プロローグ 目覚め アルラッション視点
二章開始いたします!!わーい!
キードゥル97年3月
「目覚めた……目覚めたよ、クリスティーネが!!」
泣きながらそう言ったのは、ミカエル・ヒサミトラール。いきなりバンッ! と扉が開いたのだ。だが、そんな不敬を誰も咎める者はいなかった。
その言葉に、この場にいる全員は息を呑む。
そして、同じくそこにいた、アルラッション・ドティフ・ヒサミトラールも例外ではなかった。アルラッションは領主、レトルートの養子だ。七歳になる少年である。
「様子は?」
「戸惑ってはいますが、毒による影響は見られません」
ミカエルの言葉に、アイリスは心の底から安堵したような表情を浮かべた。リュードゥライナも同じような表情をしている。
とりあえず、クリスティーネの部屋に向かうことになった。
「あ、おにい、さま……」
「やっぱり、まだ、慣れないよね」
「そ、そうですね……。すみません」
そう言って苦笑したのは、クリスティーネ・ヒサミトラール。三年前、毒によって眠っていた少女である。
(……すごく、綺麗な人だ)
アルラッションはクリスティーネの眠っている姿なら見たことがあったのだが、クリスティーネが起きているところは初めて見た。
太腿の辺りまで伸びているであろう銀髪。澄んだ水色と紫色の瞳。クスクスと笑う様子。非常に可愛らしい。
「お母様もリュードゥライナも元気そうでよかった。リュードゥライナは……背が伸びましたね」
「勿論です。お姉様だって抜かしてみせます」
「それは是非やめていただきたいわ」
姉としての矜持がなくなるもの、とクリスティーネは呟く。
すると、クリスティーネがふと、こちらを見つめた。見知らぬ少年がいたことに驚いた様子である。
「えっと……そちらは……?」
「あ、紹介が遅れたわね。さぁ、挨拶を」
アイリスに促され、アルラッションは緊張しつつ、言葉を発した。
「クリスティーネ様、お初にお目にかかります。レトルート領主が養子、アルラッション・ヒサミトラールと申します。七歳です。以後、よろしくお願いいたします」
クリスティーネは非常に驚いた様子だった。
(まぁ、養子をとるだなんて、思ってもみなかったんだろうな)
アルラッションとしても、この家族重いな人たちが養子をとるだなんて、理由を知ってから聞けば、すごくびっくりした。
「そうですか。……養子とはいえ、家族ですもの。養姉と呼んでくださいませ」
「は、はい! よろしくお願いいたします、クリスティーネ養姉上」
クリスティーネの思ってもみなかった反応に、アルラッションは大きく頷く。
「あと、お母様が抱いていらっしゃるその子は?」
「この子ね」
アイリスはゆったり微笑んで、抱いていたフェルネリッテをクリスティーネに見せた。
「この子はフェルネリッテ。先日、二歳になったのよ」
「……妹! 可愛いですね」
「ん、ん~。かーたま?」
フェルネリッテがむにゃむにゃと寝言を漏らしながら、目を覚ました。
「ほぅら、フェルネリッテ。この子がクリスティーネお姉様よ~」
アイリスの言葉に、フェルネリッテはレトルートによく似た瞳をパチパチと瞬かせる。
「くいすてーね、ねーたま!」
「まぁ、可愛らしい」
クリスティーネはクスクスと笑う。その様子に、ミカエルも安堵したようだった。
そのとき、バンッ! と扉が開いた。
「クリス、ティーネ……!」
クリスティーネの姿を見た、レトルート・ロード・ヒサミトラールは眉を下げた。
「おとう、さま。お久しぶりですね」
「……! 良かった」
レトルートは安堵のため息を漏らす。
「……わたくしは、大丈夫ですよ」
クリスティーネは微笑んだ。




