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『卑弥呼プラン:邪馬台国の希望 3人の隠密スペシャリスト〜魏・呉・天竺から世界最強の文明をリバースエンジニアリングせよ〜』  作者: あっちゅ寝太郎


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第五章 1話:【解析】―― 構造解析のアルゴリズム (各地での技術・情報の収集。帝国の「ヒビ」の観測)

第五章:【せん】 ── 構造解析のアルゴリズム

第1話:洛陽の石が「帝国の線」を刻む

 魏の帝都・洛陽。その北宮へと続く大通りは、大陸の富と権威を象徴する巨石によって埋め尽くされていた。

 邪馬台国の女王・卑弥呼の行列は、色鮮やかな旗をなびかせ、魏の官吏たちの羨望と疑心の視線を浴びながら進む。だが、豪華な輿こしの中に、主の姿はなかった。

 「……石の継ぎ目は、帝国の歴史の年輪でげす」

 行列の最後尾、粗末な麻衣を纏い、顔に煤を塗った「端女」が一人。

 彼女こそが卑弥呼であった。彼女は跪き、道端に打ち捨てられた石材の破片を拾い上げるふりをして、指先を大橋の橋脚へと滑らせる。

(表面は滑らかだが、芯が死んでいる……)

 卑弥呼の指先は、阿知寝から授けられた「比重の計算」を感覚として体得していた。石の質、叩いた時の反響、そして積み上げられた石同士が描く「線」の歪み。

 一見、鉄壁に見える洛陽のインフラだが、その内部には「構造の腐敗」が確実に進行していた。石材の調達、工期の短縮、中抜きされた予算。それら全ての「エラー」が、橋脚の微細なひび割れとなって現れている。

「橋のヒビは帝国のヒビ。この帳簿のズレこそが、曹丕の首根っこを掴む『線』になりましょう」

 彼女は泥に塗れた手で、懐の木簡に鋭い爪跡を刻む。それは外交文書ではない。魏という巨大な演算装置システムを内側から崩壊させるための、脆弱性リスト(バグ・レポート)であった。

 その時、卑弥呼の背中に冷たい「視線」が突き刺さった。

 通りを馬で行く一人の男。鋭い眼光を放ち、何事も見逃すまいとするその男――司馬懿仲達しばいちゅうたつである。

 司馬懿は、女王の華やかな輿には目もくれなかった。むしろ、民衆の中に紛れ、地面の「石」を異常なまでの執着で観察している汚れた女中に、本能的な危惧を覚えた。

(あの女……何を見ている。ただの汚れではない。あの指先の動きは、計算者のそれだ)

 司馬懿の瞳と、卑弥呼の濁った瞳が、一瞬だけ交差する。

 卑弥呼は表情を変えず、ただ深々と頭を下げた。だが、彼女の脳内ではすでに、洛陽を貫く運河の流速、城壁の耐荷重、そして官僚制の腐敗速度が、一つの巨大な「数式」として組み上がっていた。

 帝国の中心で、彼女は「破壊」のための線を辿り続ける。

(曹丕。お主が誇るこの石の都、我ら邪馬台国の『知』をもって、砂上の楼閣に変えて差し上げよう)

 女王の行列が宮殿の奥へと消えていく中、洛陽の石畳には、卑弥呼が刻んだ不可視の「デバッグ・コード」が静かに、だが確実に刻まれていた。

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