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『卑弥呼プラン:邪馬台国の希望 3人の隠密スペシャリスト〜魏・呉・天竺から世界最強の文明をリバースエンジニアリングせよ〜』  作者: あっちゅ寝太郎


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2話【接触】―― 狗邪韓国「文書の壁」をハックせよ (朝鮮半島への上陸と、魏の官僚システムへの介入)

「第三章 第2話:過所の生成」

阿知寝が魏の官僚システムの脆弱性を突き、地方役人の権限を「オーバーライド(強制上書き)」して、洛陽への通行証を生成させる緊迫のハッキングシーンです。

第三章 第2話:過所の生成

 狗邪令・張参ちょうさんの執務室は、不自然なほどの静寂に包まれていた。

 卓の上に広げられた数多の木簡。それらは魏の秩序を維持するための「法」の断片であり、同時に、張参が倭国使節団を足止めするための「言い訳のログ」でもあった。

「……阿知寝と言ったか。身の程を知れ。過所かしょとは、帯方郡太守・劉夏りゅうか様の印があって初めて成るもの。一介の技術者が口を挟める領域ではない」

 張参は鼻で笑い、高価な漆塗りの杯を口に運んだ。その態度は、自分というファイアウォールを突破できる者は存在しないという、官僚特有の絶対的な自信に満ちていた。

「確かに、あなたの言う通りです」

 阿知寝あちねは静かに一歩前へ出た。懐から取り出した算木さんぎを、カチリと音を立てて組み合わせる。

「過所の発行には、上位権限(太守の認可)が必要だ。だが、張参……。あなたは劉夏様の信頼という名の『認証キー』を、私欲のために悪用している。違うか?」

 張参の眉がピクリと跳ねた。

「何を根拠に……」

「根拠は、この部屋にある『データの不整合』です」

 阿知寝に代わり、背後の闇から卑弥呼ひみこの声が響いた。

「あなたが昨日、帯方郡へ送ったとされる公式の報告書。その木簡の削り屑が、まだこの床に残っています。しかし、その重さは、公式な形式に則った報告書三枚分には足りない。あなたは報告を『間引いた』。そうですね?」

 卑弥呼の観測は、目に見える物質から「存在しないはずの情報」を逆算していた。

 張参の顔から血の気が引いていく。

「あなたは太守への報告を遅らせ、その間に我々から賄賂を搾り取ろうとした。それは魏のシステムにおいて、命令の『改ざん』にあたる」

 阿知寝が算木を卓の上に叩きつけた。その衝撃で、積み上げられた木簡が崩れる。

「今ここで、我々が劉夏様へ直接アクセス(密告)すれば、あなたの階級(九品)は一気に剥奪されるだろう。だが、俺は『最適化』を提案しに来たんだ」

「最……適化だと?」

「そうだ。今すぐ、劉夏様の印を『エミュレート(代行)』しろ。あなたが持っている予備の印と、太守の権限を代行する特別書式を使えば、この場で洛陽までの広域過所は生成できる」

 阿知寝の言葉は、脅迫ではなく、論理的な「バグ修正の提案」だった。

 不祥事を隠蔽しつつ、太守の意志(使節を洛陽へ送るという本来の目的)を最短ルートで実行させる。張参にとって、それだけが自身の破滅を回避する唯一の「パッチ」だった。

 「……くっ、貴様ら……」

 張参は震える手で筆を執り、白紙の木簡に向かった。

 墨が吸い込まれるたび、魏の強固な官僚システムが内側から書き換えられていく。

 数刻後、そこには帯方郡太守の権威を宿した、洛陽までの「無制限通行権」――広域過所が完成していた。

「認証完了だ」

 阿知寝は、まだ墨の乾かぬ木簡を手に取った。

 「これで、大陸という巨大な回路に、我々の信号を流すための『特権』が手に入った」

 卑弥呼と視線を交わす。

 フロントエンド(難升米)が表で時間を稼いでいる間に、バックエンド(阿知寝)がシステムの中枢へ繋がる「バックドア」をこじ開けた瞬間だった。

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