第40.5話 閑話 夏イベント4
アンメモ開発室の朝は早い。いや、サーバー監視要員も含めると24時間稼働していると表現したほうが適切だろう。
アンメモの夏イベントが開始された翌日、出社してきて報告書に目を通し始めたチーフは思わず叫びかけていた。
「はぁ?! ロコノオの町が復興完了って、そもそもロコノオってどこよ」
「どうやら、南エリアの廃墟がロコノオの町だったみたいですよ」
先に報告書を見ていたスタッフの一人が大欠伸をしながら夏イベントの舞台となっている島のマップを表示した。
今回の夏イベントの舞台は南北に長い50キロ程の島である。プレイヤーは島の中程の東側の海岸に位置する開拓村からイベントを開始した。
「イレギュラーだったのは、わん太くん達のクラン『わん太王国』ね」
開発スタッフがまとめられた報告書をめくる。
「NPC参加数も予想外ではありますが、一応想定内ではありますね」
「クラン単位での参加にしたし、現地民との交流の意味でNPC参加可能にしたけどさー、200名弱も一緒にくるなんて思わないじゃない。好感度どうなってるのよ」
NPCのパーティやクランへの参加はかなり好感度に依存する筈だ。とはいえ、その値は開発陣も把握してはいない。
「それはまだ良いのですが、イレギュラーなのは転送位置ですね。まさか南エリアに転送されるとは思ってもいなかったです」
「それって、結局原因は判明したの?」
「判明はしていますが……聞きたいですか?」
開発スタッフは心底嫌そうな顔で問い返した。
「当たり前でしょ、イレギュラーの再発防止は必要よ。できる範囲での対策はしておくべきね」
「はぁ、調査の結果、イレギュラー転送の原因となったのは、わん太くんが直前に取得した固有スキル『ランダム』が原因でした。転送時にスキルが発動して転送位置がランダムにずれたみたいです」
「げっ……」
チーフが飲んでいたコーヒーでむせそうになる。
「どこかのチーフがスキルオーブ(ランダム)って面白くない?ってベータダンジョンに組み込んでましたし……」
「いや、よりによって最初からあのオーブ出るなんて思わないし、それに、あのスキルで転移先もずれるなんてそれこそイレギュラーよ」
チーフがお遊びでいれたオーブの出現率は非常に低くプレイヤーが手に入れる可能性はほぼなかったはずだったのだ。
―― ブーッブーッ!
エリアボスが発生しました。
開発ルームの監視モニターにアラームが表示された。
「えっ!? 予想より早すぎない?」
「南エリアとの境界のエリアボスではないですね。南エリアの西側海岸です」
表示されていたマップにエリアボス出現マークが表示された。
「エリアボスが発生するには町の発展が必要だから夏イベの後半ぐらい……って、ロコノオの町とやらはついさっき復興完了してたわね……」
チーフは手に持った報告書に目を落としてため息をついた。
「南エリアの復興が進んだということは、開拓村の復興次第ですが予想より早く中間地点のエリアボスも出そうです」
「そんなことより、今はこの海岸のエリアボスね。出現予測のないやつよね?」
アンメモの舞台は惑星規模の完全オープンワールドとなっており、その管理は超高性能なAIによって行われていると言われている。
「開発チームですらエリアボスの発生を予測しかできないシステムってどうなのかしら?」
「そうは言ってもこの規模のワールド管理は人力では無理がありますし、新世代APU使用の次世代スパコン?とやらのプログラムできる人材なんてウチにはいませんよ」
監視モニターにはいつしかエリアボス戦の様子が映し出されていた……
「えっぐ……あれ魔法なの?」
「現象としては魔法に分類されます。ただ、精霊契約してるのに、あれって精霊魔法じゃないんですよね」
爆炎に包まれて砂浜に転がるボスザメが映し出されていた。
―― エリアボスが討伐されました。
これにより、島周辺海域の魔物出現率が低下します。
また、島の海水浴場が開放されました。
なお、海水浴には水着が必要となります。
「倒しちゃったね……」
「倒しましたね……」
―― エリアボス戦のMVPを選出します
プレイヤー単独討伐を確認
特別報酬を付与します……
「えぇーーっ!」
「あぁーーっ!」
「エリアボスの特別報酬の仕様ってまだ修正されてなかったの?」
「今回NPCもイベント参加予定だったので修正予定には入ってましたね……」
エリアボスの特別報酬は貢献度に応じたポイントによりランクが決まる。しかし、その貢献度の配分がプレイヤーのみを対象としていたことが先日発覚しており、修正予定に入ってはいたのだった……
「ところでチーフ、海開きもしちゃいましたよ」
「しちゃったね、ポイント交換の水着って……やっぱり、今週末の締め切りを前倒ししてもらうしかないよねぇ……」




