5.無料
ホテルに到着した。
「えっと……」
「ほら、行くよ!」
「いらっしゃいませ。スマホの提示をお願い致します」
ん?
スマホ?
「はい」
スマホだ。
「芹、スマホ」
「はい!」
俺はスマホを出した。
なずなが何かをしている。
そして、受付の女性にスマホを渡した。
何かを読み取っている。
「プレイヤー、確認致しました。201号室と202号室です」
受付の女性は、俺達にカードを出した。
「ありがとうございます! 行くよ!」
「ありがとうございました!」
エレベーターを待つ。
「なずな、どういう事?」
「プレイヤーは、交通費や指定されたホテルの宿泊費が無料なの」
「まじ!?」
「出発前、荷物をカード化してたとき、交通費の設定しといた。バトルをする事で証拠になるから、相手と会えなかったら損だけどね」
「宿泊費は?」
エレベーターが到着したので、俺達は乗った。
二階のボタンを押す。
「実は、宿泊費については知らなかったの。20位になって、スマホにお知らせがきてたから、見てみたらこんなお得な情報だった訳」
どんだけ儲かってるんだ、このゲーム会社。
「マイページのバーコードを見せれば、宿泊費が無料らしいわよ」
「さっき、受付に見せてたのはそれか」
二階に着いた。
「私達、着替えは持ってきてるし、問題ないでしょ!」
まぁ、そうだな。
俺もなずなも一人暮らしだから、問題はない。
「カードオープン!」
受付でもらったカードが、鍵に変わった。
「じゃ、また!」
「あぁ、また」
俺は、鍵を開けて中に入る。
すげぇな。
テーブルに、ホテルのガイドが載っている。
ドリンクバー無料、ルームサービス無料、サウナ無料……。
これ、ここで腐るやついるな。
でも、そうはいかない。
ここの宿泊人は、みんなカードバトルの関係者。
そんなやつがいたら、真っ先に狙われる。
そもそも、そんなに宿泊人はいないか。
最後に※印で何か書いてある。
一日に一回はバトルをする事。
バトルをしなければ、強制退室。
まぁ、そうだよな。
とりあえず風呂入ったら、何か食べるかな。
――――
ピンポーン。
ん?
除き穴をみると、なずながいた。
俺は、ドアを開けた。
「芹! ご飯一緒に食べよう!」
「何食べる?」
――――
修学旅行みたいな感じだ。
ルームサービスなら、プレイヤーにも会わないから安全だ。
「誰かに作ってもらったご飯って、なんでおいしいんだろうな」
俺は、魚定食を食べていた。
「分かるー! 自分で作ると味気ないよね」
なずなはハンバーグ定食だ。
誰かとご飯を食べるなんて、久しぶりだ。
両親が行方不明になる前の朝、俺は、両親と外食の約束をしていた。
約束は守れなかったけどな……。
「「ごちそうさま」」
「さて、明日の事だけど、近場にランキングが低い人がいないのよ」
「一番近くて何位?」
「12位……と、13位の二人」
「上がり過ぎだろう!」
「私は今19位。芹、何位になった?」
「えーっと……25位!」
「あの人に勝ったからね。ただこの二人、一緒にいるかもしれないんだよね」
「俺達と一緒って事?」
「うん。もしかしたらタッグバトルになるかも」
「それで、これから作戦会議って事ね」
「さすが芹。ランキング上位だからって、正当なバトルをするとは限らない。私達がカード化される可能性もある。しっかり作戦を練るわよ」
「分かった」
会議は23時まで行われた。
――――
ピンポーン。
「おはよー!」
「おはよう、なずな」
「プレイヤー移動してるみたいでさぁ……名古屋かも」
「名古屋ぁ!?」
「うん。でも、他にプレイヤー見当たらないから、行こう!」
俺達は名古屋へ向かった。
――――
「俺達みたいに、近づいてくるプレイヤーって結構いるのかな?」
「いると思うよ」
「リモートバトルできればいいのにな」
「できるよ」
「え! できるの?」
「その代わり、経験値が低いし、もらえるカードのレベルが低かったりする」
「大変だけど、直接バトルした方がいいって事か」
さて、夏休みはまだあるけど、どうなるのか。
――――
あぁーっ、名古屋に着いたぁーっ!
俺は背筋を伸ばした。
「芹、プレイヤーこの近くにいる」
「この近く!?」
どこだ。
ぐぅ……っ。
俺のお腹が鳴った。
「腹が減っては戦ができぬってやつ?」
「……食べてからでもいい?」
「もちろん。じゃあ、あそこは?」
「いいね!」
なずなが指を指した場所……。
ファミレスの外に、のぼりが立っている。
そこには、味噌煮込みうどんと書かれていた。
――――
まだ時間も早いせいか、店の中は空いていた。
「ご注文はお決まりですか?」
「味噌煮込みうどん二つ」
「かしこまりました」
なずなは、スマホを見ていた。
「プレイヤー、急に離れたわ」
「俺らに気づいて逃げた?」
「可能性はあるね。でも順位は、私達の方が低いから、たまたまか……作戦を練る為に、一旦離れたか……まぁ、時間はまだあるし、食べてから考えましょ」
「俺の腹がごめんな」
「お待たせしましたー。味噌煮込みうどん二つです。ごゆっくりどうぞー」
「うっわ、うまそう」
「よし、食べよう!」
「「いただきます!」」
「熱っ!」
「よく噛んで食べなよー」
「母さんかよ」
ピピピピピピ!!!!!!
「え! 近づいてきてる!」
「まじかよ!」
俺達は、急いで食べ始めた。
店のドアが開いた。
「戻りましたー!」
そこには、髪を後ろで結んだ女性がいた。
「戻りました!」
時間差で、短髪の男性が店に入ってきた。
「出前、ご苦労様でした! 今日はあがっていいよ!」
店長らしき人が、二人に話しかけている。
「「ありがとうございます! お疲れ様でした!」」
「また明日もよろしくねー」
「「はーい!」」
二人が、こちらに近づいてくる。
「そこのお兄さんとお姉さん、私達に用があるでしょ?」
「ぐぅふっ!!」
俺は、喉を詰まらせた。
「ゆっくり食べなよ。俺達は外で待ってっから」
二人は外に出ていった。
「そんなに悪い人ではないのかな? ……ごちそうさまでした!」
「げぇほっ、ごほっ……」
「あぁあぁ大丈夫?」
俺は、急いで食べ、なずなと外に出た。




