第十章 1話:【同期】―― 卑弥呼帰還、情報のホットリロード (留守を守った弟王との同期。帰還した知識の社会実装)
いつも応援ありがとうございます。他3作品、およびエッセイ・俳句への温かいご声援にも心より感謝いたします。
本作は、3世紀の邪馬台国と大陸をひとつの「巨大な回路図」と捉え、歴史の謎を現代のエンジニアリング視点で論理的に解き明かす、異色の知略サバイバル戦記です。
【本作の基本プロトコル】
亜那 阿知寝:大陸の数理を解析する天才アーキテクト。
与太彦:現場主義を貫く、泥臭くも凄腕のフィールドエンジニア。
卑弥呼:国の未来を演算し続ける「大和OS」の設計者。
神話やロマンの裏に隠された、古代の「技術者たち」の命懸けのデバッグ作業。
後半に向けて物語の演算速度(クロック周波数)はさらに加速します。彼らが辿り着く「究極の暗号」の結末を、どうぞ最後まで見届けてください!
第十章 第1話:【合】 ── 凱旋の座標、博多湾の再会
博多湾の水平線に、魏の巨大な使節船がその威容を現したとき、港はかつてない静寂に包まれていた。
数年前、阿知寝と与太彦がこの地を旅立ったとき、博多はまだ「拡張中の現場」に過ぎなかった。だが今、船上から二人の目に飛び込んできたのは、計算され尽くした角度で配置された接岸設備と、山並みに沿って等間隔に並ぶ烽火台の列である。
船が鈍い音を立てて接岸し、重いタラップが降りる。
最初に倭国の土を踏んだ阿知寝と与太彦を待っていたのは、数年もの間、この「大和」という名の巨大なシステムの運用を死守し続けてきた者たちであった。
「……よくぞ、戻られた。待っていたぞ」
出迎えたのは、卑弥呼の肉親であり、政務の実務を代行し続けた**弟王**であった。
その顔には、設計者である姉の不在を埋めるべく、現場のトラブルを処理し続けてきた者特有の、鋭い疲労と深い矜持が刻まれている。彼こそが、阿知寝たちが大陸で知見を得ている間、国内の物理的な「統治プログラム」をエラーなく回し続けた現場監督であった。
阿知寝が弟王の背後、宮殿へと続く回廊の暗がりに目をやると、そこに一瞬、静止画のような人影が揺れた。
それは、卑弥呼が日田に籠もっていることを隠し、対外的に「女王は健在である」というダミーデータを送り続けるために用意された影武者の卑弥呼であった。彼女は数年の間、周囲に悟られぬよう、動かぬ鏡のごとく座し続けることで、国の安定を維持し続けてきたのだ。
「弟王様。……長きにわたる保守、感謝の念に堪えませぬ。システムは、保たれておりますな」
阿知寝が深く頭を下げると、弟王は微かに唇を噛み、北東の方角――日田盆地を指し示した。
「ああ。貴公らが遺した『測量図』と『法』の雛形があったおかげで、何とか破綻は免れた。……だが、もう限界だ。姉上の脳が発する熱が、もはや人知で抑えきれぬ臨界点を迎えようとしている」
日田の方角には、不自然なまでに濃い乳白色の霧が渦巻き、大気が震えているように見えた。女王卑弥呼の膨大な演算処理は、もはや肉体というハードウェアの限界を超え、暴走を始めていた。
「……急ぎましょう。与太、馬を出せ! 我々が持ち帰ったパッチ(零の数理)をインストールするまで、女王様を死なせるわけにはいかぬ」
「へいっ! 旦那、いよいよ本丸の最終メンテナンスだ。弟王様、お迎え、痛み入りやすぜ!」
阿知寝と与太彦は、弟王から授かった、鍛え抜かれた二頭の馬に飛び乗った。
背後では、役目を終えた影武者の卑弥呼が、安堵と共に静かに御簾の奥へと姿を消していく。
二人のエンジニアは、砂煙を上げながら、女王が待つ日田の深層へと馬を走らせた。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。
本作『卑弥呼プラン』は、いよいよ7月10日をもちまして、全57話の幕を閉じることとなりました。天才アーキテクトたちの命懸けのデバッグ作業の結末を、どうぞ最後まで見届けていただけますと幸いです。
さて、本作のような「徹底したロジックと生存戦略」を描いた歴史ドラマがお好きな皆様へ、すでに全八章で完結しているこちらの作品をご案内いたします。
■ 完結済『泥田と田楽 桶狭間』(全八章)
絶望的な兵力差を覆すため、織田信長が放ったのは「音」と「情報の刺客」でした。
諸国を放浪し、京の知恵と堺の富をその脳髄に蓄積(データベース化)した男・秀吉と、「機能美」を追求する魔王・信長。
幼少期に共有した「泥の記憶」を基盤に、二人の天才が交わったとき、桶狭間の豪雨さえも、緻密な観測と情報網によって手繰り寄せた必然の勝機へと変貌します。
過酷な泥土を生き抜くための「野生の合理性」と、土地に根ざした「物流の理」。精神論や根性論を排し、全く新しい視点で信長と秀吉の戦いを再定義した、知略サバイバル戦記です。
合言葉は、「川の深さは?」「赤味噌の濃さよ」。
『卑弥呼プラン』の熱量のままに駆け抜けられる一気読みに最適な一作ですので、ぜひこちらもURLから戦場を覗いてみてください! https://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/3147505/




