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【VTuber】猫乃わん太 through Unmemory World Online【ぬいぐるみ系】  作者: 水城みつは
第一章 アンメモへようこそ!

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第35.5話 閑話 夏イベント2

 夏の日差しがジリジリと白い砂浜を熱していた。


「おおっ」「海だー」「え、海水浴場?」

 転移魔法陣が光り、次々とプレイヤーが転移されてくる。


 砂浜には巨大なやぐらが設置されており、派手な横断幕がかかげられていた。


―― 『第一回 夏イベント サマーバケーション in 開拓村』 ――


「で、今回はチシャのイチオシのわんこも参加するわけか」

「あ、私もそのわんこみてみないなー」

「今転移したから、そろそろ現れるんじゃ……えーー!!」

 配信画面を表示して見ていた猫獣人が素っ頓狂な声を上げた。

「チシャちゃん、どうしたの?」

「わん太くんたち、多分ここじゃないとこに転移してるのにゃ」

 配信画面を怪訝な顔をしている二人に見えるように広げて映す。


 山に囲まれた城跡に、多くのもふもふ達。南の方には大きな入道雲が映し出されていた。

「結構離れてはいそうだけど、全く違う場所ってわけではなさそうだな。まあ、南西に二、三十キロってところか?」

 砂浜に不釣り合いなシルクハットを被った若い男性が画面を覗き込んで言った。

「えぇっ、店長クラマス、どうしてそんなことわかるんですか? もしかしてストーカー……」

 すっと男性から離れて兎獣人の女性の後ろに隠れる。

「おい、誰がストーカーだ、ほら、その入道雲、あっちに見えてるのとほぼ同じだろ。つまり、全く違うところではない。後は低いところの雲の見え方の差とかからの推測だな」

「なるほど、少なくともあの山の向こうではあるわけだにゃ」

「ということは、ウチのクランは南を目指すことになりそうね」

 情報クラン『ジャバウォック』の夏イベントでの方針は決まった。


―― ピコン!

   『第一回 夏イベント サマーバケーション in 開拓村

    公式生放送を開始します』


「よっしゃー」「はじまった」

「きたー」


『アンメモ公式生放送、はっじまるよー』


 櫓の上に現れたMCが大きく手を振る。


 そのやぐらの下、アンメモ開発陣は慌てふためいていた。

「……えっ、ここ以外のところに転移された一団がいる? いや、何で?」

 イベント状況をモニターしていたチーフはあってはならないプレイヤー分布を発見してしまった。

「とりあえず、転移先モニターして、画面だして……わん太くん?」

「南エリアですね、あそこの開放はまだまだ先の予定ですよ……」

「原因は開発室の方でチェック、監視をしてもらって、とりあえず、このメモをMCに表示っと」


 やぐらの上のMCが一瞬固まってこちらを見る。

 それを確認してチーフは南エリアと画面を繋いだ。


 空中に更にもう一枚の仮想ディスプレイが展開され、南エリアの様子が大写しになる。


「どこだ?」「ここじゃないな、遺跡っぽい」「あれは、見たことない獣人?」

「もふもふ」「あれ、わん太か?」「バニーなお姉さんだと……」


 プレイヤーがモニターを見てざわついた。見たことのない獣人系の種族が手を振っているのだ。


『お、ちゃんと見えたようだね。それでは、第一回 夏イベント サマーバケーション in 開拓村、はっじまるよー』

 夏イベントの説明が始まった。


「チーフ、やっぱりこのままではポイントランキング無理がありますよ」

「だよねー、ちょっと上に許可取るけど、ランキング廃止で調整させて」

 南エリアに転送されたクラン『わん太王国』。既に唯一となったランダムスタートプレイヤーのクランだ。

 現在のプレイヤーとは隔離されたエリアでゲームプレイが行われていることもあり、開発側でも注目されている。

「まったく、まさかNPCだけで200人弱もイベント参加してくるとは想定外にも程がある……」


『それでは、第一回 夏イベント サマーバケーション in 開拓村、スタートです』


 開拓村には幾つかの掘っ立て小屋があるだけで、とてもプレイヤー全員に対応できる施設はない。

「建設系のクランは集まってくれー!」

 はじまりの街でも有名な建設系トップクランが早速プレイヤーの寝床を用意すべく活動を始めている。


「帽子屋、お前らはどう動くんだ?」

 どこの格闘家かというような筋肉を誇示したプレイヤーが夏に合わないシルクハットを被った男性に話しかけている。

「ジャバウォックは南を目指すよ。たぶん、あのもふもふ達が南の山の先だしね」

 情報クラン『ジャバウォック』のギルマス、通称、『帽子屋』は南へ向かう。

「なら、俺たちは北へ向かうかー」

 攻略クランの一角、『ころっせお』は北へ向かうことにした。


「ところでチーフ? 夏イベントのプレイヤー移動可能エリア予想ですけど、南側ってどうなるんですかね」

「あっ……、夏休み明け対応じゃ駄目かな……」


 アンメモ初の夏イベントは始まったばかりである――


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