虹②
墓の前で、それぞれが手を合わせる。
静かな時間。
風が少しだけ吹き、木々の葉が揺れる。
その時だった。
ポツッ。
小さな水滴が墓石に落ちる。
「……あれ?」
結が顔を上げる。
次の瞬間。
ザーッ。
突然、強い雨が降り出した。
「わっ!」
結が声を上げる。
「雨なんて聞いてない!」
夫が周りを見る。
「急だな」
佐川が言う。
「通り雨でしょうか」
雨は一気に強くなり、境内の砂利を濡らしていく。
相馬が言う。
「屋根の下へ」
祖父母もいるため、みんな急いで寺の屋根のある場所へ移動する。
軒下に入ると、雨音が一層強く聞こえた。
ザーッと降り続く雨。
結が空を見上げる。
「さっきまで晴れてたのに」
そしてふと夫を見る。
「……もしかして」
夫が眉を上げる。
「なんだ」
結が笑う。
「パパ、雨男?」
祖母が思わず笑う。
「それは困ったわね」
祖父も笑う。
「はは、そうなのか?」
夫が苦笑する。
「違う」
結が言う。
「怪しい」
周りが少し和やかな空気になる。
その中で相馬が空を見上げて言う。
「おそらく」
全員が相馬を見る。
「通り雨です」
落ち着いた声。
「すぐ止むでしょう」
結が言う。
「ほんと?」
相馬が頷く。
「雲の流れを見る限り」
「数分ほどかと」
結が少し考えてから言う。
「じゃあさ」
みんなを見る。
「雨止んだら」
少し笑う。
「うち来ない?」
祖母が聞く。
「いいの?」
結が言う。
「京都のお土産いっぱいあるんだ」
夫が少し笑う。
「ほとんど食べ物だがな」
結が言う。
「みんなで食べようよ」
祖父が頷く。
「それはいいな」
祖母も微笑む。
「ぜひ」
佐川も言う。
「お茶を用意いたします」
相馬が軽く頷く。
「お邪魔いたします」
雨音が少しずつ弱くなる。
ザーッという音が、やがてサーッと静かな雨に変わる。
そして。
止んだ。
結が言う。
「ほんとだ」
相馬が静かに言う。
「申し上げた通りです」
夫が空を見る。
雲の切れ間から光が差す。
境内の空気が一気に明るくなる。
祖母が言う。
「晴れてきたわ」
結が歩き出す。
「行こう」
その時。
結がふと立ち止まる。
「……あ」
全員が空を見る。
青空の中に。
大きな虹がかかっていた。
祖父が静かに言う。
「綺麗だな」
祖母も目を細める。
「本当に」
夫も空を見上げる。
その虹は、まるで空に架けられた橋のようだった。
結が言う。
「ママかな」
誰も否定しない。
静かな時間。
そして夫が歩き出す。
「行くか」
みんなも歩き出す。
虹の下を。
まるで。
これからの明るい未来を象徴するように。




