第39話 夏イベント6
青い空に白い雲、そして、青い海に白い砂浜。バカンスに最適だろう、目の前に浮かんだ大きなサメさえ居なければ。
「プールからはみ出そうなサイズしてるね」
意外とつぶらな瞳をしている。
◯[よく見るとホワンとしてかわいいな]
❤〚かわいい〛
◎[でかいな。浮いているのが不思議]
動きを見せないボスザメに対して、ジリジリと左右に展開しつつ間合いを詰めていく。
―― ギロリ
どこを見ているか分からなかった眼がこちらを睨んだ。
『シャーッ、シャーック!』
◎[鳴いた! サメって鳴くんだ]
◆[普通のサメはなかなった気がするけど、アンメモだし]
▽[それより、何か出てきたぞ!]
ボスザメの鳴き声に呼応するように波間からワニ?のような足をしたサメが次々這い出てきた。
「ワニじゃないよね、顔はサメだし、尻尾は……オタマジャクシ?」
サメのような何か、とりあえずは小ザメと呼ぶが、魔物達はボスザメの前に横一列に並ぶ。小ザメといっても、ボスザメと比べて小さいだけで、尻尾も入れると2メートルはある。角を槍のように突き出して並ぶ様は壮観ではあるが逃げ出したくもある。
『シャッシャーッ!』
『シャーッ!』『ワニワニ!』『シャーック!』
ボスザメの掛け声に答えてか小ザメが歯を鳴らしながら突撃してきた。
「迎え討つぞ!」
「おうよ!」「よっしゃー」「そーぉい!」
土竜族のみんなも横一列に並び、突撃してくる小ザメをハンマーで打ち返す。
◯[さめー! 面白いように飛ぶな]
△〚なんだかゲームみたいだ。いや、ゲームか〛
海に打ち戻された小ザメ達は再度陸に上ってきては突進を繰り返す。
「なんや、全然効いとらへん。回復しとるな」
海に戻るたびに回復しているのか、それとも……
「ボスザメのバフと地形効果じゃな、これは、親玉から倒さぬときりがないぞ」
隣でじっとボスザメを観察していたヒルメさんが指摘する。
▽[だから、ボスザメは動いてないのか]
◆[つまり、ボスへの攻撃と、取り巻きの排除と両方が必要]
みんながボクの方を見ている。
「え、やっぱりボクがボスザメ相手しなきゃ駄目な流れ……、うん、この秘密兵器の出番だわん」
袈裟懸けにしていた鉤縄を握りしめた。
「では、バフを掛けます」
補助魔法使い系のパーティのみんなが一斉に呪文を唱えた。
「疾き風纏いし風の精霊よ その身を風に踊りまわらん スピードアップ!」
「その力強きは土の精霊よ 大地の力その身に宿せ パワーアップ!」
足元に魔法陣が広がり、体を淡い光が包む。
「お、おぉ、おぉーっ。すごく力が出てきた気がする!」
◎[やっぱり、魔法はかっこいいな]
◯[補助魔法もやっぱりあるんだな。ってか、結局プレイヤーで魔法使いはいないの?]
∈[まだいないにゃ。そういえば、わん太の魔法の謎を追求するのを忘れてたにゃ]
「それじゃあ、ボスザメの方はまかせてわん。みんなは小ザメをお願い!」
小ザメの後ろに悠然と構えてゆらゆら浮かんでいるボスザメに向けて駆け出す……
―― ベチャッ!
数歩駆け出したところで砂に足が滑ってコケた。
「あうっ……」
「キュゥ?」
頭から飛び降りていたイナバくんが心配そうにポフポフしてくれている。
▽[コケたな]
❤〚痛そう……〛
◆[バフに体がついていかなかったか]
「いててて……、スピードアップもかかってたの忘れてたわん。これは思った以上に早くなってるね」
砂を払って立ち上がる。
「わん太さん、大丈夫っすか?」
「俺たちが道を開くんで、その間に突っ込んでください!」
土竜族の若手パーティがハンマーを持ってボクの前に陣取った。
「行くっす!」
「おー!」「うぇーぃ!」「よっしゃーっ!」
「わふっ!」「がうがう!」
土竜族に続いて子狼達も尻尾を振って突撃していく。
『ワニー!』『シャーッ!』『シャーック!』
次々と小ザメたちが左右にはね飛ばされる。みんなもバフの効果でパワーアップしているようだ。
「行くわん!」
みんなが開けてくれたボスザメへの道を転ばないように全速で突っ込んだ。




