第51話 出発
まだ日が昇り始めたばかりの早朝、この大雪を止めるべく祠に向かうメンバーが集まっていた。
今は晴れているが時折吹雪くようになり、そこまで冬の寒さ対策を行っていないこの街にとっては死活問題になりかねない。そんな事情から早速調査することになった。
「おはようわ~ん。ぬいぐるみ系VTuber、猫乃わん太わん。ちょっと眠くて、とっても寒いけど」
がっつりと着込んたボクは街の入り口で配信を開始した。
◯[おはよー、毛皮の帽子にコートはあったかそう]
▽[わん太、服着れたのか]
❤〚きゃわわわ。その帽子、シャプカだっけ?〛
「ロシア帽とかシャプカとかいうみたいわん。情報クランのクラマスの『帽子屋』こと店長さんにレシピ貰ったのを作ってみたわん」
ふかふかの帽子とコートは角兎の毛皮から『裁縫』スキルで作成した。まあ、毛皮はインベントリに大量にあったからね。もちろん街のみんなにも作成して配っている。
∈[ウチの店長のレシピだったのかにゃ。そう言えば水着のレシピと交換したって言ってたにゃ]
▽[泳げそうなの川しかないから夏イベ後は水着の出番がない]
∴[はじまりの街の東側に湖があるとか聞いたけどたどり着いた話は聞かないしねー]
「ほえ~、これが『はいしん』ってやつっすか、わん太さん流石っす」
可視化した配信画面をドゥーエが覗きこんでいる。
「おお、僕のとこでもわん太君の姿が見えるよ!」
リュードさんは自分で表示した配信画面を確認中だ。
◎[そのモグラさんと猫さんは今回の参加メンバー?]
∈[にゃにゃ?! NPCが配信見てるのかにゃ??]
◆[そういえば、夏イベでもミラさんっぽい人がコメントしてなかった?]
アンメモの配信コメントは完全に匿名だが、まあ、誰がコメントしているかはなんとなく分からなくもない。
「どのタイミングかはわからないけど、街のみんなにも一部のメニューが開放されてるっぽいんだよね。それはともかく、今回はこの3人で大雪の原因を調査、解決しに向かうよ」
今回の祠行きのメンバーは厳選、というか、移動手段と寒いという理由でみんなが行きたがらなかったので3人だけである。折角なので紹介しておこう。
「えーと、今回フカルア山までの案内役として同行するドウェルフ族リュードです。普段は狩人をしており弓が得意です。って、こんな感じでちゃんと映ってますか?」
「次はオレっすね。由緒正しき土竜族のドゥーエっす。道路工事の下見を兼ねて同行するっす」
◯[イケ猫に三下モグラ?]
❤〚もふもふ〛
▽[3、4等身のモフモフが並んでるのぬいぐるみ感があって違うゲームっぽいよな]
うんうん、ドウェルフ族も土竜族も背丈はボクと変わらないし、どちらもモフモフしているからね。
「それじゃあ、そろそろ出発するわん。ナギサくんお願いね」
「しゃしゃしゃーっく!」
ナギサくんが元気よく前に出る。
「しゃー、しゃーっく!」
50センチぐらいのサイズでふわふわしていたナギサくんの体が光りながら大きくなる。5メートルほどに大きくなった姿はフライングシャークと呼んだほうが良さそうだ。
△〚でか! これに乗っていくのか〛
◎[でかすぎない?]
∪[ちょっと乗ってみたい。どこで捕まえられますか?]
「ナギサくんはサメの姿だけどサメじゃないしねー。実際、精霊さんってどこで会えるんだろう?」
ナギサくんもイナバくんも精霊付きのエリアボスを倒したことで契約している。しかし、それ以外での精霊の話は聞いたことがない。また、エリアボスを倒したからといって精霊さんと契約できるわけではなさそうだ。
「それじゃあ、そろそろ出発しようか」
スーッと雪の上まで下りてきたナギサくんの背中にみんなで乗る。
「きゅっきゅきゅーっ!」
ナギサくんの頭の上に座ったイナバくんの掛け声とともに出発した。




