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III.側近決めとリュードゥライナの話

 キードゥル97年4月


「クリスティーネ様、側近はお決めになりましたか?」

「はい。推薦してくれていたフィネアとホシュラーヌ、フェアラーネ。それから、シャリルティーヌはどうでしょうか」


 今回眠っていたことで、上級生として側近を引っ張ってくれていたラナ、コリスリウト、レニローネ、イディエッテは卒業してしまった。そして、リーゼロッテに関しては今年で卒業するのだ。側近は足りなくなってしまうだろう。


 ちなみに、フェアラーネ――フェアラーネ・シギュンとは、下級武官だ。新二年生らしい。本来ならば、クリスティーネの側近候補に、下級貴族の名前が挙がることはないのだが、眠っていたことや下級貴族であるシリウスやユティーナ、マルティオが側近にいることで多少入りやすいから――とのこと。クリスティーネ本人としても、側近の身分はあまり気にしたことがない。特に人手不足の今は、真面目に働いてくれるのなら、問題はない。


「シャリルティーヌ・ウレイリア嬢……ですか」


 リーゼロッテは少し躊躇った。

 外聞を気にしてちゃんと注意してくれたり、主要で決め事を決めてくれたりしていた側近はもういない。最高学年はリーゼロッテ一人で、次ぐ六年生もシリウスとユティーナだけ。クリスティーネの側近たちはかなり大変になるだろう。


「側近はたくさん増やしたいところでしょう? ですが、クリスティーネ派閥の勢いが弱まっていますから、むやみに増やすのも難しいですよね」

「そうですけれど……」


 リーゼロッテも分かってはいるのだ。挙げた四人でも、空いた上級生たちの穴を埋めるのは難しい。


(ならば、一から育てなければなりませんもの)


「……かしこまりました」


 心配するようにそう言って、リーゼロッテは側近たちを呼びに行った。





 しばらくして、四人がやってきた。

 フェアラーネとは初対面の挨拶を交わす。


「あの、クリスティーネ様。少しよろしいでしょうか?」

「えぇ、どうぞ」


 側近のお話は全員に了承してもらえて、そこから側近としての話をしていったあと。クリスティーネに声をかけたのはフェアラーネだ。後ろにビクビクと震えているシャリルティーヌもいる。


「何故、わたくしたちのような下級貴族を側近に召し上げるのですか?」

「下級貴族だったとしても、真面目に働いてくれる子を探しているのです。それに、ユティーナやシリウスもいますし」

「ユティーナ様やシリウス様は……下級貴族同士でも、話題になるほど素晴らしい成績でしたもの。ですが、わたくしは……」

「わ、わたくしも、です……っ。側近の皆様とはっ、比べるのも烏滸がましいくらいですからっ……」


 人と接するのが苦手らしいシャリルティーヌは言葉が途切れながらもそう言う。一応、クリスティーネが春を告げる宴でシャリルティーヌを庇っていたことで、少しは信頼されているらしい。


「フェアラーネ、シャリルティーヌ」

「は、はい」



「わたくしの側近になるのは、嫌ですか?」

「……嫌というわけでは! ただ、わたくしのような人間が、クリスティーネ様のような素晴らしいお方にお仕えするのは……」

「それならば、是非なってほしいです。ご存知の通り、わたくしは眠っておりましたから、側近候補を見つけるのも大変なのです」


 クリスティーネは眉を下げて微笑む。


「お願いできますか?」

「……かしこまりました、我が主」

「かしこまり、まひたっ……」


 シャリルティーヌが噛んだことによって、空気が和んだ。



 ◇◆◇



「お姉様、お話があるのです。よろしいでしょうか?」


 夕食後、リュードゥライナがクリスティーネにそう声をかけた。


「えぇ。……湯浴み後の方がいいかしら?」

「そうですね。そうしましょう」


(湯浴み後の方がいいのなら、長くて大事なお話になりそうね)



「お姉様、夜分にすみません」

「いいえ、大丈夫よ。妹の頼みですもの。いくらでもお話を聞くわ」

「ふふ、ありがとう存じます」


 クリスティーネが席を勧めると、リュードゥライナは座った。

 湯浴みを終え、髪を下ろしているのを見るのは少し珍しいかもしれない。


「お姉様」


 リュードゥライナは真剣な眼差しで、クリスティーネを見つめる。


「……わたくしは、フェルーネ・エミリエールであった、前世を思い出しました」

92ptありがとう存じます!!!

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