表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨のち晴れ  作者: ありり
305/311

虹③ 〜夫の胸の内〜

寺を出て、みんなで歩き始める。


雨はすっかり止み、空は澄んだ青に戻っていた。


そしてその空に、はっきりとした虹がかかっている。


俺は少し足を止め、空を見上げる。


「……」


胸の奥に、静かな想いが広がる。


十年。


長かったのか、短かったのか。


あの日から今日まで、必死に生きてきた。


仕事に向き合い。

結を育て。

周りの人に支えられながら。


それでも。


(完全に立ち直れたわけじゃない)


それは自分が一番わかっている。


ふとした瞬間に思い出す。


一人で帰る夜。

何気ない会話。

隣にいたはずの人。


胸の奥にぽっかり空いた場所は、今も消えたわけではない。


(これからも)


きっと。


寂しさを感じる日がある。


孤独を感じる夜もある。


それは多分、一生なくならない。


小さく息を吐く。


そして空を見上げる。


虹。


結が言った言葉を思い出す。


「ママかな」


俺は小さく笑う。


(……お前か)


そう思う。


十年経っても。


こうしてどこかで見ている気がする。


結が笑い。

周りの人たちが穏やかに過ごしている姿を。


きっと。


あの人は安心したいのだろう。


俺は思う。


(まだ)


完全に立ち直ったわけじゃない。


でも。


前よりは歩けている。


結がいて。

佐川がいて。

相馬がいて。

今日もこうして、みんなが集まっている。


それは。


あの人が残してくれたものだ。


夫は小さく呟く。


「……大丈夫だ」


誰に言うでもなく。


心の中で続ける。


(心配するな)


まだ時々立ち止まるかもしれない。


寂しくなる日もある。


でも。


前を向いて生きていく。


それが。


残された自分の役目だ。


そして。


(お前が)


天国から見ていても。


安心できるように。


笑っていられるように。


俺はもう一度、空を見上げる。


虹はまだ空にかかっていた。


まるで。


どこかで誰かが、静かに見守っているかのようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ