第115話 城塞都市トゥアルア
「そーいっと。やった、鶏肉わん」
奇異鳥切で集まってくるキウイたちを次々と一刀両断にしてはドロップした鶏肉を荷車に放り込む。
インベントリの中にも入れているが、体感で九割以上ドロップするのでみんなのご飯用にもいっぱい提供しているのだ。
「ちょ、ちょっとわん太さん! ちゃんと分けて入れてくださいっす。わん太さんの鶏肉、めっちゃ辛いのがあるんすよぉっ!!」
昨日、一昨日とボクが提供した鶏肉、それもハバネロ味に当たった焙火くんが涙目で分別している。
◎[淡々と角兎とキウイを狩っているチャンネルはここですか?]
◯[www結局昨日は広い平原をただただ狩りをしながら進むだけで終わったからな]
∴[わん太と麻結さん、クレスさんの参戦で進行速度自体はかなり早くなった]
麻結さんの鉞術とクレスさんのスモー術の免許皆伝というのも嘘ではないらしく、キャンベルさん以外の模擬戦を挑んだ騎士団員は二人に転がされていた。
そう、実は焙火くんはこのクマノ勇者国の朱鳥人族の第三王子で、キャンベルさん達は護衛に着いて来た第三騎士団だったのだ。
クマノ勇者国における国王は代々朱鳥人族のフェニック王家と碧鳥人族のリヴァイア王家から交互に選出されているらしい。
そして、そのフェニック王家からの国王選出時期が近く、焙火くんの二人の兄たちがその座を巡って争っており、そんな中にボクらが行くのはまずいと言うのがキャンベルさんたち第三騎士団の判断だった。
「焙火くんは王様にならないのかわん?」
ふと焙火くんに尋ねてみたらめんどくさそうな感じでこう答えてくれた。
「うーん、オレは兄貴達に押し付けられた辺境だけで手一杯っす。あ、オレが国王になったらソッコーわん太さんに王位を譲るっす」
このクマノ勇者国の南側三分の一は辺境と呼ばれ、さらに西側は魔境と呼ばれる未開拓地帯になっている。
今向かっている『トゥアルアの街』はその魔境開拓の最前線でもあり、年に何度か魔境からあふれるモンスターに対処するため大きな城壁に囲まれていることから『城塞都市トゥアルア』と呼ばれているそうだ。
「わん太様! 壁、壁が見えてきました!」
「クレス、あれは城壁です。それにしても大きいですね、まだ距離はあるのでしょう?」
前の方から、はしゃぐクレスさんの声が聞こえた。
「このペースなら後二時間はかからないでしょうな。全員、後もう一踏ん張りだ、気合を入れていくぞ!」
「はっ!」「了解です!」「うぃーっす」
キャンベルさんの号令に散開していた騎士団員が隊列を組んで進む。
街が近くなってきてポツポツと民家や集落等も増えてきたおかげでボクめがけて集まってくる角兎とキウイも減ってきた。
近づくにつれ城壁の高さ、大きさが際立ってくる。
∴[何あの城壁、五階建て、二十メートルぐらいはあるんじゃない?]
◯[これって街全体を囲ってるのかな。ずっと続いて見えるんだが……]
▽[『城塞都市トゥアルア』の名は伊達じゃないってことか、人も多そう]
広い門から覗く街なかは大勢のペンギンさん、それに、幾人かの人族や獣人族も見えた。
門の前にはキャンベルさんたちと同じマントを着けたペンギンさんたちが整列して待ち構えていた。
「焙火殿下、おかえりなさい」
「ホイホ王子ー!」「若、お勤めご苦労さまです!」
騎士団員だけでなく街の人からも声がかかっている。
「焙火くん人気者だわん」
「焙火さんは良い統治者なのですね。街の人に慕われているのがよくわかります」
「あのキラキラっぷりと三下口調のギャップにやられる……のかも?」
確かに焙火くんは喋らなければイケメン、いや、イケペンギンの王子様っぽい。
王子様エフェクトとかのパッシブスキルを持っていると言われても納得できる雰囲気を醸し出している。
「団長、任務お疲れ様です。それで『トゥアタヒ村』の様子はどうでしたか? 葵様の神託によれば道が開かれると……」
キャンベルさんに話しかけてきた片眼鏡のペンギンさんと目が合った。
「あー、こちらは犬獣人のわん太殿に碧鳥人族の麻結さんにクレスさんだ。ちょっとした縁があってトゥアタヒ村で保護した。詳しいことは城で話すが、若の客人として扱ってくれ」
何か言いかけた片眼鏡のペンギンさんを遮るようにキャンベルさんがボクらを紹介する。
「……第三騎士団副団長、オークラです。以後お見知りおきください」
オークラさんはぴしっと一礼をすると足早に引き返していった。
「オークラは真面目すぎるくらいっすけど、頼りになるっす。キャンベルは脳筋寄りっすからオークラがいないと騎士団も回らないっす」
街の人々に手を振りながら焙火くんが横に並ぶ。
「とりあえず、わん太さん達のことをどうするかは城についたらオークラも交えて話し合うとして……、ようこそ『城塞都市トゥアルア』っす!」
キラキラとエフェクトが飛ぶような笑顔で焙火くんが微笑んだ。




