第40話 夏イベント7
「うーっあーっっ! ちょっちょっ、とまってーっっ!」
ボクは今、ロデオ状態で暴れまくるボスザメに振り回されています。
◯[鉤縄でボスザメの背中に取り付いたまでは良かったのに……]
▽[ああも高速に走り?泳ぎ?飛び回られると手を離したほうがあぶないよな]
「ふー、ちょっと落ち着いてきたけど、どうやって倒そうか」
ぐるぐると砂浜を周回し始めたボスザメの背中で鯉のぼりのようになりながら考える。
◎[そのまま背中に攻撃する?]
◆[とりあえず、そのロープにぶらぶらしてる状態をなんとかしないとw]
背ビレに絡めた鉤縄のロープを少しずつ手繰り寄せるようにして、なんとか背ビレまで辿り着いた。しかし、ボスザメは振り落とそうとして体を左右に揺らしてくる。
「揺れが激しいけど乗り心地は悪くないわん」
背ビレに巻き付いたロープを掴んでボスザメの背に座っている。
◯[草www]
▽[騎乗用の魔物っているのか?]
◆[走竜はたぶん魔物だな。わん太のとこでしか見たことないけど]
∈[王都にはいるみたいにゃ。城で管理されてるらしいけどにゃ]
「まあ、座っていても倒せないのでこいつを仕込んでいくわん」
取り出しましたるは何の変哲もない……少しは仕掛けのあるハンカチ。巻き付いたロープに挟んで背ビレの周りに敷き詰めていく。
◎[ハンカチ? なにするんだ?]
▽[げっ、あれってもしかして兎の時につかってたやつなのか?]
◆[何枚用意してるんだって、やっぱりそいつは使い捨てか]
「ふふ、これで準備万端。離脱しつつ攻撃をするよ!」
するするとロープを伸ばしながらボスザメから離れる。
「えーと、燃え上がる爆炎のほにゃららせーれーさん どかんといっぱつ……」
伸び切ったロープの端まで離れたタイミングで魔力を通す。
「……エクスプロー……なんちゃら!」
◯[呪文詠唱……?]
◆[いや、適当すぎるだろ!]
ボスザメの背ビレの周りが赤く光る。
―― ズガガガガガッガッガーンッ!
大きな音と爆発、そして、白煙が上がる。
『シャーーーーッ! シャァーッ、ッ、ッ』
ボスザメが失速して砂浜に滑り落ちた。
◎[うぉー、みみ、みみがー]
▽[目が、目がー]
「よっと」
爆風に飛ばされていたボクは空中で姿勢を整えて砂浜に着地した。
「おお! やったか!」
「とどめじゃー!」「そいやー!」
ちょうど、小ザメを粗方片付けたらしい親方たちもボスザメに向かって駆け出している。
◯[サメがのたうち回ってる]
▽[背ビレ、なくなってるじゃないか……]
『シャシャ シャシャーック シャーッシャーッ!』
ボスザメの眼が金色に光り、短い二本の角の周りから魔法陣が次々と浮かんだ。
「あ、みんな、散開!」
「ぬぅおーーーっ!」
「うぉっ!」「よけろーー!」
「……風盾!」
―― チュドドドドッッ!
魔法陣から水の塊に水の矢までが次々と打ち出される。
「……ウィンドシールド!」「……アースウォール!」
無秩序に広範囲にバラ撒かれる水魔法とシールド魔法が相殺して弾ける。
◆[水の弾幕……狙いを付けられてないのか]
◎[もうサメさんのライフ0よ! いやマジで瀕死じゃね?]
∴[とどめを刺すなら今だな]
もちろん、この隙を逃すほどみんな甘くはない。ボクも落ちていたハンマーをちょっと拝借してボスザメに向かう。
『しゃ~っ、しゃしゃ~っく』
「おらぁっ!」「まだまだぁー!」
親方達が弱った声を上げるボスザメを容赦なくボコっている。
「いっくよーーー!!」
助走をつけてハンマーを振り上げつつボスザメの頭上目掛けて跳ぶ。巨大なボスザメは砂浜に転がっていても頭の上まで2メートルはあるだろう。更に空を蹴りボスザメの真上へと到達した。
◯[高っ! え、今何した?]
◆[『空歩』? 二段跳びした……よね?]
落下の勢いに合わせて、更に回転を加えたハンマーをボスザメの鼻柱に叩きつけた。
―― ドゴーーッン!!
ボスザメの頭が砂浜にめり込んで……光の粒子となって霧散した。
―― エリアボスが討伐されました。
これにより、島周辺海域の魔物出現率が低下します。
また、島の海水浴場が開放されました。
なお、海水浴には水着が必要となります。
◯[はぁっ?!]
▽[ふぁぁっ、海水浴場?!]
∈[み・ず・ぎ、にゃーっ!!]
「海水浴場! これ、これが夏イベに求められていたやつだわん! ねぇ、キミもそう思うよね、ナギサくん」
ふよふよと眼の前に浮いているナギサくんを撫でる。つるつるひんやりして気持ちがいい。
『しゃぁ~、しゃぁ~っく』
❤〚『ナギサくん』?〛
※[えぇーーっ!]
◆[小ザメ?……浮いてるから、やっぱりボスザメのドロップアイテム?]
∈[なんなのにゃ、また、そんなもの拾ってどうするのにゃー!]
そうは言っても、ボスザメが消えた後には角が二本と、この角のないサメさんが浮いていたのだ。ボクは何にも悪くないと思う。
「きゅきゅっ、きゅっきゅーっ」
いつの間にかナギサくんの上に乗ったイナバくんが背中をてしてしとしている。仲は悪くなさそうだ。
「わん太殿! ドロップアイテムも回収し終わったぞ。一旦城下町まで戻ろう」
「わふわふっ」「がうっ!」
大量のドロップアイテムを抱えた親方達が戻ってきた。子狼達も何か加えてドヤ顔をしている。
「うわっ、ありがとう、大量だね。それじゃあ、城下町に戻って……凱旋パーティだわん!」
「おっしゃー!」「さすがわん太さんっす」「のむぞー!」
「よーっし、そうと決まればさっさと戻るぞー!」




