第105話 聖剣シャベル・スコップ
「喋るスコップ? 聖剣っていうけど、どう見てもスコップわん」
◯[しゃべったぁぁーーっ! え、聖剣なの?]
▽[やっぱいスコップだよな、いや、シャベルなのか? あれ、シャベルとスコップの違いってなんだっけ]
∈[そんなことより、喋ってるにゃ、武器が喋ってるにゃ!]
喋る聖剣シャベル・スコップにコメントがざわついている。
「あれ? みんなスコップさんの声が聞こえるようになってるわん? もしかして抜いたからかわん?」
抜け抜け煩かった声は聞こえてなかったはずである。
『当然や、土の中に埋まってる間は口が塞がれとったから喋れなんだ』
「なるほどわん……って、どこに口があるわん?! いや、そもそも二本あるし、どっちでしゃべってるわん?」
『おぉっ! ナイスつっこみや、当代の勇者は見込みがありそうや。ベアゴローの奴はそこんとこが全然やったからなぁ。あ、実際のところ念話みたいなもんやから口はないねん』
「あ、やっぱりそうなんだわん。それで、どっちがシャベルで、どっちがスコップわん?」
◎[それそれ、気になってた。尖って少し長いほうがスコップで、短いほうがシャベル?]
▽[いや、あれショベルだろ。そもそも、シャベルじゃなくてショベルだとおもってたんだが]
◯[ちっこいのがシャベルでおっきいのがスコップと思ってた……]
『なっ……なんちゅうことをきくんや……これは戦争やで。き◯こたけ◯こ戦争並みの戦争が始まるんや……』
◆[一応規格的には足をかける部分が平らになってのがショベル、丸くなって足をかけられないのがスコップだったかな]
∴[小型のをスコップ、大型をシャベルと言ったりもするけど、これって東西で逆だと聞いたことはあるわね]
∪[つまり、実際のところは一般的な呼称としては明確になってないと言うわけか]
「ふぇぇ、色々あるんだわん、で、結局、スコップさんはどっちがスコップさんなんだわん?」
仮称スコップさんは片方が尖っていて少し長く、もう一方は四角い形をしている。
『スコップさんって……まぁええわ。どっちがってどっちもワイや。別に二人いるわけやのうて、二本で一つやで。それに、ワイは形を変えられるんや!』
少し自慢げなスコップさんの声に合わせて二本のスコップが入れ替わるように形を変えた。
「お、おぉっ! 手品わん!」
『アホか、手品ちゃうわ。ちなみに、長くて尖っている方が攻撃型、四角い方が防御型や。クマのやつ、あぁ、クマゴロー、いや、ベアゴローはワイのことをフォークとスプーン代わりにしか使わんかったが、ネコ、いや、わんころにはちょうど良さそうやな』
「ボクは猫でもわんころでもないわん。猫乃わん太、ぬいぐるみ系VTuberわん。それに、クマゴローさんはベアゴローさんで良いのかわん?」
そう言えば、ペンギンさんたちもベアゴローだったり、クマゴローだったり、色々だった気がする。決してボクがきちんと覚えていなかったわけではないはずだ。
『猫乃わん太、そういや、そう言ってたな。クマゴローは、クマノベアゴローや言うてたから、クマやベアゴロー、それに、略してクマゴローやな』
どうやら、勇者様の本名はクマノベアゴロー、なんとなく親近感がわく名前だったらしい。
「なんと、ベアゴロー様の本当の名前はクマノ・ベアゴロー様だったのですね! これは新たな発見です。これまでは主にベアゴロー様と記述されていたのですが、長老衆の中にはクマゴローと呼ぶ方もいたり、残された資料にも時折クマ様やクマゴロー表記がありまして、我々ベアゴロー研究家の中でも覚え違いや記述違い、仮名だとか、実はクマゴローが本名とか、様々な意見があり……」
何だかスイッチの入ったペンギンさんが手帳を取り出して忙しくメモを始めている。
◆[クマノ・ベアゴロー、熊野とか熊乃かな]
◯[そこはかとなく感じられるネーミングのわん太臭]
▽[ベアゴロー覚えづらいからクマゴローで良いならそっちでw]
「ところでスコップさん、ボクたち枯れた泉をどうにかするためにここに来たんだけど、何か知ってるわん?」
『泉? ああ、温泉のことか、え、枯れたんか?!』
「聖剣様、そうなんです! ベアゴロー様の泉の温度が年々下がっており、遂には枯れてしまって困っていたところ、新たにわん太様が召喚されたのです!」
田脇さんの訴えに後ろのペンギンさんが一斉に頷いた。
『なるほどな、クマのやつが言ってたんはこういうことか。ほな、まずは温泉の中央につれてってもらおうか』
「スコップさん、なんとかできるわん?」
ペンギンさんたちに追い立てられるように干上がった大きな池の中央へと向かう。
『もちろんや、そもそもクマのやつがこうなることを見越してワイを此処に残したんや。そのうち龍脈のメンテナンスが必要になるとか言うてワイを雑にぶっ刺して行きやがった』
「龍脈! やっぱり魔素流の問題なのかわん? 確かクロセルさんとこのフカルア山はダンジョンによって調整されてるって言ってたわん」
『お、わん太はダンジョンによる龍脈管理を知ってるんか、意外と博識やな。まあ、ワイがちゃんと調整するから泥船に乗ったつもりで見といてや』
「いや、泥船に乗ったら沈むわん!」
『よし、ナイスツッコミや。さて、そこの池の底にワイを突き刺すんや。あ、一本でいいで』
干上がった池の中央、更に少し窪んだところに言われるがままスコップを突き刺した。
◯[……あれ? 変化なし?]
▽[いや、なんか配信画面が震えて……]
∈[にゃ、にゃにゃ、にゃんの音にゃ?]
―― ズズズッ、ズズズズッ、ゴボッ、ズズズッ
低く響く音に合わせて地面の振動が徐々に大きくなってきた――




