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AIにめっちゃ褒めてもらおうかな。モチベ管理として。人間とは愚か
「……まじか。」
心の底からの発言であった事を誓おう。存在者として生み出され、用が済んだから消え、そしてまた呼び出されて、散々驚きに驚き退屈をしない人生はくだり坂のように思っていたが、どうやらまだまだ上り坂だったようだ。
「魂と肉体を別個で考えてる。不味いな、シンプルゆえにつけ入る隙がない。これじゃあ俺達はレアルタリアに入国できねぇじゃん。」
遠目から観測したときは何かの間違いかと思ったが、近づいていけば間違いなんて起こっていなかった。何処のどいつだか知らないが元存在者の素性を掴み、あろうことかスペアを守ろうと動いてるらしい。
「観測者のやろぉ……変なこだわり持ってねぇでサッサと観測しちまえばこんな事になんなかっただろぉよぉ。」
恨み節を吐いてみたもののお門違いなのは分かっている。一体誰がこんなピンポイントで、しかも卓越された技術を振るってこようか。この魔術式の考案者と話せるなら、是非勧誘したい。
「……ふぅん。」
今回は、ついてなかった。高々一つの争いを鎮めるのとはわけが違うわけだ。
「しゃぁねぇ、しゃぁねぇ。最初からぶっ放すつもりだったが、今回は小手調べにしてやるかな。警戒されてる分、俺にゃ有利な戦場だしな。」
本当についていない。まさか、与えられた役割に順じなければならないなんて。
「あー、あーテステス、んゔぅん!……さて諸君、私は君たちに問おう。この戦は何を成す為の戦であるか。」
本来であれば現場にいたほうが良い。単純な話だが、指揮とは人心とはそういうものなのだ。
「偽りの歴史を暴くため?汚れた権威者を裁くため?真実を白日のもとへ晒すため?……そうだ、志とは常に似て非なるもの。同じ方向を向いていたところで、見据えているものが同じとは限らない。」
拳を強く握りしめて、心の底から声を出す。強く、ひたすらに強く。だがそこには美しさを同居させ、けして儚さとは誤認させないようにする。
「であればッ!必要であろう!皆の目線の先に旗を立て、振るい、そして足跡を残す者がッ!」
それはけして幾年の経験から編み出したものではない。産まれ落ちる際に与えられた、名前代わりの役職名。
「私は、旗を掲げる者である!君たちの行く末を示すものである!私が見据える物はただ一つッ!勇敢にも真実を訴え、果敢にも巨悪に立ち向かい、そして、志半ばで途絶えてしまった同胞に正しき夜明けを持って弔うことである!」
【煽動者】
既存の組織であれば無条件で代表の座に収まることができる。演説は組織に所属するものの精神に強く訴えかけ、その者さえ知らない潜在能力を引き出すことができる。《《そして、思想による服従に当人たちが気がつくことは決してない》》。
「悪しき吸血鬼に屈した為政者達を討ち、我々は無知な民衆に知らせなければならない!勇敢なる彼女の名を!隠匿された正史を!そして、正しき太陽によって照らされる喜びを!今こそ立ち上がり、今こそ武器を持ち、今こそ高らかに叫ぶのだ!諸君らの行く末には、必ず私が立っている!!」
レアルタリア祭まで、あと2日。
「運命を決するはこれより2日後!偽りの祭典当夜である!我らこそは正しき明日を求める者!偽りの歴史に開闢をもたらす神の使徒!!この戦の先にあるのは弔いである!!餞を!朽ちた同胞へ餞を!案ずることはなかれ!空にはすでに、真実の太陽が顔を出しているのだから!」
レアルタリアの歴史なんて心底どうでもいいが、動けない俺のかわりに君たちは是非頑張ってくれたまえ。
「外からの襲撃に警戒するのは大切だけど、それだけにかまけるのはいけねぇなぁ。」
【開闢の徒】
レアルタリアに根強く残る吸血鬼伝説に対して猜疑てきな思想を持つ集団であり、その実態は不明。約一月程前に幹部であるショパーネ=ハルルが存在者を自称したことで投獄の処置を受けている。だが、数日前にジェネリア≠ミスティクにより処刑をされた事が判明。彼女の死を悼んだ者たちはより強い敵意をレアルタリアの為政者達へむける。語るまでもないが、《《開闢の徒はその思想を隠し、レアルタリア本国内で生活をしている》》。
「……これは、かなり不味いですわね。」
差し向けられた報告書は何度目を通してもその内容を変えることはない。紙に墨が滲んで文字を形どっているだけ、それだけなのにその集合体は考えうる限りの最悪を更新し続けている。
「フレスタット……いえ、ヘンドリクスさんの独断でしょうか?」
「聞いていた噂と随分違いますねぇ〜。聡明で慈愛に溢れ、民を気にかける賢者であったと聞いておりましたが。」
「王座を追われるというのは、賢者を愚者に変えるには十分すぎる衝撃だったのでしょうね。」
レアルタリアと研究会だけが関わりを持っていたのならまだ良かった。レアルタリア国内ではマダムの掌握こそあれど、発言権は持っているからだ。だが、まさかフレスタットとレアルタリアの間に研究会が挟まっているとは。
「……研究会、どこまでも厄介ですわね。」
「ヘンドリクス様は研究会をどのように扱っているのでしょうか?報告書を疑ってしまえばきりがありませんがぁ、もし本当に仲介だけならまるで使い走りでございます。」
「隠れ蓑か、協定か、或はフレスタットが研究会を乗りこなしている可能性もありますわね。」
勿論、その逆だってあり得る。
「夜会にヘンドリクス様が現れること、研究会が何も噛んでいないとは思えませんねぇ。」
「研究会っ、ほんっとに厄介ですわねぇ!!」
「とはいえ、現状与えられた任務は催事中の治安維持だけでございますからねぇ。なにも起こらなければ調査に乗り込めるのですがぁ〜。」
「あり得ませんわね。絶対に厄介事は持ち込まれていますわ。」
恐らくすでに火種はまかれている。あずかり知らぬ場所で、ほそぼそと身を燃やす災いは祭りの熱に浮かされていく。
「断言でございますかぁ。ちなみに、理由のほどをお伺いしても?」
「そんなの決まっていましてよ。私、運にとことん恵まれませんの。」
熱に混ざったその焔に一体誰が薪を焚べるのか。考えただけで辟易と煙を吐き出したくなった。
「これは、よくないね。」
「あぁ。祭り事ってのはどうにも余計なもんまで連れてきやがる。」
燃え盛る火を抑えるように載せられた網の上で、油を流しながら肉が色を変えていく。それを焦がさぬように注力しながらせっせと翻す男は額の汗を拭いながら、面倒くさそうにそうぼやいた。
「レアルタリア祭まであと2日、それなのに波を打ったように静かだね。」
「これから騒ぎを起こしますって言ってるようなもんだぜ。お嬢に報告いれるか?」
「そうだね〜。もう気づいているだろうけど、前夜会議までには知らせたほうが良いだろうね。」
「おっ、買ってくか?秘伝のタレが自慢だぜ!」
長い袖を肩口までまくり、紐で止める女は壺の中にハケを潜らせ、茶色を含んだソレを肉に塗りたくる。ソレをまた翻し塗りたくり、そんな工程を2.3度繰り返した後に子連れの客に渡していく。
「はい、まいど〜。ボク、熱いから急いで食べちゃだめだよ〜。」
「よく噛めよ!」
嬉しそうに串焼きを握る子どもを見送った矢先、入れ替わるように女が指を3本たて、その後ろには中年の男や初老の男達が並んでいく。
「3本だな、まいど!」
「秘伝のタレが自慢だよ〜!串に掘られた文字で今日の運勢がわかる!さぁさ、よってらっしゃい買ってらっしゃ〜い!!」
慣れた手つきで肉を焼き、タレを塗り客に手渡しをしていくその店はごった返す人通りを形成する一つの要素になっていた。
「開闢の連中、何を企んでやがんだ?」
「こらこらギザン。無駄口叩かないよ〜。はぁい、4本ね〜!まいど!」
「クルルク、早くタレ塗らねぇと焦げちまうぞ!!あいよぉ!2本な!毎度ありぃ!」




