第29話 Unmemory Dungeon2
赤く丸いポヨポヨした物体がこちらに向かってくる。
◆[スライムだね。赤いのは初めて見るけど]
◯[こっちで見かけるのは青いけど、強さ違ったりするかな]
「第一魔物発見! ますは鑑定からだわん」
じっと見つめて鑑定を行う。
不確定名:青い不定形
説明:鑑定されていない不定形の魔物
ダンジョン内で一意な名称を設定することが出来ます。
「えーっ!」
少しそんな予感はしていたが、通常『名称』の部分が『不確定名』になっている。
▽[これは……ローグ系ダンジョンで間違いない]
◎[赤いのに、『青い不定形』ってどういうこと?]
◆[不確定名はその魔物にランダムでつけられた適当な名称で特に意味はない]
「このままだと、次にこの赤いポヨポヨにもう一回あっても、『青い不定形』と表示されるはずわん。なので、わかりやすい別な名前を付けられるはず……できた!」
名称:赤いポヨポヨ
説明:赤い色をした丸い形のスライム
ポヨンポヨンと跳ねて近づいてくる。
食べると美味しい……といいな
∈[いやいや、普通にスライムって書いたらいいにゃ]
◯[ここで設定した名称ってダンジョン外でも反映されるのかな]
◆[赤いスライムは発見されてないから確認できないけど、反映されそうだよな……]
―― ポヨンポヨン
「それでは、ポヨポヨ退治だわん。って武器がないんだった。インベントリも使用不可になってるから、とりあえず、殴ってみるわん」
―― ポヨンポヨンポヨーン
近づいてきたポヨポヨがボク目掛けて飛び上がる。とはいえ、ゆっくりとした動作なので軽く横へ避け、落ちてきたところを殴りつけた。
―― ボフッ
壁にぶつかったポヨポヨはそのまま光の粒子となって消える。
◯[あ、何かドロップした]
◆[ポーションぽい。当たりかな?]
後には小瓶に入った透明な液体が残されていた。
不確定名:黄色い飲み物
説明:鑑定されていない瓶に入った飲み物
ダンジョン内で一意な名称を設定することが出来ます。
「情報量皆無だね。一応飲み物って書いてはあるわん」
▽[多分、毒薬も飲み物]
◯[ますは飲んでみて効果を確認?]
「いや、こんなところでは飲まないからね」
いきなり飲んで効果を確かめるのはリスクが大きい。仮に回復系のポーションだとするなら、HPが減ってから飲んだ方がお得だ。
「そういえば、アンメモでポーションって飲むタイプ、それとも、かけるタイプ?」
◆[基本的に経口、飲むタイプだね。一応傷口にかけても消毒ぐらいにはなるらしいけど傷が塞がったりはしない]
∈[飲むことによって体の代謝を活性化とか魔力がどうこうとか言われてるにゃ]
◎[よくわからんが飲めば良いことはわかった]
小瓶を振って透かして見るが特に変わった様子もない。透明で水みたいだ。
「そういえば、インベントリも使用不可なんだよねー、って入るわん」
メニュー画面をあれこれいじって少しわかってきた。
▽[おーい、わん太ーフリーズ?]
◯[手に持ってた小瓶が消えたからインベントリは使えたのかな]
◆[何かわかったのなら説明お願い]
「あ、ごめんごめん。とりあえず、ダンジョンパネルがインベントリの代わりにもなるみたい」
六角形のマスが中央から配置されスキルをそのマスに設定できると思われるダンジョンパネル。どうやら、スキルの代わりにアイテムも格納できるみたいだ。
◯[スキルパネルとインベントリが一体化したのがダンジョンパネルであると]
◆[アイテム格納でもMPの最大値は減るのか……実質アイテムを持てる数に制限有りだな]
△〚真ん中のパネルだけ少し枠が違うけど、何かあるの?〛
従来のスキルパネルでは真ん中は使用できなかったが、このダンジョンパネルではアイテムを格納できるようになっていた。
「そう、この真ん中のパネル! なんと、アイテム格納可能! そして、ここに格納したアイテムはいかなる場合でも持って帰れるらしいんだわん」
◎[おー!]
▽[いかなる場合でもってことはそれ以外では持って帰れないこともあるとw]
◆[どう考えても死に戻り前提な設計だな]
「ですよねー、まぁ、1つは必ず持って帰れるとポジティブに考えていくわん」
しかし、この『Unmemory Dungeon』は結構難易度高めのローグ系な気がしてきた。
「きゅっ!」
イナバくんが何かを見つけた。
△〚宝箱!〛
▽[木の宝箱か、宝箱にもランクがありそうだな]
下り坂の突き当たりの曲がり角、その窪みに少し隠れるようにして木の宝箱は設置してあった。
「宝箱自体はパネルに入りそうにないね」
そこまで重そうにも思えないが、動く気配もないのでそういうものなのだろう。
◯[さすわんなベータテスター]
▽[壁抜けとかも試してまわる?]
「そういえば、このゲームの物理演算的な挙動ってリアル過ぎてバグりそうな余地もないんだよね。むしろ、この動かなそうな宝箱を見てやっぱりゲームなんだって思ったぐらいわん」
あ、げしげしと宝箱を蹴っていたら蓋が開いてしまった。中には一本の棒が入っていた。
不確定名:錆びた棒
説明:鑑定されていない武器の一種
ダンジョン内で一意な名称を設定することが出来ます。
「いや、錆びてないし、どう見ても新しいめん棒だわん!」
両端が細く握りやすくなった太い棒を宝箱から取り出して鑑定した。
❤〚西洋式のめん棒かな。お菓子作るのにちょうどかな〛
◯[武器扱い? わん太にはサイズ的に良さそう]
◎[あ、宝箱消えた]
めん棒を取り出された宝箱はすうっと消えてしまった。
「この窪み部分も別に仕掛けとかおかしいところはなさそうだわん」
△〚疑り深いわんこw〛
◯[歩く度に剣を振って罠を確認するタイプかな]
「罠! 今の宝箱には罠はなかったけど、やっぱり床には罠があったりするかな? ほら、ここみたいな部屋への入り口とか」
坂になった通路をちょっとくだった先にあった部屋の入り口で警戒しつつ床をつつく。
◆[流石にそこまで警戒しなくても……]
◎[浅い階層だし、たぶんチュートリアルだと……いいね]
「はなから不確定名満載の運営に気を許しちゃいけないと思うわん」
そおっと覗くと部屋の中にはぼよぼよ跳ねている魔物が2匹。中央の床に何かあるように見える。
「イナバくん、右のポヨポヨはお願いするわん」
キュッと鳴いて頭の上から飛び降りたイナバくんとともに魔物に向かって部屋の中へ突撃した……




