第114話 トゥアルアの街へ
澄み渡った青い空に広々と続く草原。
「天気も良いし、気候もおだやかで気持ちがいいわん」
ボクたちが転移した『トゥアタヒ村』から辺境の地で一番大きな『トゥアルアの街』までは徒歩で二、三日かかるらしい。
昨日の段階では道中も街道沿いであれば特に危険はないと聞いていた。
▽[わん太だけ見てるとのんびりだが、周囲が騒がしいな]
◎[いやいやいや、そこは戦場ですか?]
∪[ワラワラとよってくるキウィと角兎がタワーディフェンスゲームっぽいw]
そう、ボクらは戦っていないが朱鳥人族のペンギンさんたちは周囲から次々と集まってくるキウィと角兎を倒しながら進んでいる。
「私達、本当に何もしなくて良いんでしょうか? 苦戦はしていないみたいですけど、こうもひっきりなしにモンスターが迫ってくるとなると……」
「お嬢様、キウィ達がこんなに集まって攻撃してくるなんて、このクマノ勇者国のキウィは好戦的なんですかね」
ボクと同じく戦闘に参加していない麻結さんとクレスさんもキョロキョロとまわりを見ましながら居心地が悪そうにしている。
「キウィも角兎も普段はおとなしいモンスターです。よっぽどのことがないと向こうからは襲ってこないのですが……」
「麻結さん達がいることでモンスター達も興奮してるに違いないっす」
◯[……あぁ]
▽[あーあ、これは誰かさんのせいですねぇ]
◎[え、どういうこと?]
「わん太様、これはどういうことなのでしょう?」
リスナーのコメントに麻結さんたちが首をかしげる。
「あー、うん、多分ボクのせいわん。ボクの称号に『兎の殲滅者』と『キウイの怨敵』があるわん。それぞれ兎とキウイ系モンスターのヘイトを集めやすくなるんだわん」
天敵系の称号はその系統のモンスターに対してのダメージアップが付くが、その分ヘイトもアップする称号だ。
「称号ですか、しかも二つも! さすがは勇者様です」
「ところでキャンベル、称号が二つってすごいっすか?」
周囲の見回りを部下に任せてこっちに戻ってきてたキャンベルさんと焙火くんがボクの称号に驚いている。
「若様、称号とは天がその人物を認めた結果付けられるものなのです。建国王ベアゴロー様も勇者の称号を持っていたと伝えられています。しかし、この島では精霊様の減少に伴い称号持ちもいなくなっていったと聞きます」
どうやらベアゴローさんは名実共に勇者だったらしい。
ボクはシャベルさんを抜いただけだがら勇者と言えるかは微妙なとこだろう。
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称号:ネコノ勇者
説明:聖剣シャベル・スコップに認められし勇者。
転移ポータル管理者権限を有する。
土系モンスターへのダメージアップ。
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念の為こっそりとメニューの称号欄を確認して……そっと閉じる。
「あの、こちらの島でも精霊様はいらっしゃらないのですか? 私達の島では『大厄災』後から精霊様が減り、『天変地異』で島を完全に島を去ったと言われているのですが……」
「こっちの島でも同じっす。ベアゴローさんが来る前の『大異変』で精霊がいなくなったって習ったっす」
∪[ちょこちょこ話題にでてたけど『大厄災』ってルーダン魔王国が滅んだやつ?]
◆[おそらくだけど、そう。もしくは、この『天変地異』とか『大異変』のタイミングかも]
∴[何にせよ、五、六百年前にアンメモ世界全体でおおきな災害が起こったのは間違いないかと……また図書館に籠って見直すか……]
「『大異変』で荒れた島内を復興したのが聖域から現れた建国王ベアゴロー様だったのです。島で争っていた二つの部族、我々『朱鳥人族』と麻結様方『碧鳥人族』はベアゴロー様の元で一致団結して復興に努めました。そして、ベアゴロー様が島を離れる際に、二つの王族で交互に治めることになって建国されたのが『クマノ勇者国』です」
キャンベルさん、そして、焙火くんがボクをじっと見つめた。
「『クマノ勇者国』は建国王ベアゴロー様から預かっている国、いずれ勇者様にお返しするのだとオレら王族は言い聞かされてるっす」
「ですが、それを良しとしない方々もいます。そして、リヴァイア王家に関しても今の王家を認めていない一派もいるのです。そんなところに聖域から『勇者』と『王女』が現れたどうなるかわかりますでしょう?」
▽[おっと、突然不穏な話の流れ。周囲に人影はなし]
◯[この配信、タグにスローライフと付いていたはずだが? スローライフ見たことないけど]
◆[つまりは勇者《わん太》と麻結さんが思いっきり政治的な火種になりうると]
「そんな事を急に言われても困りますわ。私、ただの村長の娘でしかありません。それに、もう数百年も昔の話ですよね」
「ボクも勇者だから国を返すって言われても……。そもそもボクは既に『わん太王国』の王様でもあるから増えても困る……、うん、困るわん」
碧鳥人族の島が『わん太王国』に加わってるのは国際問題にならないか一瞬頭をよぎったが保留にしておく。
「え、わん太さんは『わん太王国』の王様っすか!」
驚いて目を丸くして叫ぶ焙火くんに黄色い眉を寄せて唸るキャンベルさん。
「なるほど、わん太様は既に王権持ちでしたか。ならば、まだやりようも……。ええ、我々はわん太様、麻結様を歓迎しておりますが、これから向かうトゥアルアの街にはそうでない者達もおります。くれぐれも勇者と王女であることは明かさないようにお願い致します」
そう言ってキャンベルさんは深く頭を下げた。




