第4節
「第1段階 甲板の掃討を終了。 これより第2段階の地下掃討に入る」
アバランチ内に響き渡ったのは、先の戦闘から息を整えた花御の声だった。
静かな静寂も束の間、甲板に設置された重い鉄のハッチが開く。
キイ、と、静寂を破り耳に響く不快な音。そこから這い出たのは、新品のコートを羽織ったグラードの副指揮官だった。
ーー副隊長格。
名誉ある階級とは裏腹には、先ほどまで部下たちに無理な命令をしていた時の冷酷な権威は完全に消えていた。
自分が部下たちを死地に追いやっていながら、いざ敵を目の前にするや否や、震えた手で拳銃を握りしめた。
「待ってくれ! おれはただの現場の責任者で…」
その震える声は、他人をおとりにして真っ先に逃げようとする卑劣な人間を体現したようだった。
「ドゴッ」
必死に命乞いをする男の後頭部に、鉄の塊が容赦なく激突する。しかし、卑劣な人間ほど長く生き残るという、人間界のゆがみ切った摂理も、またしても男は体現した。
「クククッ… やっぱり日本の警察は無能だな…」
血の流れる顔面から、微笑が零れ落ちる。
その瞬間、花御の目の瞳孔は捕食者の目へと変貌した。
「スパァン!」
花御の撃った弾は、男の膝へと正確に着弾した。
「…うるさいねえ この鬼畜野郎が!」
花御は、血に染まった男の顔面を幾度となく蹴る。
男の喉元を猛獣のような握力で掴み、
「貴様みたいなゲス野郎はな、この死にザマが一番だろう!」
そう言い放ち、2発目の弾丸が花御の拳銃から火を噴く。
その発砲音は、男の聞いた最後の音だった。




