行動3
しばらくしてワープたちの元に戻って来たリフィルたちは、ある人物を連れていた。全身黒づくめの、ひどく無愛想な……
「ラインさま!?」
ワープは驚いて、ラインとリフィルを交互に見やった。なぜリフィルがラインを連れているのか、訳が掴めない。
セイルはラインの姿を認めると、明らかに不機嫌になった。
「なんであいつがいるんだよ」
ケットはそれほど顔色は変えなかったが、快くは思っていないようだった。なんだか自分のせいで彼らの仲を悪くしてしまったようで、ワープは申し訳ない気持ちになる。
唯一ワープの気を和らげてくれたのは、楽しそうに微笑んだままのアナだった。
「ラインも一緒に行くのかな?楽しくなりそうだね、ワープ」
「……は、はいっ。そうですね!!」
アナは安心させるようにワープに微笑みかけ、リフィルたちに視線を戻した。
リフィルはどこかいたずらっぽい表情をしてワープたちの前に立ち止まり、仏頂面のラインを押しやった。
「この子も同行させるけど、いいかしら?」
ラインはひどく不本意らしく、とことん嫌そうな顔をしていたが、祈りの巫女に口答えする気もないらしい。もしかしたら、祈りの巫女としてではなく、単にリフィルのような女性が苦手だからかもしれない。ただワープたちの返事を待っている。
「わ、私はかまいませんけれど。あの、リフィルさまはラインさまとお知り合いなのですか?」
ワープが驚きを隠せずに問うと、リフィルは意地悪い笑みを浮かべる。
「あなたが思うより、深い仲よ」
「え、あの……?」
(ど、どういう意味でしょう!?)
困惑するワープを尻目に、リフィルはセイルたちに向かって、
「あなたたちは、この子を連れて行っても文句ないわね?」
セイルは不服そうに鼻をならす。
「おれは嬉しくないけど。ワープが良いなら文句は言えない」
敬語すら使わないセイルを、リフィルはなぜか嬉しそうに見つめる。
「あなた、正直ねえ」
それからケットとアナに目を移し、
「あなたたちは?」
「俺もセイルと同意見です。我々の従うべきは、ワープですから」
ケットはあくまで冷静に言ったが、言葉の節々にまだラインを信頼していない響きが浮かんでいた。
リフィルはおかしそうにケットに笑いかける。駄々っ子をたしなめるようなその表情に、ケットは訝しげな顔をしたが、リフィルはかまわずアナに目を移す。
「あなたはどう?」
アナはにっこりした。
「ふたりと同意見ですよ。でも、少し僕個人の意見を言うと、ラインと行動するのは楽しそうです」
リフィルも嬉しそうに顔をほころばせる。
そんなことは意にも介さないように、ラインはつまらなそうに明後日の方向を向いている。リフィルは仕方なさそうに息をつくと、ツルハとリーンハルトに命じる。
「そろそろ行きましょう。とにかく細心の注意を払うのよ」
ツルハは丁重に、リーンハルトはどこか緩んだ動きで敬礼する。 ワープは緊張が込み上げ、ぶるっと身震いする。もともと人前に出るのは苦手な性質なのだ。そんなワープを、リフィルは穏やかに見つめる。
「ワープ、不安なの?」
「いえ、あの……」
ワープは少し迷った後、結局諦めて素直に認めた。
「はい……少し、怖いです」
スラム街の人々は、自分の施しを喜んでくれるだろうか。巫女という身分に守られている自分の独りよがりの行動を、温かく受け止めてくれるだろうか。
そんな思いを悟ったように頷き、リフィルはワープの頬に触れた。
「大丈夫。あたしが居るわ」




