表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨のち晴れ  作者: ありり
228/311

結のサンタへのお願い④

クリスマスの朝。


まだ薄暗いリビングに、小さな足音が響く。


「……あっ!」


ツリーの前で、結の声が弾けた。


「ママー! パパー! きて!!」


寝室から慌てて出てくる妻と夫。


ツリーの下には、大きな箱。


赤いリボンがかかっている。


「サンタさん……」


結は震える手で包みを開ける。


中から現れたのは――


ふわふわの、大きなうさぎのぬいぐるみ。


「うわああああ!」


結は飛び跳ねた。


「うさちゃん! おおきい!!」


ぎゅっと抱きしめる。


「ママ見て! パパ見て!」


妻は微笑みながら口元を押さえる。


「かわいい……」


夫も目を細める。


「随分立派なうさぎだな」


結はうさぎを抱いたまま、真剣な顔で言う。


「サンタさん、きてくれたんだね!」


夫と妻は、視線をそっと交わす。


「ああ、きてくれたな」


結はうさぎに話しかける。


「きょうはね、みんなでクリスマスするんだよ」


朝食のあと。


夫はコートを羽織りながら結にしゃがみ込む。


「結」


「なあに?」


「今日はな、夕方には帰る」


結の目が丸くなる。


「ほんと!?」


「ああ。仕事を早く終わらせる」


「みんなでクリスマスする?」


「する」


結はうさぎを抱いたままぴょんと跳ねる。


「やったー!!」


そして、夫の首にぎゅっと抱きつく。


「はやく帰ってきてね!」


夫は少し驚きながらも、優しく頭を撫でる。


「約束だ」


「ぜったいだよ?」


「絶対だ」


妻が微笑む。


「気をつけて」


「ああ」


――夕方。


玄関のドアが開く。


「ただいま」


「パパー!!」


うさぎを抱えた結が飛び出す。


夫は思わず笑う。


「間に合ったな」


テーブルにはチキン、サラダ、スープ、そして大きなクリスマスケーキ。


妻がエプロン姿で微笑む。


「おかえりなさい」


「……豪華だな」


「今日は特別ですから」


結は夫の手を引く。


「みて! うさちゃんもいっしょ!」


椅子の上には、うさぎのぬいぐるみがちょこんと座っている。


夫は思わず笑う。


「ちゃんと席があるのか」


「かぞくだもん!」


その一言に、夫の表情が柔らかくなる。


全員が席に座る。


結とうさぎ、妻、夫。


そこへ佐川が控えめに言う。


「旦那様、奥様。よろしければお写真を」


妻がすぐにスマホを手に取る。


「お願いしていい?」


「かしこまりました」


妻はスマホを佐川に託し、夫の隣に座る。


「結、こっち向いて」


「うさちゃんも!」


夫が結の肩を抱く。


「よし、撮るぞ」


佐川が少し下がる。


「参ります。三、二、一――」


シャッター音。


その瞬間。


三人の笑顔と、うさぎのふわふわの耳が並んだ。


結は嬉しそうに言う。


「ねえ、ねえ!」


「どうした?」


「ねがい、かなった!」


妻が優しく尋ねる。


「どんな願いだったの?」


結はにこにこしながら答える。


「みんなで、なかよくクリスマスすること!」


夫は一瞬、言葉を失う。


そして静かに言う。


「……叶ってるな」


「うん!」


結はうさぎをぎゅっと抱きしめる。


「いちばんのプレゼントだもん!」


夫は妻を見る。


妻も微笑み返す。


「幸せですね」


「ああ」


ツリーの灯りが、穏やかに揺れる。


笑い声と、ケーキの甘い匂い。


その夜は、あたたかく、静かに、確かに――


幸せなクリスマスだった。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ