第37話 夏イベント4
アンメモの夏イベント2日目の朝、そう、まだ2日目である。外に出ると慌ただしく朝食の準備が進んでいた。
ボクも早速配信の準備を始める。夏イベ中は基本的に常時配信モードにしておこう。それに、公式の定点カメラ配信用のカメラもあちこちに配置されているようだ。見たことのない洞窟の入り口などが映ることもあり、この場所を探せというメッセージだろう。
イナバくんが頭上にスタンバったところで配信を開始する。
「おっはよ~わ~ん! ぬいぐるみ系VTuber、猫乃わん太わん」
「きゅっきゅうー」「わふっ?」「がうがうわふっ!」
❤〚おはよーもふもふ!〛
◯[おはようわんわん]
◎[うわっ、もふもふ天国]
良い匂いのする方へ進んでいくと、パーティ『バーバニー』のみんなが朝食用の目玉焼きを焼いていた。『バーバニー』は夜兎獣人、月兎獣人など兎獣人のおねーさんで構成されたパーティだ。普段はパウリの町でバーを営業している。
「わん太くんは、片面焼き? それとも、両面焼き?」
あ、選択死しそうな問いかけな気がして、一瞬背中の毛がぞわっとした。
▽[バニーさんだと……]
∴[今から向かえば昼食には間に合いますか?]
∈[無理にゃ。南の山に入ったぐらいから魔物が強すぎて、ウチのクランも一旦引き返したにゃ]
「半熟だったらどっちでも良いわん」
玉虫色の答えを返して、両面焼きの目玉焼きをパンに挟んで頬張る。
「おいしい! ところで、この卵はどうしたわん?」
この目玉焼きに使われてる卵は普通のサイズの卵に見える。
「この付近に済んでる人が皆さんで食べてくださいって分けてくれたんですよ。あ、お礼に昨日のボアの串焼きは渡しておきました」
「そうなのかわん。付近に人が住んでたの気づいてなかったなぁ」
昨日周辺探索した時には会わなかったし、そんな報告も聞いていない気がする。
◆[村の発展具合によって、周りにNPCが増えるんじゃないか?]
◯[ありそう。わん太のとこ結構発展してるよね]
∴[定点カメラ見てると城壁出来上がって、城下町の周りの柵もほぼ完成してる]
「えっ、もうそんなに出来てるの? ちょっと誰かに聞いてみないと」
ちょうど朝ごはんを食べにきた親方を呼び止めた。
「なんじゃ、わん太殿。村の発展具合であれば、多分、町にはなっていると思うぞ。周辺の住民のいくらかは城下町の柵内への移住も希望していたからな」
「あ、わん太さん、そういえば城下町周りの魔物の分布もなぜだか変わったみたいです。アンデット系が少なくなって獣系が増えてそうです。詳しいことは斥候パーティが戻ってきたら聞いてください」
確かに色々発展しているみたいだ。
∈[メニューから夏イベの進行状況とポイントも確認できるにゃ]
◎[え、ほんとだ。開拓村はあとちょっとで村になるっぽい]
◯[ここって、『名を失った島』っていうのか]
「メニューの……、あった。んー、確かにもう町になってるわん。パウリの町の発展具合も追い抜かれてそう」
リスナーのみんなに町の発展具合を見せ……るのはやめたほうが良さそうなことが書いてある。
―― ルーダン魔王国を復興しよう
* ロコノオの町を復興しよう CLEAR
* ロコノオ城下街に発展させよう
* ……
* ????
* ???? CLEAR
うん、やっぱり、これは見せたらダメなやつだ。この島のネタバレを含みそうだし、もう少し黙っておこう。
「ここは『ロコノオの町』って言うらしいわん。それに、ボクも『名を失った島』にいるっぽくて安心したよ」
∴[よっしゃ! 俺もロコノオに向かうぜ]
∈[それなら南の山道を抜けるのが良さそうだけど、開拓村が村になるのを待つのが得策にゃ]
「開拓村から南ってことは、こっちの東の山道が北東に伸びてるらしいからそこかなぁ?」
北と西は完全に山で、北西方向と南は海に抜けていそうと報告があった。詳細は調査に出ている斥候パーティ待ちだ。
「ところで、開拓村の海は泳げるの?」
◯[残念ながらまだだね]
◆[たぶん、村の発展が条件だと思うけど、海はまだ危険だから近寄るなってギルドがアナウンスしてた]
◎[海はサメが出るらしいよ]
「サメいるんだ」
「きゅきゅっきゅう!」
「お、わん太達、ここに居ったか。サメ退治に行くぞ」
「サメ!」
ヒルメさんがタイミング良く現れた。
「北の方の海岸だが、エリアボスが発生してるのが確認できたらしい。おそらく巨大なサメだろう。奴らは空を飛ぶから面倒なのじゃ」
「エリアボスって、えっ、今サメが空を飛ぶって言った?」
「当然。空を飛んでこそサメじゃ」
◎[フライングシャークきたー!]
◆[もしかして、開拓村のサメも飛んでくるのか?!]
▽[サメ、飛ぶのかー。なんか楽しみになってきたw]
「ほれ、さっさと行くぞ! ヴァン、フェン、急ぐのじゃ」
「わふっ!」「がうっ!」
「サメ、サメって飛ぶんだぁ……」
青く広がる空の下、入道雲の辺りを飛び回るサメを幻視した。




