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雨のち晴れ  作者: ありり
299/311

結の二泊三日の修学旅行⑤

朝の会社のオフィス。


エレベーターが開くと、すでに社員たちが動き始めていた。


「おはようございます、社長」


「おはようございます」


夫は軽く頷きながら歩く。


「おはよう」


落ち着いた声。


社長室の扉を開ける。


机の上に鞄を置くと、すぐにノックの音。


コンコン。


「入れ」


扉が開く。


「おはようございます、社長」


相馬だった。


タブレットを持ち、いつもの落ち着いた表情。


「おはよう、相馬」


相馬が軽く頭を下げる。


「本日のスケジュールをお伝えします」


「頼む」


相馬がタブレットを確認する。


「九時から役員会議」


「十時半から金融機関との打ち合わせ」


「昼食を挟みまして十三時から新規事業の報告」


「十五時から海外支社とのオンライン会議」


「十七時から取引先との会食」


夫が少し苦笑する。


「……相変わらず詰まってるな」


相馬が淡々と言う。


「いつも通りです」


夫は椅子に深く座る。


「まあいい」


「仕事がある方が気が紛れる」


相馬が少しだけ目を細める。


「そうですか」


夫は軽く息を吐く。


「家が静かだった」


相馬が言う。


「結お嬢様は今日から修学旅行でしたね」


「ああ」


夫がうなずく。


「京都だ」


「二泊三日」


相馬が微笑む。


「楽しまれているでしょう」


「だといいが」


少し間。


夫がふと思い出したように言う。


「相馬」


「はい」


「来月の命日」


相馬が顔を上げる。


「妻の」


「はい」


夫は続ける。


「もしよかったら」


「一緒に墓参りしてくれないか」


相馬はすぐに姿勢を正す。


夫は続ける。


「日曜日だから」


「無理はしなくていい」


「予定があるなら——」


相馬が静かに言う。


「いえ」


夫が見る。


相馬が続ける。


「佐川さんから」


少し言葉を選びながら言う。


「……惠さんから連絡をいただいております」


夫が少し笑う。


「そうか」


相馬は頷く。


「是非ともご一緒させていただきたい」


夫は少しだけ目を細める。


「……ありがたい」


相馬が軽く頭を下げる。


「こちらこそ」


夫は机の上の書類を見る。


「妻も」


小さく言う。


「喜ぶだろう」


相馬は静かに答える。


「きっと」


少し間。


夫が立ち上がる。


「さて」


相馬がタブレットを閉じる。


「役員会議まであと十分です」


夫がネクタイを整える。


「今日も忙しいな」


相馬が微笑む。


「社長が詰めた予定です」


夫が苦笑する。


「そうだったな」


そして歩き出す。


「今日も頼む」


相馬が軽く頭を下げる。


「お任せください」


慌ただしい一日が、また始まろうとしていた。

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