第35話 夏イベント2
「おわっと」
転移が終わってちょっとふらつく。
「すげー」「広いな、あっちは山か」「ここは遺跡?」
転移してきたみんなが口々に歓声を上げた。
夏の暑い日差しと白い入道雲が見える。ここのところ涼しくなってきたパウリの町とは大違いだ。
「ここが夏イベントとやらの会場の開拓村かえ?」
「これは、開拓村というよりは城跡じゃねーかニャ」
辺りを見回すと、一緒に転移してきたパウリの町のみんなの姿が見える。
遠くはあるが周りは山に囲まれた盆地っぽい。また、南の方は山がなく抜けて何処かへ向かえそうでもある。
―― ピコン!
『第一回 夏イベント サマーバケーション in 開拓村
公式生放送を開始します』
『アンメモ公式生放送、はっじまるよー』
派手に飾られた大きな櫓の上でMCが手を振っている。背後には白い砂浜の広がる海岸が見えた。
カメラが向きを変え、櫓の下で手を振っている大勢のプレイヤーを映し出す。
「え?」
◇〚あれ?〛
△〚おや?〛
◆[わん太達、もしかして違うところにいる?]
「こっちに砂浜は見えないよね。それに町の住人以外たぶん居ないわん。これは、転移の時にスキルが悪さをしたかも?」
そういえば、転移の瞬間、スキル『ランダム』の発動アナウンスが聞こえていた。
生配信の画面の中では櫓の上のMCが宙を見つめて慌てたような表情を見せている。
―― ブオンッ!
『あーあー、聞こえるかなー?』
突然頭上から大きな声が聞こえる。
「なんじゃこれは?! 神の姿か?」
「おお、空中に神の姿が見えるニャ!」
空中に仮想ディスプレイが展開され、櫓の上のMCの姿が映し出されていた。
カメラが切り替わり、上空を見上げているみんなの姿が映し出される。
「おおっ」「あれ、俺か?」「すげーっ」
◆[こっちでも見えた]
◎[場所どこ? すくなくともこっちの海岸じゃないよね]
みんなの方にもこっちの状況が映し出されたらしい。
『お、ちゃんと見えたようだね。それでは、第一回 夏イベント サマーバケーション in 開拓村、はっじまるよー』
軽快なオープニングテーマと共に今度こそ本当に公式生放送が開始した。
『このイベントではプレイヤーは建設中の開拓村……などの発展に手を貸してもらいます』
1.周囲から木材などの資材を集め、村を発展させる。
2.時折村を襲ってくる魔物を撃退する。
3.周辺のどこかにあるダンジョンを探索する。
『基本的にはこれらのミッションをこなしつつ、サマーバケーションを楽しんでください。なお、このイベントエリア内で通常通りログアウト可能ですが、はじまりの街などの通常エリアに戻ってしまうとこのイベントエリアに復帰することができませんので、基本的に通常エリアには戻らないでください』
「やることはこれまでのパウリの町と一緒だニャ」
「予行練習としてもちょうと良いな。がっつりでかい城下町つくるぞ」
『最終的に貢献度などによるポイントでランキングを決定します。なお、今回のランキングはクラン、パーティ単位で集計を行いま……え、何?』
◯[クラン単位はどことは言わないが、人数多すぎるとこないか?]
∈[今のとこ最前線の攻略クランでも50人は超えてないにゃ]
▽[わん太のとこ、100を軽く超えてそうだし……]
『あ、すみません。今回のイベントはサマーバケーションを楽しんでもらいたいとのことで、ポイントランキングはないそうです。なお、イベントの途中で手に入れられるポイントを非売品のアイテムと交換できますので楽しみにしてください』
◎[やっぱりw]
◆[これは、予想外の人数でランキング制やめたな]
▽[わん太のとこの土木部隊、もう道路を作り始めてないか?]
城跡を上空から映している巨大モニターには既に作業を始めているみんなの姿がシミュレーションゲームさながらに見えていた。
『それでは、第一回 夏イベント サマーバケーション in 開拓村、スタートです』
フライング気味に作業は開始されていたが、アンメモの夏イベントが始まった。
◆[よし、わん太に負けずに開発するか]
∈[ウチのクランはわん太のとこまで向かってみるにゃ]
▽[え、まじ? オレもそっちにいくかなー]
「ほんと! みんなが来てくれると嬉しいわん。こっちに着くまでに寝るとこぐらいは用意するわん」
これは頑張って城跡を城下町ぐらいまでは開発するしかない。
そんなやり取りの後、ボクはなぜかクランのみんなに囲まれていた。
「さて、わん太殿、インベントリにある資材を全部出してもらおうか」
「え、あ、これは、何かあった時の資材であって……」
今、ボクは親方にインベントリの資材をゆすられているのだ。
「何を言っているわん太よ、今がその何かあったときじゃろて。どうせ何スタックも溜め込んでおるんだろう?」
「わふわふ」「わっふわっふ」
「ほれ、この前も山の木材を嬉々として溜め込んでたと言ってるぞ」
く、子狼達が裏切って告げ口を……
「むぅ、仕方ないから1スタックずつは提供するわん」
仕方なく、仕方なく、溜め込んでいた木材✕999、石材✕999等を出していく……
「わん太殿、とりあえず、場所もないので半分でいいわい。しかし、これだけあれば資材確保に行く必要がないかもしれん……」
言われた通り出したというのに、何故か呆れたような目で見られているのは理不尽だと思う……




