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ブレイブマン・イレギュラーズ  作者: 尾沖泣栗
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1話ずつコピペすんのめっちゃ疲れるこれ

「俺の?」


急速に口の中から湿り気が消えていく感覚。それが、まず真っ先に変化を知らせた。


「思えば、始めから喉元に詰まるものを覚えていた。」


「おい、なんの話だ?」


出入り口を押さえられた。そんな考えが頬を伝う汗に洗われる。


「始め、妾達が編成された理由を貴公は亜人差別だと口にしたな。」


「ッ、あぁ……そんなことを言ったかもな。」


ハメられた、跳ねる心臓が突きつけるのはその事実。ローディアスにチヨコがついていったのも、シディとヘカーテを散策に向かわせたのも、ここに残り皆の帰りを待つことにしたのも、その多すぎる手のひらの上だった。


「そして裏付けのような理不尽な金利、粗暴な扱い。確かに疑えという方が無理のある弁であった。」


ましてや、シディやローディアスではなくヒバナとは。


「しかし、亜人差別はほとんどの国において既に形骸化されている。知らない話ではないだろう?」


「それは……そうだけどよ。形骸化したからって無くなったわけじゃねぇだろ?事実、ヘカーテやチヨコは経験があるって言ったじゃねぇか。」


「あぁ、そうであろうな。《《一般的な身体に特徴を持つ亜人種の経験ならば頷ける》》。」


薄紫の瞳が冷徹に差し向けられる。


「だが、天使とはあくまで生き過ぎた進行形態。貴公のその姿形を見て、一体誰が亜人種だとわかろうか?ましてや無体寄生種。出自さえ明かさなければ、人間種と言葉の通り差異はない。」


「……。」


完全な詰み。ここまでくれば、あとはヒバナがどれほど知らないかに賭けるしかない。最も、鉄火事場でカードを仕掛けた以上勝算を見込んでいるのは確かだ。


「ところで、フレスタットでの賭博場では随分と舌を回していたな。」


「あぁ、意外な才能ってやつかね?」


「その賭博場の中には強さによって順位がついていたらしいな。そこのNo.2は亜人種の姉妹、それもそのランク付けは人気にも直結しているそうだな。」


「……。」


「加えて、賭博場でローディアスはその身分に見合わぬ賭け金を疑われたそうだが、ヘカーテが一芝居を打ったことで状況を打開したと聞いた。なんでもその芝居では、ヘカーテは自らの亜人種という身分を明かし、あろうことか人間を仕えてると口にしたそうだ。結果は存じておろう。見事賭博への参加に成功した。フレスタットではの差別意識はもはや無に等しいことの証明になる。」


だが、と一つ挟まれる。


「聖村ベイカニック、そこに出自を持つものは亜人差別に過敏らしい。加えて、天使を自称するほとんどの人物はソコに出自を持つとのことだ。ルーシフェル、貴公の出自をまだ聞いていなかったな。」


「……はは、無体寄生種ってのは条件こそ難しいけど乗っ取っちまいば記憶管理もお手の物。確かにこの体はベイカニック出身だったぜ。」


交わされる問答のたびに、身ぐるみを一枚ずつ剥がれていく感覚。


「では、亜人差別に関する発言は体につられたものだということか?」


「まぁそうなるな。」


どうにか逃げ切れている。しかし、逃げている時点で詰みは確実に道を狭める。加えて、逃げた先の道で矛盾が生まれることはないかを並行して処理しなければならない。なんという苦行か。


「せっかくの話ついでだ、もう少し話をさせて貰うぞ。」


一体、この鬼に手加減など可能なのか。迫り来る重圧に肺が押しつぶされる。


「フレスタットの本隊に存在を認められぬとも、妾達に与えられた許可書は本物であった。妾はココにタネがあると睨んでいる。どうだ?」


「どうだって言われてもなぁ……わからねぇしか言えねぇぞ。」


「《《知らない》》と言われなかっただけ御の字だ。」


同様は顔に出さない。かわりに、無意識に言葉を綴ることを今一度強く禁じる。


「任命式まで行い発行されたどのような場所でも立ち入り可能な紙切れ、しかしそれは反面として暴利も携える。全く目的が見えてこないな。魔王討伐の為の偵察という大規模な責務を与えるにも、妾達は得体のしれぬ寄せ集め。」


「改めて聞くととんでもねぇ状態だな俺たち。」


「それが案外そうでもない。」


一つ立てられた指が示すのは次の言葉。


「この話をややこしくしているのは暴利だけだ。」


「暴利ねぇ。」


「暴利さえなければ、妾達は得体こそ知れぬが腕利きのネクロマンサーや諜報に長けた天使、そして魔王に最も近しい者さえいる。ローディアスのことを知ってか知らぬかは分からぬが、少なくとも戦事に不向きな者は居ない。」


風向きは変わらず、それどころか勢いを増す。


「であれば、暴利とは何のためにあるのか。貴公はどう考える、ルーシフェル。」


「あー……、戦争の為の資金稼ぎか?」


「であればより多くの民に課税重税を敷いるだろう。どうした?らしくもない発言だな。」


口を開くことは得策ではない。しかし、その事をヒバナは踏んでいるからこそ、このように確信に迫りながら、明確に踏み込まない。あくまで会話という体裁を保ち続けることで、不条理にこちらを責め立ててくる。畜生、そのキャラでこの話術かよ!


「妾が考えるに、この暴利は本来支払われない前提で設けられたものだ。」


「じゃあ、なんだっていうんだ?」


「首輪だ。」


「……。」


「突如国からという重大な責務を背負わされ、そこに暴利まで付け加えられた。混乱する一方は途方に暮れ、支払えなければ無法者として捕らえられる。そこに突如暴利を肩代わりする者が現れる。そして、その者は魔王討伐を掲げ積極的に支援をする。妾達は助けられた恩義か、或は暴利を気にしてか、どちらにせよその者に下るだろう。」


変わらず出入り口はふさがれたまま。


「そして、それを加速させるのが亜人差別という発言。亜人差別を受けた経験を持つものに、誰かが今一度強く押し付ける事で、差別意識を持たぬその者と国を対比させ強い忠誠心を誓わせる。」


変わらす逃げ道は絶たれたまま。


「亜人差別のないフレスタットで態々亜人差別という言葉を発した疑念、契約に押された暴利、この2つの違和感を取り除けるのはこの答えしかない。」


「驚きだな。俺はそんな仕組みの片棒を担がされてたわけだ。」


「……残念だ、ルーシフェル。」


扉からようやっと背が離された。


「フレスタット王家次期国王マークウィンの実兄、ヘンドリクス。」


「ッ!?」


「妾達の任命式を執り行ったのはヘンドリクスであったな。次期国王のマークウィンは魔王討伐の遊撃兵とした既に出国しており、現国王のハギア王は不調で控えていた。」


威圧的に握り直された拳が再び軽く開かれる。


「偽造も効かぬ国文書。発行をできるのはもはや王家の人間のみ。そして、その数多くが魔王討伐へ注力している。謀を企めるのは、魔王誕生によって次期国王の座を奪われたヘンドリクスなのではないか?」


「……オーケイ。聞かせてくれ、俺をどう思っている?」


「そこから先は、ちょっと待って貰えるかな。」


は?そんな疑問を漏らすよりはやく、紅色の拳が肩越しに背後を貫く。


「何者だ?」


「それ、普通殴ってから聞く?ほんっと、規格外(イレギュラー)だなぁ。君は。」


一体、どれほどの力で胴体を殴り飛ばされればそうなるのか。ペンキをぶちまけたように黒い胴体が壁に飛び散り、思い思いの方向性に伸びた手足を付随させながら黒は呆れたように息をつく。


「お前ッ、何しに来た!?」


「君を助けにさ、マイエンジェル。」


壁から引きがれた黒はまばたきの間に人間の形を取り戻して、ヘラヘラと薄っぺらい笑みを浮かべる。


「ちょ、マジで君に殴られるのだけは《《良くないんだよね》》。」


「は?」


首の裏を掴まれた猫のように振り回され、紅色の拳と挟まれる。今度はどうも寸前で止まったが。


「ッハァ!」


「手を離せ。名を名乗れ。」


「君が殴らなきゃ名乗ってたっての。全く、脚本家殺し(シリアスキラー)め。」


そういうと、飄々とし爽やかに、矮小な人間とは一線を画す謎の黒影は鮮やかに名前を口にした。


「始めまして、楽園パライソ修羅シュラ。僕は研究会所属の伝達者メッセンジャー這い寄る混沌メルト・イントゥ・カオス、ナイアルラトホテップ。どうか以後お見知りおきを。」


やけに仰々しいお辞儀には、得体のしれぬ品性が渦を巻いていた。


「気色の悪いナレーションだな。」


「おっと、ソリが合わなかったかな?」


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