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雨のち晴れ  作者: ありり
304/311

虹②

墓の前で、それぞれが手を合わせる。


静かな時間。


風が少しだけ吹き、木々の葉が揺れる。


その時だった。


ポツッ。


小さな水滴が墓石に落ちる。


「……あれ?」


結が顔を上げる。


次の瞬間。


ザーッ。


突然、強い雨が降り出した。


「わっ!」


結が声を上げる。


「雨なんて聞いてない!」


夫が周りを見る。


「急だな」


佐川が言う。


「通り雨でしょうか」


雨は一気に強くなり、境内の砂利を濡らしていく。


相馬が言う。


「屋根の下へ」


祖父母もいるため、みんな急いで寺の屋根のある場所へ移動する。


軒下に入ると、雨音が一層強く聞こえた。


ザーッと降り続く雨。


結が空を見上げる。


「さっきまで晴れてたのに」


そしてふと夫を見る。


「……もしかして」


夫が眉を上げる。


「なんだ」


結が笑う。


「パパ、雨男?」


祖母が思わず笑う。


「それは困ったわね」


祖父も笑う。


「はは、そうなのか?」


夫が苦笑する。


「違う」


結が言う。


「怪しい」


周りが少し和やかな空気になる。


その中で相馬が空を見上げて言う。


「おそらく」


全員が相馬を見る。


「通り雨です」


落ち着いた声。


「すぐ止むでしょう」


結が言う。


「ほんと?」


相馬が頷く。


「雲の流れを見る限り」


「数分ほどかと」


結が少し考えてから言う。


「じゃあさ」


みんなを見る。


「雨止んだら」


少し笑う。


「うち来ない?」


祖母が聞く。


「いいの?」


結が言う。


「京都のお土産いっぱいあるんだ」


夫が少し笑う。


「ほとんど食べ物だがな」


結が言う。


「みんなで食べようよ」


祖父が頷く。


「それはいいな」


祖母も微笑む。


「ぜひ」


佐川も言う。


「お茶を用意いたします」


相馬が軽く頷く。


「お邪魔いたします」


雨音が少しずつ弱くなる。


ザーッという音が、やがてサーッと静かな雨に変わる。


そして。


止んだ。


結が言う。


「ほんとだ」


相馬が静かに言う。


「申し上げた通りです」


夫が空を見る。


雲の切れ間から光が差す。


境内の空気が一気に明るくなる。


祖母が言う。


「晴れてきたわ」


結が歩き出す。


「行こう」


その時。


結がふと立ち止まる。


「……あ」


全員が空を見る。


青空の中に。


大きな虹がかかっていた。


祖父が静かに言う。


「綺麗だな」


祖母も目を細める。


「本当に」


夫も空を見上げる。


その虹は、まるで空に架けられた橋のようだった。


結が言う。


「ママかな」


誰も否定しない。


静かな時間。


そして夫が歩き出す。


「行くか」


みんなも歩き出す。


虹の下を。


まるで。


これからの明るい未来を象徴するように。

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