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雨のち晴れ  作者: ありり
301/311

思い出の場所へ、再び①

結の修学旅行三日目。


夕方。


玄関の扉が勢いよく開く。


「ただいまー!」


元気な声。


「お帰りなさいませ、結お嬢様」


佐川がすぐに出迎える。


大きなバッグを持った結が笑っている。


「佐川ー!」


「楽しかったですか?」


「めっちゃ!」


その時、奥の部屋のドアが開く。


「結」


夫だった。


シャツ姿のまま、仕事用のタブレットを手にしている。


結が笑う。


「パパ!」


夫は一歩近づく。


「無事帰ったな」


結が言う。


「当たり前じゃん」


夫が少し息を吐く。


「……よかった」


佐川も静かに言う。


「本当に」


結が言う。


「心配しすぎ」


夫が即答する。


「親だからな」


結が笑う。


「はいはい」


バッグをリビングに持っていく。


「お土産あるよ!」


夫が言う。


「そんなに買ったのか」


結がバッグを開ける。


「じゃーん」


次々と出てくる。


「八ツ橋!」


「漬物!」


「団子!」


「あと煎餅!」


「それから」


袋を取り出す。


「あぶらとり紙」


佐川が少し驚く。


「たくさんでございますね」


結が得意そうに言う。


「だって楽しくて」


夫が言う。


「ほとんど食べ物だな」


結が笑う。


「京都っぽいでしょ」


そして言う。


「みんなで食べよう!」


佐川が微笑む。


「ありがとうございます」


テーブルに並べる。


八ツ橋の箱が開く。


結が一つ取る。


「これ美味しいよ」


夫が言う。


「まずはお茶だな」


佐川が言う。


「すぐにお持ちします」


三人で少しずつ食べる。


結が笑う。


「京都のお菓子って美味しいよね」


夫が言う。


「そうだな」


しばらく賑やかな時間。


やがて落ち着き、三人はリビングでくつろぐ。


夫がソファに座りながら聞く。


「それで」


結が顔を上げる。


「ん?」


「京都どうだった」


結は少し考える。


「うーん」


そしてゆっくり話し始める。


「清水寺とか」


「金閣寺とか」


「嵐山も行った」


夫がうなずく。


「有名なところだな」


結は続ける。


「でもね、ただの観光地って感じじゃなかった」


夫が聞く。


「どういうことだ」


結が言う。


「そこに人が住んでて、普通に生活してて」


「でもすごく古いものがそのまま残ってる」


少し言葉を探す。


「なんていうか歴史って昔の出来事じゃなくて」


「今につながってるものなんだなって思った」


夫は静かに聞いていた。


結が続ける。


「それでね、思い出した」


夫が聞く。


「何を」


結が言う。


「パパの部屋にある写真」


夫が少し目を細める。


「……白川郷か」


結がうなずく。


「うん」


「三歳のときの」


夫は静かに言う。


「覚えてるのか」


結は首を振る。


「記憶はない」


「でも写真は覚えてる」


少し笑う。


「パパとママと私」


夫は黙って聞く。


結は続ける。


「あそこも日本の歴史とか文化がある場所だよね」


夫はうなずく。


「ああ」


結が言う。


「京都行って思った」


少し間。


「もう一回行ってみたい」


夫が聞く。


「白川郷にか」


結がうなずく。


「うん」


少し笑う。


「今度の夏休み、一緒に行かない?」


夫は結を見る。


少しだけ微笑む。


「……わかった」


結が嬉しそうに笑う。


「やった」


夫は静かに言う。


「久しぶりだな」


結が言う。


「楽しみ!」


リビングには穏やかな空気が流れていた。

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