ラーム教1-2
アーク国の街は深夜でも活気があった。ろうそくに火を灯したランタンが至る所にあり眩しかった。酒場や賭博場からは大声が聞こえ、千鳥足の人や路地裏で寝ている人。女を口説く人。占いをする人。その雰囲気には無性に腹が立った。自分の国、自分の町では見たこともない光景に苛立つ。動物を狩り、肉や毛皮を剥ぎ、保存のために血抜きをし、明日を生きるのに必死なのに。この街の人々は"今"を謳歌している。青年は早く自国へ戻りたい反面、この輝かしい生活に慣れれば明日を気にせず刺激的な毎日を過ごせるのに…と葛藤する。
鮮やかで艶やかな街を歩いているとすれ違いざまにぶつかってしまった。相手は自分と同世代ほどの男で他に二人引き連れていた。彼等は骨が折れただのといちゃもんを付けてきたが青年はそれを無視し再び歩き始める。気を悪くしたのか三人は青年を取り囲んだ。治療代として金を寄越せば許してやるとへらへら笑いながら脅す。青年は彼等に、渡す程の金は持ち合わせていないと話した。そのまま路地裏へと消えていく。
青年が目を覚ましたのは宿の部屋ではなく街外れにある井戸の前だった。気温は過ごしやすい体感だったが空は曇り空で今にも雨が振り出しそうな風が吹いている。青年の服は血で汚れていた。両手のひらには血と切傷、手の甲や腕には打撲痕があった。
あぁ。またやってしまった。
懐に手を伸ばし、ある物を確認する。
取り出したのは金の入った小袋と血の付いた小刀。確かめた後また懐にしまい、天を仰いで一つ息を吐く。




