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雨のち晴れ  作者: ありり
229/311

結のサンタへのお願い⑤

クリスマスの夜。


結はうさぎのぬいぐるみを抱いたまま、満足そうに眠っている。


夫婦の寝室。


静かな灯りの中、ベッドの端に並んで座る二人。


妻がぽつりと呟く。


「……結、あんなに喜んでくれて」


夫は頷く。


「ああ」


「本当に、嬉しそうだった」


少し間を置いて、妻は微笑む。


「私もね、とても幸せなクリスマスでした」


夫はちらりと横を見る。


「……そうか」


「ええ。あなたが早く帰ってきてくれて。三人で過ごせて。写真も撮れて」


妻は小さく笑う。


「願いが叶ったのは、結だけじゃないの」


夫は少し視線を逸らす。


「……大げさだ」


「大げさじゃないわ」


静かな空気が流れる。


夫はふっと息をつき、ベッド脇の引き出しを開ける。


「……これ」


差し出された、小さな小包。


「え?」


「その……一応な」


妻は驚いて目を見開く。


「私に?」


「他に誰がいる」


不器用な言い方。


妻はそっと受け取る。


「開けても?」


「ああ」


包みを開く指先が、少し震えている。


中から現れたのは、繊細なダイヤのネックレス。


小さな光が、静かに瞬く。


妻は息を呑む。


「……」


声が出ない。


夫が照れくさそうに言う。


「毎回、同じようなもので悪いな」


「そんな……」


妻は目を潤ませながら首を振る。


「嬉しいです……」


ようやく絞り出すように言う。


夫は少し早口になる。


「派手すぎないものを選んだ。普段使いできそうなやつだ」


「普段使い……?」


「ああ。特別な日だけじゃなくて、いつでも」


妻はネックレスを両手で包む。


「……あなたが、私のために時間を使って選んでくれたの?」


「……当然だろ」


ぶっきらぼうだが、その声は柔らかい。


妻の目から、ぽろりと涙が落ちる。


「ありがとう」


「泣くな」


「嬉しくて」


小さく笑う。


「毎日、身につけます」


「毎日はいい」


「毎日つけるの」


少し意地になったように言う妻に、夫はふっと笑う。


「……好きにしろ」


夫はネックレスを受け取り、立ち上がる。


「つけてやる」


妻は静かに髪を持ち上げる。


夫の指が、そっと首元に触れる。


冷たいダイヤが、肌に触れる。


カチ、と留め具の音。


「……どうだ」


妻はゆっくり振り向く。


ダイヤが、柔らかい灯りを受けてきらめく。


夫はしばらく見つめてから、低く言う。


「……似合う」


妻は頬を染める。


「本当に?」


「ああ」


「ありがとう」


夫は照れ隠しのように視線を逸らす。


「……お前が喜ぶなら、それでいい」


妻はそっと夫の腕に寄り添う。


ネックレスが、二人の間で静かに光る。


外では、遠くで鐘の音が鳴っている。


結の願いが叶った夜。


そして――


夫婦にとっても、忘れられないクリスマスの夜だった。


挿絵(By みてみん)

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