結のサンタへのお願い⑥ 〜夫の胸の内〜
結が笑った。
あの無邪気な「ねがい、かなった!」という声が、まだ耳に残っている。
たったそれだけのことなのに、胸の奥が満たされた。
俺は大きな商談をまとめることもできる。
莫大な金を動かすこともできる。
だが今日、一番価値があったのは――
あの小さな食卓だった。
早く帰ると約束し、本当に帰れたこと。
三人でチキンを囲み、ケーキを分け、写真を撮ったこと。
それだけで、十分だった。
そして夜。
妻が「幸せだった」と言ったとき。
あの穏やかな微笑みを見た瞬間、胸の奥が静かに熱くなった。
用意していた小さな小包を渡した。
大げさなものではない。
豪華すぎない。
普段、身につけられるもの。
――日常の中で、共にいる証のようなものを。
箱を開けたときの妻の顔。
声を詰まらせて、涙をこらえる姿。
「嬉しい」と言ったあの震えた声。
ああ、これでよかったのだと思った。
守ることばかり考えていた自分が、
ようやく「一緒に過ごす」ことを選べた夜。
娘も喜び、
妻も喜び、
自分も満たされた。
最高のクリスマスだった。
来年も。
再来年も。
結が少し大きくなっても、
また同じテーブルを囲んで、
同じように写真を撮って、
同じように笑いたい。
当たり前のように、そう思った。
――だが。
その願いが叶わない未来を、
その時の俺は、まだ知らなかった。
ツリーの灯りは、静かに揺れていた。
まるで、儚い時間を照らすように。




