第62話 紅葉狩り3
「着きましたな。ナギサ殿のおかけであっという間でした」
「しゃっしゃっしゃー!」
皆を降ろしたナギサくんがしゅるしゅると小さくなった。
「それじゃあ、紅葉狩りといこうかな。ただ、この森の辺りからモンスターが強くなるからみんな気を付けてわん」
忘れてならないアンメモの鬼畜仕様の一つに街から離れるごとにモンスターが強くなるものがある。ここに着いた当初は周りは巨大なモンスターだらけで絶望したんだった。
◯[フラグ乙]
▽[平原エリア越えるからエリアボスでるんじゃないか?]
◆[そういえば南のエリアボス倒してないよね]
「あ……」
∪[エリアボスのこと忘れてたなw]
▽[あの後はそれどころじゃなかったからしょうがない]
∴[南と同じ感じなら森を抜けてからエリアボスの可能性もある]
「エリアボスを見かけたという話は聞いてませんわ。東へ更に抜けると海があるらしいのでそちらじゃないでしょうか?」
「海?! そういえばそうだった」
「この森は湖と海の真ん中ぐらいだと伝わっています。もっとも、森を抜けた先は流石に魔物が強くて実際に海まで行った話は聞きませんけど……」
◎[海良いなー、こっちも海あるのかな]
∈[はじまりの街の東の山を越えると湖はあるにゃ]
▽[川を下れば海に着くかもしれない]
アンメモは完全オープンワールドを謳っており、実はエリアボスを倒さなくても次のエリアへの移動は可能らしい。ただ、エリアボスより強い雑魚敵がわらわら寄ってくる。
「海は行ってみたいけど、この辺にも町を造って森に道を通す必要がありそうだわん」
南の森にはフカルア山へと抜ける道があったけど東の森にはそのような道はないらしい。
まずは鬱蒼とした森へと分け入り愛用の手斧で下草やぶら下がっている蔦をざかざかと切り開いていく。
「わん太殿手慣れてますなぁ」
同じく手斧に持ち替えたゴルディさんも豪快に木の枝を叩き落していた。
❤〚モンスターいないね〛
▽[樹木系だから擬態してるんじゃないか?]
◎[あ、なんか動いた気がする]
「確かに、あのもみの木はじりじりとわん太様から離れようとしていますね」
シルヴィアさんの指差す先ではゆっくりとモミノッキーが後ずさろうとしていた。
「そーれっ!」
一瞬で距離を詰め、枝を落とした上で袈裟懸けに手斧を振り下ろす。
光の粒子となって消えた後にはもみの木のツリーに星型や球状のオーナメントが残されていた。
「おお、なんという手際の良さ。それに、レアなツリーが二本もドロップするとは」
◯[流れるように殲滅してて草]
∈[やっぱり部位破壊するとアイテムドロップ率アップかにゃ?]
▽[しかし、その手斧強くないか? 初期装備?だよな]
愛用の手斧は開拓者セットに入っていたものだ。攻撃力は低いが耐久値がないので使い勝手が良い。
「手斧の攻撃力はほとんどないわん。称号に『トレントの天敵』とかあるから、その効果がのってたりするのが効いてるのかも」
◎[そんな称号あるんだ]
∈[『兎の殲滅者』も持ってたはずにゃ]
◆[千匹倒すと天敵でヘイトがアップしたり逃げられるようになったり色々だけど、ダメージはアップだな]
「何故か兎のヘイトが集まるんだわん。トレントは逃げ出そうとしてるね」
よくよく見ると震えている樹があって慣れると見破れるようになってきた。
「なんだかトレントが可哀想に見えてきましたわ」
「そうは言っても間引きせねば溢れてきますし、オーナメントも町の衆に頼まれていますので……」
可哀想と言いつつもシルヴィアさんは風の魔法でモミノッキーの枝をざかざかと落としており、とどめにゴルディさんが一刀両断の見事な連携プレイを見せていた。
◯[なんという作業ゲーw]
∪[わん太効果で襲ってこないからトレントを探すゲームになってる]
▽[オレ、スギッキーに囲まれて大変だったんだけど……]
そういえば、そこそこ奥まで分け入ってきたけど、出てくるのはモミノッキーばかりだ。
「ここら辺ってモミノッキーしかいないのかな?」
「いや、違うモンスターも……?」
辺りを見回してなにか言いかけたゴルディさんが固まった。
その視線の先には少し赤く大きなもみじの葉っぱでできた手に杖を持ったトレントが……大きなリュックを背負っていた。
「新種?! 魔法系かな? とりあえず、倒すわん!」
魔法系は詠唱される前に速攻で倒す方がいい。手斧を振りかぶり一足飛びに肉薄する。
「ちょっ! まてまてまってぇー!」
振り下ろす直前にトレントが叫んだ。
「ん?! 待って?」
止めた手斧の下にはへたり込んだトレント?がいた。




