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ブレイブマン・イレギュラーズ  作者: 尾沖泣栗
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猿でもわかれ!

僕は悪くない

僕がストック……。」


「ローディアスっち……。」


語られたない様子を出自とするには、余りにも身に覚えがなさすぎた。


「……まぁ、誰だって生まれた時の記憶があるわけじゃないか。」


「えぇ!?すごいメンタリティ。」


ぶっちゃけたところ、出自についてはどうでもよいというのが考えであった。存在者などいう肩書を背負っているのだから、もっと碌でもない出自かとも思っていたいくらいだ。


「それより、目下第一は元存在者の襲撃の可能性かな。」


「観測者は手を出さないと断言しておりましたわ。それにしても、ザレン、ベイカニック、リーリアスで元存在者が3人いるのは確実。……考えたくはありませんが、その全員が観測者級の不条理さを所持している可能性が高いですわね。」


話にきいただけでもかなりの不条理さ。なにせ、今息をできているのは観測者とやらの気まぐれだと言うのだから。


「わからないことについては考えても仕方がないであります。是としては、もう一つの方に着目するべきだと考えるであります。」


「もう一つの方?」


死霊術師の疑念を受けて、蝋人形は語り始める。


「ローディアスと魔王についてであります。」


「……。」


「ローディアスはストックであるという話でありましたが、少なくとも過去に出現した元存在者とは異なり、この時代に現れた真の存在者であることにかわりはないであります。そして、魔王も存在者を自称しているでありますが予定調和説の観点からそれも間違いないと考えられるでありますよね?そうなると、この世界にはローディアスと魔王の2名しか存在者がいないということになるであります。」


「その通りですけど……2人しかいないのって何か問題あるんですか?」


「はい。ローディアスは魔王と同じ肉体構造をしている可能性が非常に高いという点であります。」


その語りは容易く恐怖へ結びつく。


「ローディアスは一度蘇生したと聞いたであります。となれば、当然魔王も死なないのではと仮説を立てることができるであります。加えて、その事が知れればローディアスはあらゆる研究の対象になるのではないでありますか?」


「まぁ、私がチクればコロリとそうなるでしょう。」


「か、カッコつけたた啖呵切ってる場合じゃなかった。」


観測者に習ってかジェネリアが口を紡いでくれているから生きている。生きていくとはこんなに難しいことだったのか、なんて実感したくもない感情に見舞われてしまう。


「ほんとうにありがとうございます。並びに、ご迷惑おかけします……。」


「あら、恩返しに迷惑もなにもありませんわ。」


「人格者ってこういう人のこと指すんだろうな〜。」


ギリギリで踏みとどまることは出来たそうだが、そこから後ろに引いていくにはさらにいくつもの疑問が残る。


「それで結局、俺たちの所在ってどーなってんだ?フレスタットかレアルタリアか。」


「本隊の話が本当であるならば、妾達の編成を知らないことになる。小規模とは言え、王都で任命式を行ったのだ。ありえないと思うが?」


「そこが下名達としても悩みのタネでございますね〜。」


顎を撫でるついでに不老者は頭をひねる。


「ローディアス様達の通行証明書を拝見させていただきましたがぁ、間違いなくフレスタット公式の証明書でございましたぁ。となると少なくとも都の兵であることは変わりないのですがぁ……レアルタリアの兵として編成する申請を出したところ、特段支障なく編成することができました〜。」


「普通ならもっと面倒な手続きがあるはずだよな?少なくとも、投獄された時点でお知らせは行くだろうしよ。」


「フレスタット公式ではあるが、端役ということではないのか?」


「あれ?でもたしか、本隊の成果が期待できないから編成されたみたいな話じゃなかったでしたっけ?」


「本隊はレアルタリアにて成果を上げているであります。そのようなことはないのでは?」


「う〜ん、そんなんだったような、そうじゃなかったような……やば、よく覚えてないかも。」


料理が平らげられ皿が空けば、かわりとばかりに疑問が装われていく。


「一先ず、出来ることからしていきましょう。」


そんな疑問を全て収めるように、ジェネリアは手を打ち鳴らす。


「出来ることって?」


「出来ることというよりは、やらなければならないことですわ。」


向けられた瞳はこちらをとらえていた。


「呪物をむき出しでは街中を歩くことは出来ません。まずは、ホルダーを入手しますわ。」


「ホルダー?」


「ホルダーっていうのは、呪物に限らず刻印式や方陣式の魔術が暴走しないように付ける安全装置のことです。うっかりした拍子で触って火が出る、とかを回避するためですね。」


「レアルタリアは加工全般の技術が発達している国でありますから、きっと格好の良いものを見つけられると思いますよぉ。」


そんな話に腰を上げながら、手つかずの疑問は皿の上で冷えていった。


「すごい活気ですね。」


「ね、めっちゃヤバい!」


本来であれば検問を超えてすぐに足を踏み入れることが出来た場所へ、随分と遠回りをしてしまった。


「レアルタリア祭が近いですから、リーリアス等からの商人なども多く来ているのでしょう〜。レアルタリア南域は、リーリアスとの貿易港があって、この時期は経済がとても豊かになるんですよぉ。」


「戦時下だからこそ、鬱屈した気持ちを晴らしたいのでしょう。といっても、現状ギルザリアからの目立った仕掛けは魔物だけ。とくに、市民には影響もないでしょうし戦時下という感覚自体が薄いのもあるのでしょうが。」


フレスタットとは違った古風な作り。しかしそこには古典的という価値がたしかに込められていた。大きな街道を挟むように設けられたいくつもの支店には、見たことのない食べ物や豪勢な装飾、そのなかでも一際目を引くのは定期的に見かける店先に掛けられたペンダント。


「あの、店先にかけられてる赤色のペンダントってなんなんですか?レアルタリアの国旗とも違うみたいですけど。」


「ん?あぁ、そうでございますよねぇ。レアルタリア出身でなければさほど有名ではありませんよね〜。」


「ちょうどいいのではないのと?目的地まで時間もありますし、カージェス話してさしあげなさい。」


【猿でもわかれ!レアルタリア伝説〜高貴なる吸血鬼の女王ワードズ・フェイル・クイーン!!!!〜】


『その昔レアルタリアには一人の高貴なる吸血鬼の女王が居りました。女王はその尊大なる心意気によって、非常に遺憾ながら下等な人間に扮して(その高貴なるご尊顔から扮しているとはとても考えられなかったが、女王の完璧を超えた策略によって)生活をしておられました。当時のレアルタリアは、脆弱な人間が傲慢にも高貴なる吸血鬼の女王を差し置いて政治を執り行っていた為に、風が吹かなくともそのうち崩壊していたのは誰の目にもありありと映っていた程には悲惨な、いえ、悲惨ですら収まらない状況でした。そんな折、ベイカニックとかいうふざけた国を立ち上げたイカれた選民思想のキチガイ集団が、愚かにもあぁ愚かにも!レアルタリアに矛を向けたのです。そして同じく愚鈍で稚拙なミソしか持たない人間は無様にも哀れふためきみるみるうちにその数を減らしていきました。ほんとうに愚かですよね。しかし、そんなとき!かの強大にして堅牢にして美麗な秀麗な高貴な崇高な鉄血にして熱血にして(中略)……だったのです!こうして、そのどのような海ほど深い慈愛を抱えた高貴なる吸血鬼の女王は、その城を下等な人間に与え、高貴なる吸血鬼の女王はその後、人間如きでは思いつくことさえ不可能な桃源郷を具現化した孤城に玉座を据え、未来永劫お飽きになられるその時まではレアルタリアという国を計り知れない慈愛によって見守っているのです。』


著者:不明『高貴なる吸血鬼の女王の偉業』より一部抜粋


「と、いう次第でございましてぇ。あれラはその女王の家紋なのでございますよ〜。最も、女王について触れている史資料はこれだけですので、その実態は定かではありませんが〜。」


「なんというか……すごい思想がつよい。」


「昔の歴史書なんてそんなもんですよぉ。」


「にしたって、私の読んだ書籍のなかでこれほど思想がありありと現れている本は他にありませんですけれどね。」

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