結の二泊三日の修学旅行④ 〜結の胸の内〜
京都、夕方。
修学旅行の自由時間が終わり、班のみんなで宿へ向かって歩いている。
清水寺の舞台から見た街並み。
金閣寺の水面に映る金色。
嵐山の竹林を抜ける風の音。
どれもテレビや写真で見たことがある場所だった。
でも、実際に立ってみると、少し違った。
(なんだろう)
私は歩きながら思う。
ただの観光地じゃない。
ここには人が住んでいる。
お店があり、道があり、生活がある。
そして、その中に。
何百年も前から続く建物や文化が、普通に存在している。
(歴史って)
授業で習う年号や出来事のことだと思っていた。
でも。
ここに来て思った。
(違うんだ)
歴史は、ただの過去じゃない。
昔の人が残したものが、
今も人の生活の中にあって、
それが今につながっている。
そういうものなんだと。
ふと、家のことを思い出す。
(パパの書斎)
あの部屋の棚の上。
写真立てが置いてある。
白川郷。
茅葺き屋根の家。
雪のない季節の写真。
三人で写っている。
父。
母。
そして、小さな自分。
(三歳)
その頃の記憶は、ほとんどない。
写真でしか知らない。
でも。
母は優しく笑っていて。
父は少し照れくさそうに立っていて。
小さな私は、父に抱っこされている。
(あそこも)
きっと。
日本の歴史や文化が息づいている場所。
白川郷。
何百年も続く暮らし。
(行ってみたいな)
今の自分で。
あの場所を見てみたい。
京都で感じたものを。
あそこでも感じられる気がする。
私は空を見上げる。
夕焼けが京都の街を染めていた。
(今度の夏休み)
少し考える。
(パパ誘ってみようかな)
二人で。
もう一度。
あの場所へ。
歴史を感じながら。
そして。
三人で写っているあの写真の場所を、
もう一度歩いてみたいと思った。




