星占い②
公園に着くと、木々の間からやわらかな日差しが差し込んでいた。
「わあああ! すべりだい!」
結は夫の手を引っぱる。
「走るな。転ぶぞ」
そう言いながらも、夫の足取りは自然と早くなる。
まずは滑り台。
結がてっぺんから叫ぶ。
「パパみてー!」
「見ている」
シュッと滑り降りる結。着地すると満面の笑み。
「もういっかい!」
それが三回、四回と続く。
次はブランコ。
夫が軽く押してやる。
「もっとたかく!」
「調子に乗るな」
言いつつも、少しだけ高く押す。
結の笑い声が公園に響く。
ひとしきり遊んだあと、結がふと立ち止まる。
「……パパ」
「なんだ」
「のどかわいた」
夫は一瞬固まる。
「……」
「パパ?」
夫は空を見上げ、小さく舌打ちする。
「忘れた」
「えぇぇぇー!」
結の肩ががっくり落ちる。
「うらない、やっぱりあたってるのかな……」
その言葉に、夫は眉をわずかに寄せる。
「違う」
しゃがんで目線を合わせる。
「好きな飲み物を買ってやる」
「ほんと?」
「ああ。自販機があった」
結の目がぱあっと輝く。
「いちごオレがいい!」
「甘すぎるだろ」
「きょうはいいの!」
夫は小さく息をつきながらも、自販機でいちごオレとブラックコーヒーを買う。
ベンチに座る二人。
「かんぱーい!」
結がストローをさして嬉しそうに飲む。
「おいしいー!」
夫はその様子を横目で見ながらコーヒーを一口。
「……これで占いは外れだ」
「うん!」
その時、遠くから声がする。
「お待たせー!」
振り向くと、妻がバスケットを持って歩いてくる。
「ママー!」
結が駆け寄る。
「早かったわね。まだお昼には少し早いけど……」
結は真剣な顔で言う。
「おなかすいた!」
夫が小さく笑う。
「食べさせてやれ」
三人でベンチに並ぶ。
妻が包みを開くと、綺麗に並んだおにぎり。
「鮭と昆布と……これは?」
「ツナマヨも作ってみたの」
「やったー!」
結は両手でおにぎりを持って、ぱくり。
「おいしいぃ……」
夫も一口。
「……うまいな」
妻が少し照れる。
「ほんと?」
「ああ」
結が口いっぱいにしながら言う。
「ママさいこう!」
三人で笑い合う。
食べ終わると、結が立ち上がる。
「まだあそぶ!」
夫が立ち上がる。
「体力あるな」
「パパもきて!」
「仕方ない」
その後も鬼ごっこ、砂場、また滑り台。
結の笑顔は朝とはまるで別人のようだった。
やがて日が傾き始める。
「もう帰るか」
「うん……でも、たのしかった」
三人で手をつなぎ、帰り道を歩く。
夫が言う。
「結」
「なあに?」
「星占い、当たらなかったな」
結は大きく笑う。
「ぜんぜん! さいこうのいちにちだった!」
妻が微笑む。
「そうね。ママも最高だったわ」
夫は静かに頷く。
「……俺もだ」
結が両手をぎゅっと握る。
「またいこうね!」
「ああ」
夕焼けに染まる道を、三人の影が並んで伸びていく。
朝の“最下位”は、もうどこにもなかった。
今日という日は、間違いなく――
三人にとって、満点だった。




