↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Grimoire of Gaia/End of Memory  作者: wisemanjr4


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/18

Grimoire 15〈数〉

帝国の生産計画が共和国に伝わったのは、カルム渓谷の戦いから二週間後だった。


ガルシア大佐は報告書を会議机に置いた。

集まっていたのはハイデマンとリーゼ、それに情報部の将校が一人。


「SV-02の月産は現在二十機前後。来月から四十になる。半年後には累計で二百を超える見込みだ」


「こちらは」


ハイデマンが短く訊いた。


「ISW-02の月産は六機だ」


誰も口を開かなかった。窓の外では試験機が一機、ゆっくり周回していた。


「機体は増やせます」とリーゼが言った。「ただ乗る人間が増えません」

「搭乗員の養成には八か月かかります」


「戦車兵を転換させても同じか」


「ランナーと違って、ISW-02は癖を消した分だけ操縦が難しくなっています」

「乱数表の運用にも慣れが要ります」


大佐は腕を組んだ。この一年で白髪が増えていた。


「帝国は数で押してくる。我々が何をしても飲み込めるだけの数を揃えるつもりだろう」

「読めない相手には読む必要のない戦い方を押しつける。理屈としては正しい」


「正しいから厄介です」


リーゼは図面を一枚広げた。ISW-02の脚部断面だった。


「簡易型を作ります。スラストダンパーの重りを八本から四本に減らし」

「制御系も組み合わせを絞ります。性能は七割ほど」

「ただ生産費は半分以下になり、養成期間も三か月に縮まります」


「七割の機体に乗せられる兵は七割の確率で死ぬ」


ハイデマンの声は低かった。


「そうなります」


リーゼは目を逸らさなかった。


「ですが月産六機のまま精鋭だけを出し続ければ、いずれ全員が消耗します」

「ベック少尉のような若い人から先に」


ハイデマンは何か言いかけて口を閉じた。大佐が静かに割って入った。


「簡易型の案は預かる。結論は急がん。もう一件ある」


大佐は情報部の将校に目を向けた。将校は鞄から小さな箱を取り出し、机の中央に置いた。


「カルム渓谷で撃破したSV-02の残骸から回収した部品です。油圧系の制御弁になります」


ハイデマンが箱を引き寄せて蓋を開けた。手のひらほどの金属の塊が布に包まれている。

彼は指で表面をなぞり、側面の刻印の前で手を止めた。


「見てもらえますか」と将校が言った。


「……製造番号の体系が同じだ」


ハイデマンは刻印に顔を近づけた。


「頭の二文字と、ロットを示す桁の並び。これはクリングスの社内規格だ。外部には出していない」


「型式は帝国のものでした」


「型式は違う。だが番号の振り方は私の知っている振り方だ」


リーゼは息を詰めて二人を見ていた。クリングス重工は共和国の側に立ってPWを共同開発している。

その社内規格が、帝国の機体の中にある。


「偶然の可能性は」と大佐が訊いた。


「ないとは言えません。規格が漏れただけかもしれん」


ハイデマンは弁を布に戻した。


「ただ四年前、私たちがまだ民間警備の枠にいた頃に」

「クリングスの技術者が何人か別の発注先へ移っています。行き先は聞いていません」


大佐は長いあいだ黙っていた。


「確認が取れるまで口外するな。この部屋の四人だけだ」


「承知しました」


会議が終わり大佐と将校が出ていったあと、ハイデマンは箱を持って立ち上がった。

リーゼが何か言う前に彼は壁際の電話機の前に立っていた。


受話器を取って番号を回し、呼び出し音を数えた。


三回目で、向こうの誰かが受話器を上げる音がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。