるが、だから何?という疑問が湧く。


 歴史などに精通しているのならば何かしら分かったのかもしれないが、生憎フィリア皇女であった身にも関わらず勉学はからっきしであった為この有様だ。


 過去の自分を少し恨みながらも、分からないものはどうしようもない。フィリアはため息を吐きながら道を進む。


 この部屋唯一の出入口であろう一本道。進むにつれて段々と岩肌がむき出しになってきた。場所は違えど、よく見る景色だ。


_______多分ここからは、魔物がでる。


 何となくの直感。というよりかは経験則だが、間もなくしてフィリアのそれが正しかったことが証明されることとなる。


『おいそこの……止まれ』


 暫く彷徨った中。ピタリ、フィリアは前方から放たれたその声に反応し止まった。少し渋みがかった深みのある声。

 明らかに人の言葉ではなく何とも言い難い声のはずだが、何故かフィリアには内容が聞き取れた。これも紛い物になった影響なのだろうか。向かってくるモノが瞬時に魔物だと理解したフィリアは右足を一歩後ろに引き、少し重心を下げる。


『そう身構えるな。こちら側にそんな敵意はない』


 が、飛んできた言葉は意外にも、敵意がない。その言葉の通りそれを証明するかのような棘が無く柔らかい声であった。

 声の主は重い足音を立てながら量の手を上にあげ、暗闇の向こうから出てくる。警戒は解いていないが、ほんの少しフィリアの肩から力が抜けた。


『すまない。驚かせたようじゃな。儂の名前はピリオン、見ての通り種族はリザードマンじゃ。普段はこの近辺の森及びその施設を管理しているのだが……君の顔は初めて見るもので声をかけさせてもらったよ』


「それは失礼したわね。私は……」


 すんでのところでフィリアは口を噤む。

 フィリア・グローリエ。あまりにも有名なそれは、幾らフィリア自身魔物と接点があろうがなかろうが、この場で名乗ることにおいて最も悪手であろう。そうフィリアは気が付いた。更にいうのならば、この先どこかの街に行く際もフィリアと名乗るのはよくない。特にそれがグローリエ王国に届くとなると猶更だ。

 少し考え、結局フィリアは適度に嘘をつくことにした。


「ビア。見てくれ通りただの人形よ」


『ただの人形ねえ。まあ、無駄な詮索はせんけど。ビアとか言ったの、中々面白い形をしておるじゃないか』


 ピリオンは顎に手を置きニヤリ。まるでフィリアの口から咄嗟に出た出鱈目を見抜いているかのような言い草だ。


「そりゃどーも。お気に召していただけたようで」


 なるほどね、そういうタイプか。

 未だ実際に自身の顔を見ていないフィリアにとって、正確に何者であるかなど判別しようがないのだ。その中で全てではないにしろある程度見抜いたうえでの余裕さ。

 取り繕ってはいるものの、この短いやり取りの中でフィリアは理解した。こいつは相手にすると相当面倒くさい。


『とりあえず、お主。これからどうするつもりなんじゃ?ここいらの出身じゃないじゃろ』


「ここを出てその後は暫く旅でもしようかと思っていたのだけど」


『旅か、ええ趣味しとるの。そしたら出口まで案内するから着いてこい』


 意外にも話はすんなりと進んだ。フィリアとしても外まで案内してくれるのはありがたい。


「素性が知れない無法者にも優しいんだな、アンタ」


『儂らだって、誰これ構わず取って食うなんて野蛮なことはそうそうせんぞ。少なくともこの近辺、儂の管轄ではな。それにお主も別に儂らに敵対しておらんし』


 フィリアを案内しようと踵を返しながらピリオンは余裕そうに笑った。


 ピリオンに案内されている途中、様々な場所を通っているがフィリアの見立て通りやはりここはダンジョン……いや、魔物の住処のようだ。何階層にも広がる空間、道幅も広ければ、岩肌がむき出しになっているとはいえどある程度は舗装された道、途中ですれ違った魔物たち。それにピリオンが管轄しているのも本当らしい。殊更疑っていたわけでもないが、すれ違う魔物たちからも相当好かれているようで改めてフィリアの中で魔物という存在の認識が変わっていく。

 

 それに幾つか分かったことがあった。途中ですれ違った魔物たちが口々にフィリアの自身では見えず確認できていなかった特徴を言っていた。あるゴブリンは綺麗なブロンドのレイヤーボブと。あるオークはキリッとした目に地平線のように透き通った瞳の色を。

 生前のころは金色の髪に薔薇のように赤い瞳であったため、身体的な特徴でいうとどうやら生前のフィリアとは別らしい。


 小一時間ほど進んで、ようやく入り口までたどり着いた。


『ここが出口じゃ。暫くは森が続くが東まっすぐは何と言ったか忘れたが人間の国家があったな。西もそうじゃ、がこちらは東と比べると小さき国じゃ。南は……今はお勧めせん。北は儂らいわば魔物の国、エデルバエルじゃ。どこに行くかはお主に任せるが、気を付けるんじゃぞ』


「実は私、土地勘なくて。助かったよ、教えてくれてありがとう」


『何、礼には及ばん。ところで、儂は目が見えなくての。お主……半端もん、いやギリまだ人じゃろ。もちっと上手にやりなはれ。まだ人間の部分が多く見えるぞ。まあ、殆ど問題はないと思うが……儂と同レベルいや、儂より強い奴なんぞこの先数え切れん程おる。人類側、儂ら側関わらずな。元々人間であるならそっちに馴染むのは簡単かもしれぬが、儂らともとなると、もうちっと昔のことを忘れるこったな。第二の人生だと思って適当に生きるのが得じゃよ。ま、お節介爺の小言じゃが。後これも持っていくといい』


 そう言いひらり手首にしていたバンドを振ると、忽ちそれは身を隠すに丁度よいフード付きのローブへと姿を変えた。

 このローブさえ被ればまあ、怪しまれることはなくなるであろう。


「……小言もそれもありがたく受け取っとくよ。その通りだし」


_________ずっと見てくれの話してんのかと思ったけどこいつ、私の魂の形を見てモノ言ってたのかよ。猶更敵う気がしねえな。


 驚きと驚嘆でフィリアの口が滑る。とはいえ、ピリオンに隠し事をしても意味をなさない事を理解してしまったので、嘘をついたところで。というのもあるが。

 自分よりも数段上であろう相手に少し苦い顔をしながらも、フィリアは先に進んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ