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スピリット  作者: 猿飛
信念
97/102

ラーム教1-1

ノア国は今でこそ広大な領地を誇るが、かつてこの地はちょうど半分に分かれていた。アーク国とラーム国だ。南北にこの地を分かつ二カ国は友好関係にあったのだがある事件を境に状況は真逆となる。


その国土の広さ故に風土は異なる。北のラーム国は平均気温が低く作物が育ちにくい。山が多い地形の為、標高差によっても資源に違いがある。食肉を好み、天然水の純度の高さから酒造が盛んになる。狩猟民族が多いので熊や鹿の肉、骨、毛皮の売買で生計を立てる者が多かった。人口は少なく、各々が自給自足をして暮らすのが一般的である。

南のアーク国は平原で、標高の高い山はほぼ無い。農業が発展し安定した穀物、野菜、根菜を得られた。畜産も行い豚や牛の食肉、鶏の卵なども生産される。畑や牧場を持つので定住し、それに伴う街単位での発展があった。


ある事件とはこうだ。

ラーム国の青年が皮革を売るために国境を越えアーク国のとある街で露店を開いた。その日は売れ行きが良く予想を超えた収入を得られた。夜遅くなったのと懐に余裕が出来たのでその街の宿に泊まることにした。その宿は少々値が張ったが自分へのご褒美だとし、彼も浮かれた気分だった。大きめのふんわりしたベッドで横になっているとどこからか話し声が聞こえてきた。よく耳を澄ませるとその話し声は隣の部屋からであった。そのままだと声が籠もってしか聞こえなかったので、部屋にあったコップを使って壁に耳を付けた。あまり良くはないと思いながらも内容が気になってしまった。そして断片ではあるが、その内容に愕然とする。

ラーム国の財政破綻が噂されていたのだ。近年異常気象などによって生態系の崩壊が始まり、方方で飢饉が起きていた。未曾有の危機にラーム国はアーク国へ援助を求めた。快諾したのは良いが条件が厳しかった。国境変更ならびに実質的植民地化、一切の統治をアーク国が担うというらしい。実のところ、アーク国も窮地を迎えていてラーム国同様にデフレが進んでいた。協力を望んだラーム国は絶望する。何がアーク国をそうさせてしまったのか。あくまで噂の域を出ないが近々会合が行われ正式に方針が決まるという。

青年は恐ろしく不安に見舞われた。何も知らない国民はいつも通りの生活をしていながら知らぬ間に母国を失うかも知れない。そんな事があってたまるか。


その話を聞いてすっかり目が覚めてしまった青年は夜更けの街へ繰り出す。

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