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神の吹かせる風  作者: わた
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伝える真実

ワープは巫女衣装に身を包み、きっちりと帯を結ぶ。いつも巫女衣装を着るときは身が引き締まるが、今日は特別に気合いを入れて身支度をした。

朝早く、自らも完璧にドレスを着こなし、髪の先1本に至るまで綺麗に整えられたルルがやって来て、ワープの着替えを手伝ってくれていた。髪をとかし、かつてリフィルがくれた紅い石の髪飾りでふたつに結わいてくれる。


「ワープさんの髪は、お日さまの光のような色をしていますね」

「そ、そうですか?」

「とてもきれいです」

「……ありがとうございます」


ワープは照れて笑い、鏡に写るルルを見た。一生懸命髪の毛を結んでくれている。くるりとカールした栗色の髪はリボンでふたつに結ばれ、身を包むふりふりドレスと合わさって、彼女は本当に、可愛らしいお人形のようだった。


「ルルさんの髪の毛も素敵ですよ」


心からそう言えば、ルルははにかむように唇をむにむにさせる。


「嬉しいです。毎朝、校長先生が私の髪の毛を結んでくださるのです」


ワープは微笑み、


「校長先生は、ルルさんのおじいさまなんですね」


ルルは一瞬目を大きく見開いて、それからまたはにかんで唇を震えさせた。




神殿へ行き、リフィルとその騎士たちに真実を伝えるために。ワープは共に歩んでくれる自らの騎士たちのもとへ向かう。


セイルたちは、温室で待ってくれている。そこへ足を向ける前に、ワープは時計塔へと向かっていた。


初めて彼と出会った場所。きっと、ここへワープが来ることを、彼もわかっているはずだから。


吹き抜けの天井へと続く、果てしない螺旋階段。

カツン、カツン、と足音が響き渡る。それと同時に、ワープの帯に結びつけられた鈴、風の心音が、透き通るような音を鳴らす。


ワープの鈴の音と、ゆっくりと降りてくる足音が、同時に止まった。


ラインの姿は朝日に縁取られ、とても気高く見えた。ワープはまっすぐに、深い黒の瞳を見つめた。ラインもまっすぐに、ワープの紅い瞳を見つめていた。


「リフィル様に、真実を伝えに行きます。一緒に、来てくださいますか?」

「……ああ。共に行こう」


静かな返事が、今はとてもとても嬉しい。

ワープは微笑み、深く、刻み込むように頷いた。




温室で、ワープの到着を待ちながら花の手入れをしていたアナが、うーんと呻く。


「どうした?」

「花たちの元気がないんだ。水の精霊が落ち着かないせいだと思う」


温室に流れる水路は水の精霊の加護で循環しているのだが、その調子がおかしい。花が元気に、美しく育つのに必要な、綺麗な水になってくれないのだ、とアナは言う。

ケットとセイルは顔を見合わせ、花ばなを見渡す。いつも通り咲き誇っているように見えるが、アナから見たらまるで違うらしい。


「セイルの通信魔法がうまくはたらかなかったことも、ちょっと気になってたんだ。もしかしたら、精霊のバランス自体が崩れているのかもしれない」

「確かに、最近の精霊の様子には違和感を感じていた。……しかし、この世界は精霊の力がなければまるで機能しなくなるぞ」

「うん。それも含めて、神殿で話し合わなきゃならないことがたくさんあるね」


アナは落ち着いた笑顔を浮かべ、花たちにじょうろを傾ける。


ケットは顔をしかめ、ガラスの天井越しに空を見上げた。真白き太陽が、不安を煽るほどに大きく空に浮かんでいる。


「俺には、あの太陽が災いの象徴に見えて仕方がないんだ」

「いつもは明るく僕らを照らして、花を元気にしてくれる存在なのにね……」


アナはため息をついて、もう一度花たちに水を振り撒いた。


「ところでセイル、足はもう大丈夫なの?君はお留守番しててもいいんだよ」


ころっと表情を変えて悪戯っぽく言うアナに、セイルはむっと顔をしかめる。


「バカ言え。こんなときに一緒に行かないで何が騎士だ」

「ほんと、そうだよねえ。……ふふ、いらしたみたいだよ、僕らの巫女様が」


きっちりと巫女衣装に身を包み、温室の入り口に姿を現したワープと、彼女に連れ立つライン。示しあわせたように、温室で彼女たちを待っていた三人も立ち上がる。


ワープは順に騎士候補生たちの顔を見て、はにかむように少し笑い、それから表情を引き締めた。


「これから、リフィル様のもとへ行きます。リフィル様を傷つけ、リフィル様の騎士たちを惑わせる真実を伝えなければなりません。それが、私の決めた道です。……私はリフィル様を信じ、その騎士たちを信じています。そして、私の騎士である、皆さんのことも」


ワープはぐっと唇を噛みしめ、深々と頭を下げた。


「お願いします。私に力をください。私がすべてを話し終えるまで、側にいてほしいのです」

「…………」


少しの沈黙の後。


「そんなこと言われなくても、いつまでだって側にいる」


セイルがぽんとワープの頭に手を置く。


「心配するな。俺たちがついてる」


ワープは目を丸くしてセイルを見て、それから花が咲くように微笑んだ。


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