第34話 夏イベント1
Unmemory World Onlineではシステム的に配信機能がサポートされている。なお、配信していないプレイヤーについてもドライブレコーダー的に録画されていると利用規約に書いてあったりもする。
そんな配信機能であるが、ログイン前のロビーでも使用できる。つまり、メンテナンス明けを待っている状態からでも配信できるのである。
「おっはよ~わ~ん、ぬいぐるみ系VTuber、猫乃わん太わん」
◯[おはよー、めっちゃ早くない? メンテナンス終わるまでまだあるよ?]
△〚おはようわーん〛
❤〚おはー、今日はイベント?〛
「そうそう、メンテナンス後の夏イベントが楽しみで昨日はあんまり寝れなかったわん」
アンメモはVRMMOである。そう、MMOとはめっちゃ大きい規模でめっちゃ多いプレイヤーがオンライン参加するゲームなのである。それなのに、今まで別なプレイヤーとはすれ違ったことすらなかったのだ。それがこのイベントでは同じ場所でイベント参加できるとなれば楽しみ以外ない。
▽[遠足前の子犬状態で草]
∈[ほんと、もうすぐ始まるわん太を探せイベントが楽しみにゃ]
◆[デッド・オア・アライブってやつだな。掲示板に貼られてた]
「えーっ、なにそれ怖い。このゲームPvPやPKはないよね? あ、PvPはプレイヤー対プレイヤーの対人戦のことで、PKはプレイヤーキラーと言ってプレイヤーに攻撃したり、まあ、悪人側のロールプレイをしたりすることわん」
❤〚なるほど、ゲーム用語〛
◯[わん太は配信してるけど、ツチノコ扱いというか、存在が疑われているw]
◆[バザーに商品が流れたから、運営の用意したNPCとも言われてたな]
ボクもアンメモが本当にMMOなのか疑いたくなってきた。
―― メンテナンスが終了しました。
アップデート、修正内容についてはリリースノートを御覧ください。
◯[よし、メンテナンスしゅうりょー]
∈[ログインするにゃー]
◆[夏イベ開始は1時間後か]
「さっそく、ボクもログインするわん」
ログインボタンを押してアンメモに入る。
―― Unmemory World Online へようこそ
「きゅっきゅー!」
「わふっ」「わふわふ」
ログインした途端、もふもふに埋もれていた。
「イナバくん、それに、フェンとヴァン?! なんでここに?」
前回はダンジョン村(仮)の宿屋でログアウトしたはずだ。子狼達も一旦パウリの町に戻っていたと思う。
「わうっ!」「がうがう」
二匹に引っ張られて宿屋を出た。
「お、やっと起きてきたのかえ」
「わん太殿、時間がないぞ、とっととクラン加入許可を出すのだ」
―― パーティ『土竜建設』からクラン加入のリクエストがあります。
許可しますか?
―― パーティ「バーバニー」からクラン加入のリクエストがあります。
許可しますか?
―― ……
次から次にクラン加入リクエストがくる。
「え、なに、とりあえず、みんな許可すれば良い?」
◯[わん太、大人気。って何が起こってる?]
◆[リリースノートによるとパーティ、クランメンバーであればNPCも夏イベントに参加できるみたいだ]
∈[うにゃ? NPCを仲間にできるのも初耳にゃ]
延々と続くクラン参加申請をポチポチと許可していく。ちなみにヒルメさんと双子の子狼のフェンとヴァンはパーティメンバーとなっている。
「えーと、大体追加し終えたかな。まだ参加してない人いますかー」
宿屋前の広場は出立準備を整えたパーティで溢れていた。クラン参加も二十以上行ったことから百人以上はいると思われる。
「なんでこんなにいっぱい集まってるわん?」
「聞いてないのか? ギルドに依頼があって神託により急遽開拓を行う必要があるということで、プレイヤーとパーティかクランを組めば依頼に参加できるらしい」
「神託と言われれば参加しないわけにもいかないからのう。特にパウリの町の住人は開拓は慣れているからな」
「安心しろ、くじ引きで半分は残してきたからな。まあ、外れた奴らは悔しがっていたがな」
がはがはと親方は笑っているが、それにしても多すぎではないだろうか。
◎[もふもふ! わん太と共に、もふもふ軍団がイベント参加かー]
▽[はじまりの街のNPCも多少は参加しそうだぞ、今ギルドでパーティ募集してるの見かけた]
◆[一旦イベントに参加すると元の場所にはイベント終了まで戻れないから注意な]
どうやらNPCを連れていけるのは最初だけみたいだ。再度未参加者がいないか点呼をとってもらう。
『Unmemory World Online ワールドイベント開催のお知らせ
第一回 夏イベント サマーバケーション in 開拓村 を開催します――』
アナウンスとともに足元に魔法陣が広がる。おそらくは転移用の魔法陣だろう。
光る魔法陣はゆっくりと回りながら広場全体を包み込んだ。
ふわりという浮遊感が生じて転移が開始される。
―― スキル『ランダム』が発動しました……
そんな不吉なアナウンスが流れる中、下降する感覚と共に転移が終了した。




