第28話 Unmemory Dungeon1
薄い膜を抜けた先は薄明るいダンジョンの通路だった。
「あれ? 入り口はどこ行った?」
前方には長く伸びた通路。後方も長く伸びた通路。通路の幅は2メートル程あり、左右の壁を確認するも特に不審な点はない。
「ふうっ、こんな時は落ち着いて……おはようわ~ん、ぬいぐるみ系VTuber、猫乃わん太わん。今日はアンメモ内では初のダンジョン配信を行いたいと思いますわん」
「きゅっきゅう?」
◯[唐突なダンジョン配信宣言は草w]
▽[一応坑道ダンジョンあった気がするがあれはカウントしないでも良いか]
◆[これは転移系の入り口だったか。出口探さないといけないね]
「ともかく通路に止まっていてもしかたないので、前に進もうと思うわん!」
前と後ろ、どっちに進むかと考えるのも面倒なので前に進む。今のところ魔物の姿も見えないのでピクニック気分だ。
「きゅー、きゅっきゅっきゅー」
「イナバくんもご機嫌だね」
少し歩いたところで行き止まりっぽい小さな部屋に出た。
◎[部屋だね。特に罠もなさそう?]
△〚1階から罠だらけのダンジョンはいやだなー〛
∈[右の方に通路っぽいのが見えるけど、大丈夫かにゃ?]
よく見ると上の方、2メートルぐらいの高さに先へと続く通路が見えた。
「いきなりの3Dマップとはアンメモ運営さん難易度上げてきてる?」
❤〚わん太くん、お手々届く?〛
◎[ぎりぎり駄目っぽい高さなのが良いw]
▽[わん太ちいさいからなぁ、普通なら届くだろうけどw]
むむ、これでも1メートルぐらいはあって現実の2、3倍はあるのだ。
「まあまあ、こんな時こそ神スキルの出番だわん」
通路を見上げる位置まで移動して……
「『浮遊』!」
「きゅっきゅっ!」
◯[?]
◎[?]
▽[浮いてない?]
「あれ? イナバくんちょっと降りててね」
イナバくんを頭の上から下ろして床に置く。
「『浮遊』!」
「きゅっきゅっ?」
◎[浮かないね]
▽[変化なし?]
◆[スキルが進化とか変化して効果変わったりした?]
「常時3mm浮いてるのは発動してる気がするんだけど……」
ステータスメニューを開いて……目をパチパチ、2度見、3度見する。
◯[どした?]
△〚わん太フリーズした?〛
「スキルがなくなってる?!」
とりあえず、ステータス画面をみんなに見えるようにする。
◯[あれ、ほんとにスキルパネルが空だ]
◎[スキルどこいった?]
通常、スキルパネルは六角形のマスが中央から配置されており、取得したスキルをそのマスに設定することで有効となる。そのマスが何も設定されていない状態になっているのだ。
◆[よく見たら、それスキルパネルじゃなくて『ダンジョンパネル』って書いてあるな]
▽[横にスライドで切り替えられそうなマークも左右にある]
確かに切り替えられそうだ。いきなり空っぽのパネルだったので焦っていて気づかなかった。
「ほんとだ、びっくりしたよ。とりあえず、スライドさせて……あ、通常のスキルパネルあったけど、『ダンジョン内では使用できません』ってあるわん」
◯[使用できない、とは?]
▽[つまり、ダンジョン内では別のスキル構成というか、リセット状態?]
「このダンジョン内専用のステータスっぽいわん。『ダンジョンステータス』もあって、こっちもレベル1相当になってる。独立したローグ系ダンジョン風のコンテンツなのかなぁ?」
◇〚ローグ系と仮定すると入り口がなくなってるのもわかるな〛
∈[ところでローグ系ってなんにゃ?]
◆[人によってこだわる部分が違うから定義を持ち出すと戦争になるかもw]
「今わかってる範囲で、ダンジョン前のランキングが1つ目だわん。これがあるってことはこのダンジョンに何度も挑ませる前提ってこととある程度死に戻りが想定されているという現時点で絶望的な事実だわん」
できればどこかで安全に中断、もしくは戻れる手段を提供してて欲しいところだ。
「2つ目はダンジョンへのアイテムの持ち込み禁止や入るたびにレベルやステータスがリセットされるってことかな。まあ、これは次回入る時に今回分が持ち越されるかで難易度も変わると思うわん」
しかし、ゲーム内に別なゲーム要素を持ち込むのは賛否両論、諸刃の剣だと思う。
◇〚後は大きいところでマップのランダム生成があるけど、これは次回じゃないとわからないな〛
他にも色々あるとは思うが、アンメモ運営だとオリジナル寄りである意味鬼畜なローグ系ダンジョンな気がしてならない。
「このシステムの手探り感どうにかならないのかなぁ。あ、ちなみに『?』ボタンも発見したけど、押したら『申し訳ありません。只今製作中です。実装をお待ち下さい』とか出てたことをお伝えしておきますわん」
◯[www草も生えない]
◎[β以前のα版じゃないかwww]
「ともかく、まずはこの上に見える通路に入ろうか。イナバくん、お願いできる?」
「きゅっ、きゅっ、きゅっきゅっー!」
地面に魔法陣が浮かび、土が盛り上がる。
「ありがとう、イナバくん。これぐらいで届くわん」
ぴょんとイナバくんと一緒に通路に入った。
∈[え、今の魔法かにゃ? うさぎが魔法を使ったにゃ!]
◯[イナバくんは精霊だったよね、魔法使えておかしくないのか……?]
◆[このダンジョン、契約精霊の持ち込みは可能なのって良いのか?]
「イナバくん連れてきちゃ駄目っていうなら、ボクは断固抗議するわん」
「きゅっきゅー」
通路は若干暗く、また、少し下り坂になっていた。
「そろそろ魔物が出てもおかしくはないわん」
通路の先で何かが動くのが見えた。
―― ポヨンポヨン




