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White Dragon  作者: たい焼きがおいしい 


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3/6

第3節

3 急襲


少しばかりの沈黙を破った猛吹雪。それはヒグマの咆哮のようだった。

その純白の地獄の中を、音もなく勇猛に突き破る鉄塊があった  ーー北方県警の誇る最新車輌、通称アバランチだった。

その鉄塊は、重い雪さえも静かに、飲み込んでいく。 熱源を外部に捕捉されない狂気の鉄塊は、猛吹雪の中では完全な死神と化していた。


暖房が効いている車内のはずだが、雰囲気は冷蔵庫の中のように冷え切っていた。

「ーーアルファを捕捉。」

再び静かな静寂を破ったのは、あの低く平坦な声だった。

モニターには、岸に接岸していた沈みかけの工作船とそこから出てくる工作員が映る。

「中国の軍事衛星ですが… 致し方ないですよね? 隊長…」

大野原は、無言で小さくうなずく。そして、大野原は静かに席を立つ。

「工作船の無力化はすでに梨田が完了した。梨田は帰投し、花御・小松・水野は残る隊長以外の工作員を排除せよ」

それを合図に、アバランチ後方の超小型スノーモービルを、3人は起動させ始めた。


「ドルルルルル!」

スノーモービルから出る音。機械的なホラ貝の突撃の賛歌が、3人の鼓膜を突き抜ける。

その瞬間、彼らの目が赤黒く光る。 小高い丘から純白の地獄を貫き、雪煙を激しく巻き上げ一気に駆け降りる。

先頭の花御は、大きな慣性を持つ車体から、ユキヒョウのように高く跳躍し抜け出した。

元・陸上自衛隊第1空挺団。「落花」と称されたほどの猛獣じみた身体能力と戦闘力が白の闇に爆発する。

空中でアサルトライフルを構え、着地の瞬間、自衛隊仕込みの緩衝姿勢で即座に立ち上がった。

その瞬間、船の先端からジャンプした工作員と目が合う。工作員は狂乱状態となり、古びた小銃の銃口を花御に向けるが、小銃のアイアンサイトにはその姿はなかった。

花御は間髪入れずに硬式球のような雪礫を目に速投し、工作員の目をくらませる。 

工作員は気づいて左腰のナイフを抜くが、気づいたときには景色がぼんやりし、意識はもうろうとしていた… 

花御は無駄のない動きで工作員を排除した。

すぐさま前方から2人目の工作員が突撃するが、花御は銃口を下に向けた。

突撃する工作員の視界には、至近距離まで間合いを詰めた薄ら笑いをする狂人が見えた。

(…!)

その瞬間、頭部に、ガツゥン!という鈍い破砕音が重く響き、その体は大地を赤く染めた。

普段は高山植物の本を笑顔で読む男の瞳は、獲物を逃がさない捕食者 ーー言うなれば戦闘マシーンのそれへと変色していた。


機械と化した花御の背後から、十字砲火のように、小松と水野が影のように突入した。

小松は、まさに重力という概念さえ嘲笑しているかのようだった。凍り付いた岩場、足元がすくわれる最悪と言わざるを得ないコンディション。

だが、アイススケートを楽しんでいるかのように自由自在のように動き回る。 この現代に忍者がいるのではと信じざるを得ないほどに。

元・警察庁警備局。日本の公安警察の中でも一握りの存在だった小松。日本で一番近接戦闘に精通していると言っても過言ではない。まさにCQCの申し子だった。

正面から工作員が銃を向ける。だが、小松は極限まで姿勢を低くし、その工作員の膝とすねをつかんだ。

その瞬間、工作員の左ひざは完全に無力化された。工作員は最後の抵抗として小銃の銃口を小松に向ける。

だが、小松は、コンマ数秒にも満たない早業でバレルを上に向けた。

気づけば、工作員の腹部には銃剣が刺さっていた。小松は、またも嘲笑を見せる。

小松は、上に向けた小銃から、右手で銃剣の柄を握り、左手で脱剣ボタンを押し、忍者のように銃剣を抜き取ったのだ。

わずか0.15秒。常人とは時の流れが違うのではと、誰もが疑うほどに。


逆サイドでは、過去の姿からは180度変わった水野の姿があった。

船の後方から静かに水野を狙う工作員。

しかし、水野は腰から拳銃を抜き、目の前の敵の膝に発砲した。

「うがっ…」

工作員は構えた銃を落とし、乾ききった硬い音が船内に響き渡る。

工作員は、羽が落ちた蝉のように崩れ落ちる。その顔は、目の焦点が合わなくなっていた。

すべてを悟った地蔵のように…

水野は、その工作員の脳幹に正確に、かつ容赦なく撃ちぬいた。


その工作員の仇を取ろうと、背後から男の影が近づく。その動きはまるで、獲物を執拗に追いかけるオオカミのように。

しかし、水野はその名の通り水のように体を軟化させ、男の急所を突く。穏やかな見た目からは真逆な、敵をしとめる海月のように…

「おっそいな…」

男の耳元でささやいたその言葉は、刻一刻と近づく死刑宣告だった。

なめらかに入り込んだ水野の触手のような手は、一瞬で槍のごとく鋭利な刃物と化した。

男の水月を容赦なく抉る。男は、なぜ自分の腹部が抉られたのか、わからないまま船の甲板へもたれかかった。

水野は冷ややかな目で男の腹部を一蹴し、再び冷酷な視線を小高い丘へと向けた。

3人は残る副隊長の捜索に向け、船の地下を探し始めた。

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