第46話 夏イベント13
「くっ、くくっ、あー、腹いてぇー」
ボスタコの周りで踊る人達を見ながら店長が笑いをこらえていた。
「店長、笑ってないでなんとかするにゃ」
「いや、だって、あのマッスルの踊り、くくっ。後であいつのクラン『ころっせお』の連中にも映像送っとこうw」
上半身裸の筋肉な人はマッスルさんと言うらしい。ウチの土竜族も踊ってるのでなんとかしたいとこではある。
「あの踊りってどうすれば解除できる?」
〓[いや、解除方法はしらないかなー。時間で回復はするっしょ]
◯[何人ぐらいくらった?]
◆[土竜さんにマッスル、後はアーサーとこのドレッド? 近接で殴ってた3人かな]
「兎兎姉はちゃんと避けてるにゃ」
「『兎兎ねぇ』ってあのバーサクしてそうな兎獣人さん?」
「そうにゃ。あれがウチのサブマスにゃ」
身長程はあるであろう巨大な大剣を振り回している。
―― Gyuaaaoooeee!
ボスタコの腕の一本が宙に舞った。
◎[獲った!]
◆[兎兎さん相変わらずすげー]
∴[お、一気に畳み掛けるみたいだ]
「ボクも行ってくるわん!」
細剣を手に駆け出す。
―― Syaao! Syuooo!
ボスタコは四方八方に糸玉を飛ばしていた。
◆[その糸玉、触れるとくっつくみたいだぞ]
◯[既に何人か犠牲になってる]
―― Syuooo!
「うわっ」
飛んでくる糸玉を避けきれずに細剣で払う。
「あれっ?」
◯[切れたね。真っ二つだ]
◆[その剣、特殊なやつだったりする?]
「ドウェルフの鍛冶屋さんに作ってもらったのだけど、特に特殊なのではなかったと思うわん」
再び飛んできた糸玉を切ってみるが、普通に切れる。
「切れるね……」
「それは『裁縫』系スキルの効果だね。『裁縫』系スキルの効果の一つとして糸に対する特効というか、要は糸がよく切れるようになる」
追いついてきた店長さんが『裁縫』スキルの効果について教えてくれる。
◯[さすが『裁縫』スキル、戦闘系スキルは違う]
∴[戦闘系w 他の生産系スキルも似たような効果がそれぞれあるよ]
「あ、そういえば『木工』スキル取得後にサクラッキーが倒しやすくなった気がしてたわん!」
「アンメモのスキルは隠し効果的なのが多くて検証しがいがあるよね。ほら、こんなこともできる」
店長さんは飛んできた糸玉をキャッチしてくるくる回した。
◎[ふぁっ!?]
◯[えっ、手品??]
◆[糸玉をほぐして糸に戻した?]
「こうやって、絡まった糸をほぐして巻き取ることもできる。おおっ! この糸、水を弾くじゃないか。水着にピッタリだぞ。チシャ! お前も糸玉集めてきてくれ!」
あ、店長さんの眼の色が変わった。
「えー、これくっつくと取れないから集めたいくないんですけどにゃー」
「くっつけて持ってきたら取ってやるよ。三月と眠茶にもボス倒さなくていいから糸玉集めて持ってくるように伝えてくれ」
ボクも糸玉をほぐしてみる。
「くーるくるくるっと、ほんとに綺麗にまきとれるわん!」
水着用の布も作りたいし、これは大量に集める必要がある。
◆[わん太と帽子屋がボスほっといて糸玉集め始めてて草]
◯[水着のためなら、まあ、しかたないw]
―― Gyalululuuuuooeee!
ボスタコの叫び声が聞こえた。
∴[お、アーサーの『剣技』で蛸の手?をぶった斬った]
◆[そろそろエリアボスも片付きそう]
◎[エリアボスそっちのけで糸玉集めてる連中もいるけどなwww]
「嫌だなぁ、糸玉回収は状態異常回復の一環だわん」
「そうそう、状態異常回復の手段がこれしかないしね。アーサー! もうちょっと糸吐かせろ、まだ数が足りない!」
店長さんが割りと無茶なことを言っている。
「うるせー『帽子屋』! 攻撃力あるんだからこっちを手伝いやがれ!」
「いやいやアーサー君、生産職になに無茶なことを言ってるんだね。とりあえず、もうちょっと粘ってて」
◯[生産職を主張する『裁縫』系スキルw]
△〚裁縫は戦闘スキル……あれ?〛
∴[粘ってとは言っても、そろそろ片付きそうだね]
―― Qualuluuuooeee!
心なしか悲哀を感じるような元気のない叫び声だ。
「皆、ここで決めるぞ!」
更に一本、ボスタコの手が斬り飛ばされている。
「【剣技・エクスカリバー】!」
「【槍技・グングニル】!」
―― Guoooaaaeee!
◎[これは、やったか]
◯[それフラグ、っていいたいけど、このゲームのボス割りと素直だよね]
◆[今のところ発狂モードとか、二段階目とか聞いたことない]
「アーサーの『剣技』に『ヴァルキュリア』のクラマスの『槍技』を同時にくらったら流石に駄目だろ」
「『ヴァルキュリア』?」
「その名の通り、女性だけの攻略系クランだな。ちなみに、アーサーのとこのクランは『アーサーと愉快な仲間たち』だw」
―― エリアボスが討伐されました。
これにより、山道沿いの魔物出現率が低下します。
「勝ったにゃ! これでわん太のとこの城下町に行けるにゃ」
「あ、そうなるわん。じゃぁ、みんなでエリアボス討伐記念に宴会するかわん?」
「「「それだ!」」」
ボス周りで戦っていた人たちも一斉にこっちを振り向いた。
◯[なんという裏山]
∴[エリアボス討伐したということは移動可能?]
◆[今から向かえばワンチャン間に合ったりしないかな……]




