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第41話:大喧嘩をしてしまった

「フィリア、聞き分けなさい」

「……嫌です……」

「君が『やります』って言ったんだから、責任を持って練習に参加しなさい」

「そもそも魔法をかけるだけだから、練習なんてする必要ないです」

私たちが言い争っているのは、来週の放課後に行われる『魔法演舞(ミスティック・ワルツ)』の練習についてである。


「いいかい、君のために、ジュリアン王子まで演舞に参加してくれるんだ。それなのに、主演の一人である君がそんな態度では認められないよ」

「なんでですか。魔法をかけるだけなのだから、練習なんていらないじゃないですか!」

「いります。人として、それは許されません」

「それでも……私は、放課後はここに来たいです……」


「あのね、フィリアは私を見返したかったんじゃないのかい?」

「……そうですけど、それとこれとは……」

「別ではありません。私は君が、皆と一緒に何かを為す、そういう姿を一番見たいのです」

「だから……みんなと演舞します……」

「ただ演舞に出るだけでは、私は君が成長したとは評価しません。むしろ、とても残念に思います」

「……ざん……ね……ん……うぅっ……」

それを聞くと、彼女はがくがくと震え出し、大粒の涙を浮かべた。

「フィリア……君が今週、しっかりと練習に付き合ってくれる。それだけで十分だと思っています」

「……じゃあ……練習に出たら……残念じゃない……のですか?」

「まあ、そうですね」

「じゃあ、練習には出ます。でも、ここには来るので、それだけは許してください」

怒ったように、私を少し睨みつけてくる。


そのとき、昨年の王冠陣奪戦(レガリア・クラウン)での出来事が脳裏をよぎった。

フィリアが試合のたびに私のところへ戻ってきたこと。そして、告白しに来たギルバート君から「フィリアを一人で戻らせるのは教師として間違っている」と厳しく糾弾されたこと。

そういえば先週も、彼女は練習に行ったと思ったら、すぐにこの部屋へ帰ってきていた。

ギルバート君の真っ直ぐな目と、当時の後ろめたさを思い出し、私はフィリアの甘えに対して、きつく戒めることにした。


「わかりました。では、来週いっぱいは、放課後、この部屋には鍵をかけます。私は一時的に職員室のデスクをお借りして、そちらで執務をします」

「え……えぇ……ぇ……うぇ……うぇぇぇん!」

私がそう宣言した瞬間、フィリアはその場に崩れ落ち、ソファに顔を突っ伏して大声を上げて泣き出した。

聞き分けのない子どもが親に叱られたときの、それそのものだ。

しかも今回は、今までにないほど激しく癇癪を起こし、泣き止んだかと思えばまたぶり返し、三十分くらいずっと泣き続けた。


少し落ち着いてきたのを見計らって、私は改めてゆっくりと語りかけた。

「あのね、フィリア。君が私と過ごすこの時間をとても大事にしてくれていること、とても嬉しいよ。君が私の弟子として凄い神聖魔法を使えるようになってくれたことも、教師として本当に誇りに思っている」

「……」

「だからこそ、この準備室にフィリアが閉じこもっているのは、君自身の未来にとってよくないと思うんだ。君が魔法演舞に挑戦するって言ってくれたとき、私はとても嬉しかったんだよ。王子や生徒会に仲間ができて、できないことをみんなの力を借りながら、少しずつできるように頑張ってくれているって」

「……先生は……私が……ここにいないほうが……いいんですか?」

「誰もそんなことは言っていないよ。でも、ここに『だけ』いてほしいとは思わないんだ」

「わ、私のこと……嫌いに……なっちゃったん……ですか……うぅ……」

「違うよ。私が君を嫌いになるわけがない。だから、ほんの少しだけ、頑張ってほしいんだ。本当に君が大切だから、こんなことを言うんだよ」


すると、フィリアはゆっくりと顔を上げて言った。

「だったら……演舞が終わったあとは、ずっとそばにいさせてください。休みの日も、一日ずっと……ずっと……」

まるで、本当に捨てられるのを恐れる子犬のような、切実な顔をする。

「それは……でも、教師としてできる限り、君と一緒にいることは約束するよ」

「絶対……ですよ……」

「フィリアがちゃんと、一週間頑張ってくれたら、ですよ」

私がそう条件をつけた途端、彼女はまた大きな声を上げてソファに突っ伏し、泣き出してしまった。


私は教師として、正しいことをしている。

叱るべきことは叱り、生徒を正しい道へ導こうとしている。そう信じたい。

けれど、泣きじゃくるフィリアを前にすると、その確信はひどく頼りないものになる。

突き放すべきなのか、受け止めるべきなのか。

答えは出ないまま、冷たい雨音だけが、いつまでも窓を叩いていた。

今日はインディ500見ながら書いています。

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