第113話 クマノ勇者国
「まずはゆっくり出来るところで情報交換、というか、認識のすり合わせをしたいっす」
イケメンペンギンさんに連れられて転移ポータルのあった大きな部屋から小部屋へと移る。
小部屋に入ったのはイケメンさんこと焙火くんと大柄なキャンベルさんだ。
キャンベルさんが焙火くんを若様と呼んでいたことも考えると焙火くんはそれなりの地位がある立場でキャンベルさんはそのお目付け役というところだろう。
飲み物を持ってきたペンギンさんが退出したところでキャンベルさんが溜息を零した後に諭すように問いかけた。
「よろしいですか、魔斧サッパ、いえ、『魔鉞サッパ』はフェニック王家の『魔槍スクイド』同樣、リヴァイア王家に継承されていたとされる武器でした。もっとも、今となっては『魔鉞サッパ』の名を知るものはほとんどおりません。いえ、その存在ごと闇に葬られてきたとも言えるでしょう。私達が『魔鉞サッパ』の名前を知っているのは碧鳥人族ではなく、朱鳥人族だからです。さて、そこで確認ですが、勇者様、そして、リヴァイア様、貴方がたは何者で何処から何のために此処に現れたのでしょうか?」
∪[待って待って、何気に情報量が多い]
▽[何だかかなり不審者扱いな気がする。いや、普通に突然現れた不審者ではあるか]
◎[キャンベルさんの圧が強い……ここは取調室だったか]
「さっき麻結さんが言った通り、ホクらはここより南の碧鳥人族の島から転移ポータルを使って転移したきただけわん。ちなみにこの島に来たのは水龍さんに会いにきたんだわん。ところで、その『魔鉞サッパ』がリヴァイア王家の物ってことは麻結さんは王女様だったわん?」
隣の麻結さんと後ろに控えていたクレスさんの方を見る。
そう言われてみるとクレスさんは何故かメイド服だし、麻結さんが王女様だったとしても違和感は……マサカリ振り回したりはするけど、違和感はないと言えなくもない。
ちなみに『魔鉞サッパ』を取り出して見せた後、ベアゴロー流鉞術を少し披露したことでまわりを囲んでいたペンギンさん達の殺気は霧散した。
部屋に響く風切音にペンギンさん達の顔が引きつっているように見えたのも気の所為だろう。
「お父様はしがない村の村長ですし、王家の話なんて聞いたことがありません。ねぇ、クレスもそうよね」
「いえ、王家とは聞いていませんが、やんごとなき血筋とは伝えられています。お嬢様がいつも村長の話をきちんと聞いていないだけでは?」
バッサリと否定された麻結さんは冷ややかなクレスさんから目をそらした。
「ふむ、南の碧鳥人族の島はこの島の南の端から見えている島の事ですな。遥か昔、大厄災の時にそちらの方まで避難したという話はありましたが、まさかそちらにリヴァイア王家の方々も含まれていたとは……だとするとやはり……」
「外海は強力なモンスターで溢れているっす。勇者様があの島から来たと聞いて渡ろうとしたものも多いですが、犠牲も多くというか全員が海の藻屑と消えたこともあり今は島への渡航は法律で禁止されているっす」
クマノ勇者国の首都はもっと北のほうにあり、この辺りは辺境の地と呼ばれているように人もそこまでは多くなく、モンスターが多いらしい。
ちなみに、この建物は勇者降臨を祀っている教会のようなもので、その周辺に人が集まって出来た村で『トゥアタヒ村』と言うそうだ。
なお、地理的には不便であり、ほとんどの人は近くの都市である『トゥアルアの街』近辺に住んでいるらしい。
「それならどうしてこんなところに大人数で居たんだわん?」
「まあ、こちらも現在は色々ゴタゴタしているのもあるが、この聖域が急に光りだしたとの報告を受けて慌てて確認に来たのです。それで、わん太様は本当に勇者なのか?」
目力の強いキャンベルさんにじっと見られると思わず腰が引けそうになる。
「うーん、ボクとしては勇者かと言われると……」
『何を持って勇者と言うかは知らんが、ワイが抜けたということは勇者で間違いないわ』
「うぉっ」
「へっ、今の声はなんっすか?」
キャンベルさんが腰の剣に手を添えて辺りを見回す。
『あー、そないに警戒せんでも大丈夫や。ワイは聖剣シャベル・スコップ、元は勇者ベアゴローの相棒で、今はこの勇者わん太の相棒や』
「喋るスコップ……いや、喋る剣、インテリジェンスソードですか。おとぎ話とばかり思っていましたが本当にあったんですな。たしかにベアゴロー様が喋る聖剣を持っていたとする資料もありましたが本当に喋るとは……、いや、ということはやはりわん太様は勇者で間違いないのですな……」
「確かにオレが小さい時に読んでいた絵本に出てきた勇者にそっくりっす。ま、サイズはちっこいけど、あ、耳の形が少し違うかもしれないっす」
「ですです、私の読んでいた本でもベアゴロー様は丸みを帯びた可愛らしい耳に描かれていました」
「えー、ボクのこの三角耳も愛らしいと思うわん」
◯[三角耳派と丸耳派の仁義なき戦いが今始まるwww]
❤〚わん太くんの耳をくにくにしたい……〛
▽[ところで、この国の名前、クマノ勇者国なんだよな?]
勇者ベアゴロー談義で盛り上がる焙火くんと麻結さんに対してキャンベルさんは眉根を寄せて険しい顔だ。
「キャンベルさん、険しい顔をしてどうしたんだわん?」
「ああ、いえ、わん太様が気にすることではございません。我々はわん太様と麻結様御一行の来訪を歓迎致します。つきましては『トゥアルアの街』まで御一緒して頂けますでしょうか? 水龍様についてもいくらか心当たりがあります故、街でなら詳しい者に聞くこともできましょう」
南の島、いや、クマノ勇者国での次の行き先はすんなりと決まった。




