第100話 ワンダリングモンスター
「しゃっ、しゃっ、しゃ~く。しゃ~く、しゃ~く、しゃ~」
絶好のお出かけ日和にナギサくんもごきげんだ。
❤〚ナギサくんもかわいいぃぃ〛
▽[もしかしなくても海の上か?]
◎[ところで、そのサメさんはどうやったら手に入るというか、何?]
ペンギンさん達の筏に乗って引っ張ってもらう予定だったがナギサくんが嫌がったので大きくなったナギサくんにのって対岸を目指して内湾を横断中だ。
「あれ? もしかしてナギサくんやイナバくんを知らないリスナーも増えてる?」
「きゅっ、きゅっ?」
呼ばれたの思ったのかナギサくんの頭の上に陣取っていたイナバくんが寄ってきた。
∈[精霊ゲットしたプレイヤーはほぼいないにゃ]
∴[騎乗タイプは精霊に限らず未発見だよね]
◆[わん太と同じ方法での精霊取得はなしになったと公式アナウンスがこっそり出てた]
「えっ、そうなの?! 確かどっちもエリアボスの討伐MVP報酬だったはず……」
確かに限られたエリアボスの討伐、それもMVPのみの報酬だと色々揉めそうだ。
まあ、ボクも含めてみんな忘れてそうだし折角の機会なのでナギサくんとイナバくんの鑑定結果を見せておこう。
:――――――――――――――――:
名称:ナギサくん
説明:角なしサメの姿をしている水の精霊。
実はお風呂が苦手。
契約済み。
契約者:猫乃わん太
:――――――――――――――――:
:――――――――――――――――:
名称:イナバくん
説明:角なし兎の姿をしている土の精霊。
四つ羽のクロウが好物。
契約済み。
契約者:猫乃わん太
:――――――――――――――――:
◯[角なしサメに角なし兎、普通では? 確かにモンスターは角があるのが多いけどwww]
▽[ところで、四つ羽のクロウってモンスターか? 聞いたこと……ないな]
∈[それはフラグにゃ。誰も覚えていない頃に襲ってきて伏線を装うやつにゃ]
「あ、うん、ボクもイナバくんの好物なんてすっかり忘れていたけど、この南の島の探索中に見つかればいいわん」
少し遠くを見つめるような目に対岸の狭い入り江が見えてくる。
「わん太様、入り江を進んでから遡れるところまで川を辿ります」
先行していたペンギンさん達から声がかかった。
「しゃっ、しゃ~く!」
「きゅっ、きゅ~っ!」
元気よく尻尾を振って答えるナギサくんとイナバくんだ。
「ところで、ここらへんにはモンスターはいないわん?」
ナギサくんの横を並走、いや、併泳しているペンギンさんに尋ねる。
「この湾内にはほとんどいないですね。島内もそれほど危険なモンスターはいませんが……」
ペンギンさんは少し考える素振りを見せつつ続ける。
「……ただ、ワンダリングモンスターにだけは気をつけないといけません」
「ワンダリングモンスター?」
◆[聞いたことないけど、そのまま捉えるとウロウロしてる強いモンスターかな?]
∴[既に碧鳥人族が島に点在してるとすればエリアボスもいなさそうだしねー]
◎[ワンダリングモンスターってやっぱ強いのかな]
「ああ、そんなに心配することはありませんよ。この島に居るワンダリングモンスターは臆病ですし、遭遇する前に向こうから逃げていきます。なので、勇者様の祠まで行く分にはは特に心配はいりません」
そんな話をしながら入り江を抜け、細い川を遡っていく。
「わん太様、川の途中ですがここからは山道を登ります」
「しゃぁ、しゃ~く!」
「きゅ!」
それなりに広い川原でナギサくんから降りた。
「ナギサくん、ありがとわん」
ナギサくんも流石に疲れたのか小さくなった後にボクの中に戻っていった。
精霊の形にも色々あって、どこからか召喚されたり、物に宿っていたり、ボクみたいに契約者の中に入っている場合もあるようだ。
「イナバくんは戻らないわ……ん?」
「きゅっ、きゅ~ぅっ!」
イナバくんは早速川原に生えている草をモキュモキュと頬張っていた。
精霊はMPを消費してるっぽくて特に食事は必要ない筈……なんだけど、そう言えばイナバくんもナギサくんもいつも色々食べている気がする。
❤〚イナバくんきゃわわぁっ〛
◆[精霊が草を食べるのも草wだけど、四つ羽のクロウが好物ってことは肉食?]
▽[四つ羽のクロウなら鳥系モンスターだと思うが、ここはワンダリングモンスターとして出てくるフラグ]
「『四つ羽のクロウ』ですか? そのモンスターは知りませんが多分ワンダリングモンスターとは違うと思いますよ?」
川から上がり、プルプルと水気を切っていたペンギンさんの一人が教えてくれる。
「そうなのかわん?」
「えぇ、ワンダリングモンスターと言ってもそこらにいるモンスターが巨大化しただけのようなものですし、それに、この島にいるワンダリングモンスターは臆病で襲ってくることはありませんよ。ほら、ちょうどあそこにいるように丸々として温和なモンスターですし……?」
そう言ったペンギンさんの視線の先には山の方から降りてきたと思しき丸々とした巨大なモンスターがこちらをあからさまに睨みつけていた。




